サーヤが語る「礼賛」だから表現できる自分らしさ、川谷絵音と共鳴し合うポップな感性

自分らしく素直に、だけど説教くさくはしたくない

-インパクトのあるジャケットについては、「キメ過ぎない感じ」という話がありましたが、具体的にはどんな風にイメージを固めていったんですか?

サーヤ:白目じゃないカットにするのか、白目のカットにするかですごいもめたんですけど、私が「どうしても白目にしたいです」って言って、白目になりました(笑)。最初はちょっとね、かっこよすぎたんですよ。打ち合わせのときから「構えられないようにしたい」っていうのをすごい言ってて、でもただふざけたバンドにはならないように、そのニュアンスだけ注意しなきゃって、そこを探り探り打ち合わせして。で、撮影現場に行って、スタイリングもよくしてもらって、メイクもガチッとやってもらった中で、「表情ぐらいはなあ」と思ったんです。礼賛のみんながそういうスタイルというか、あんなに技術があるのにそれをひけらかすんじゃなくて、ラフに現場でセッションしてる感じが超かっこいいから、私がそれを表現しなきゃと思って。「PEAK TIME」のMVもオンだけかっこつけて、オフはドンチャン騒ぎみたいなシーンにして、かちっとするよりちょけた方が楽しい空気感のまま伝わるよねっていうのがありますね。


『PEAK TIME』ジャケット写真

―やっぱりメンバー全員の空気をすごく大切にしてるんですね。

サーヤ:芸人としての感覚で言うと、コンビで片方が売れたときは「相方も売れさせなきゃ」ってあるじゃないですか。でも音楽の人ってそれあんまりないですよね。フロントマンがバって出てて、「こっちは別に」みたいな。ライブではそれぞれがちゃんと発揮すると思うんですけど、表面的には我が我がしないというか、そこは音楽とお笑いで結構ギャップがあって、「もっとまるっと見せることをしないのかな?」とずっと思ってたんですよ。だから礼賛は「全部を見てほしい」っていうのがあって、みんなキャラもあるし、腕もいいので、全員が目立つようになるといいなって思ってます。

―そこは変わってきた部分かもしれないですね。昔は「絶対的なフロントマンがいて、周りはモブ」みたいな見え方のバンドも正直多かった気がするけど、それこそ絵音くんがやってるバンドはそうじゃない。ゲスの極み乙女にしろジェニーハイにしろメンバーみんな個性の塊だし、礼賛もよりそうなっていくといいですよね。

サーヤ:まるっと愛してもらえないとなっていうのはよく思います。絵音さんと課長はもう顔が知れ渡ってるので、今年はGOTOさんと哲さんの時代になるといいなって。

―今回ジャケットに関してはサーヤさんが前に出てるわけですけど、とはいえ「私のバンド」ではなくて、全体を愛してもらいたいと。

サーヤ:ジャケは絵音さんから「今回はサーヤちゃん1人の写真がいいと思う」って言われて、最初めっちゃ嫌だったんですよ。「1人かあ、バンドなのになあ」って。でも絵音さんが俯瞰で見て、「いや、今回はサーヤちゃんで」みたいな。まあ、一回パンチのあるものを作って、より知名度を上げてから、もっとメンバーのことを見せるっていう手もあるかとか、いろいろ悩んで、この形になりました。


2024年2月28日、礼賛 RELEASE PARTY 「ON TIME」にて(Photo by @shotby_dm)

―ここまで話してくれた「礼賛らしさ」と、サーヤさん自身の自分らしさはどれぐらい結びついてると言えますか?

サーヤ:芸人のときの方が一回構えないといけないぐらいで、こっちは割と素直にいるというか、礼賛のメンバーといるときはあんまりギアを上げなくていい状態で話せてるから、こっちのほうが自然体な気がします。なので、その空気感をそのまま出したいっていうのがありますね。

―その意味では『PEAK TIME』はより素のサーヤさんらしさが出た作品であり、「生活」はそれを象徴する曲だと思うから、今回に関してはサーヤさんが一人のジャケもアリなのかも。

サーヤ:芸人でやると寒くなることを礼賛で救ってもらってる感じはします。「生活」は芸人がやるとお涙頂戴みたいなコンテンツにしかなり得ないので。『M-1』のアナザーストーリーみたいな、「こんな紆余曲折があってね」って、あれを生身で見せるのは本末転倒というか、「せっかくそれを消化してネタにしてやってるのに」って思っちゃう。でも曲に関してはそういうのはなしで、素直にやれるかなって。私は最近だと性教育の番組のオファーとか、「女性の地位向上に一役買ってください」みたいなオファーも多いんですけど、それもまんまやると説教くさいし、受け取りづらいものになっちゃうから、そうはしたくない。ただそういう態度だけを持って、自分のやりたいことを続けることが大事だなって。「女性は頑張ってるんです」みたいなことを直接言うのはあまりにも原液すぎるし、「こういうふうにしようよ」みたいなことをツイートするんじゃなくて、それをもっとポップにやりたい。そういうことは絵音さんもよく言ってて。

―やっぱりサーヤさんと絵音くんはそこの感性がすごく近いなと思います。『PEAK TIME』にしても途中で話してくれたように「同調圧力や消極性から脱却して、いかに自分らしく素直に生きるか」というメッセージが浮かび上がってくるけど、あくまでそれをポップに表現しているのがいいし、まさにそれが礼賛らしさになってるなって。

サーヤ:絵音さんとはそういう部分で共感することが多くて、「だから合うんだよね」みたいなことをよく言ってくださるので。やっぱり絵音さんもね、説教くさくしない、ちゃんと作品に落とし込めるのがめちゃくちゃすごいなっていつも思いますね。

―「生活」の〈マジなことをマジな顔して話すのはスベってる だからせめて音に乗せて話してる〉はパンチラインですよね。

サーヤ:本当に、そこはその歌詞そのまんまですね。


Photo by Maciej Kucia




礼賛
『PEAK TIME』
配信リンク:https://raisan.lnk.to/peaktime

礼賛 ONEMAN TOUR 2024 「ピークタイム」
2024年4月22日(月)沖縄県 桜坂セントラル
2024年4月28日(日)東京都 LIQUIDROOM
2024年5月8日(水)福岡県 BEAT STATION
2024年5月9日(木)岡山県 YEBISU YA PRO
2024年5月14日(火)愛知県 THE BOTTOM LINE
2024年5月17日(金)宮城県 仙台MACANA
2024年5月19日(日)大阪府 BIGCAT
2024年5月23日(木)石川県 Kanazawa AZ
2024年5月26日(日)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
2024年5月30日(木)北海道 cube garden

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