ニューヨークが語る、芸人とアーティストの相互関係、『だが、情熱はある』に見る「新しいお笑いブーム」の形

ニューヨーク:左から嶋佐和也、屋敷裕政(Photo by Mitsuru Nishimura)

『M-1グランプリ』と『キングオブコント』の両方でファイナルに進出し、文春オンラインによる「好きな芸人ランキング」では2年連続の1位に輝くなど、快進撃を続けるお笑いコンビのニューヨーク。皮肉と偏見に満ちた“毒”のあるネタが持ち味だが、1986年世代ならではの感覚を言語化した「あるある」に、SMAPメンバー、Dragon Ash、米津玄師といった固有名詞をも取り入れた攻めの漫才/コントは、川谷絵音やクリープハイプの尾崎世界観らを筆頭にアーティストからの支持も熱い。今回Rolling Stone Japanでは、屋敷裕政と嶋佐和也に本誌初のインタビューを敢行。2人が今も主戦場とするYouTubeをはじめ、お笑い芸人とアーティストの交流、スリップノットとの衝撃のエピソード、話題のドラマ『だが、情熱はある』、そして夏に控える史上最大規模の単独ライブ「虫の息」について、ざっくばらんに語ってもらった。

【写真を見る】ニューヨークの屋敷裕政と嶋佐和也

YouTubeは芸人にとって革命的な存在

ーいきなり個人的な話で恐縮ですが、2020年の最初の自粛期間は『ニューヨーク公式チャンネル』にすごく救われたんです。多忙な今でも高頻度でYouTubeを更新し続ける原動力はどこにありますか?

屋敷裕政(以下、屋敷):あー、ありがとうございます。そうですね、毎日更新してたんが週5日になって、4日になって…とちょっとずつ頻度は下がってますけど。まあ、「しっかりやってこう」っていう感覚を持っているというよりも、もう更新するのが日課というか、当たり前になってます。

嶋佐和也(以下、嶋佐):街でも「YouTube見てます!」って声をかけてくれる人がたくさんいます。普段テレビを見ない層が何かのきっかけで俺らのYouTubeを見てくれるパターンもありますし、YouTubeでしかできない内容もあると思うんで、そこは当たり前のように続けている感じですね。

ー『ザ・エレクトリカルパレーズ』(※1)、『花鳥風月問題』、『シン・りょう』(※2)など毎年のようにムーブメントが起きるチャンネルですが、この徹底的に掘り下げるジャーナリズム精神はお2人の性格的なものでしょうか。

※1 吉本興業のお笑い養成所「NSC東京校」の17期生として入学した生徒の一部により結成された、「ザ・エレクトリカルパレーズ」(通称エレパレ)の正体を探るべく、ニューヨークが芸人たちを調査するドキュメンタリー映画。監督は同チャンネル作家の奥田泰
※2 東京NSC24期のコンビ「小虎」のりょうを主人公に据え、様々な証言者の声から彼の「表の顔」と「裏の顔」に迫るドキュメント企画



屋敷:たまたまですけどね(笑)。後輩芸人の気になる話を聞いたから、「じゃあアイツ呼ぼう」って次々と話を聞いて、聞いて、聞きまくった結果がああなっただけで。2月にやった『ニューヨーク×鬼越トマホーク 東京15期未解決事件』は、俺らに付いてくれてる作家の奥田さんが吉本から「ライブを打ってくれ!」と言われて逆算で無理やり事件を作っていった。あれがYouTubeチャンネルとしては唯一の「作品」と言ってもええかもしれません。

嶋佐:それこそテレビでやるような内容でもないですし、小さな世界の出来事ではありますけど、YouTubeでやったら配信が1万枚とかチケットが売れて。そうやってお笑いファンの間で勝手に広がっていったのは俺らとしてもビックリでした。

屋敷:けっこう革命っすよね。だーれも知らん芸人のケンカで、ゆうたら2000万とか売り上げてますから。

嶋佐:そこまで行くと、全然違うジャンルの方からも「見ました!」って言ってもらえるようになって。

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