ニューヨークが語る、芸人とアーティストの相互関係、『だが、情熱はある』に見る「新しいお笑いブーム」の形

お笑いの単独も、音楽ライブと同じノリで来てほしい

ー最後に、単独ライブ「虫の息」について聞かせてください。今はもう、ネタづくりの真っ最中って感じでしょうか。

屋敷:そうっすね、このあともリモートでネタ合わせを予定してて。仕事の合間合間でやってるんですが、作家さんが忙しくてね、毎日ではないですけど。

ー漫才とコント半々で、しかもオール新作っていうのは相当タフな作業ですよね。

屋敷:まあでも、2年前が一番忙しくなりたての頃で、まだスケジュール配分も何もわかってない中でやってたのでめっちゃキツかったですけど、最近はええ感じにバランスが取れてきました。マネージャーも「ここでネタ合わせ入れたら2人ともやるかな」っていうのが、肌感でわかってくれてる感じしますし。

嶋佐:Zoomがあるのもありがたいですね。やっぱ各々の自宅からちょっとした合間でネタ合わせできるんで。

屋敷:2年前はネタ8本中の4本はカンペ見ながらやってたからな、俺ら。死にかけてたわ。

ーキービジュアルの老けメイクの意味は、実際にライブを見たらわかるんでしょうか?

屋敷:そう書いといてください(笑)。

ー全国5都市で14公演、のべ1万人の動員という規模感ですが、アーティストでいったらアリーナ級ですよね。

屋敷:いやあ、でもアーティストって一撃で集めますからねえ。それがすごいわ。ちゃんとおもろいネタ作らなっていうプレッシャーと、お客さんをちゃんと集めなっていうプレッシャーの両方があります。

嶋佐:単独ライブは、毎年なぜか奇跡的にやれてる感じですからね。ホント毎回ギリギリで、なんとかネタが思い浮かんで……。これ、芸人のヘンなところなんですけど、みんな何も準備できてないのにまず公演を打つんですよ(笑)。それがアーティストと違うところで。彼らは曲ができてるからコンサートやるわけじゃないですか? 俺らの場合、開催発表から本番までの期間になんとかネタを仕上げていってる。

屋敷:ちゃんとしてる芸人は公演の1ヶ月前とかにネタが完成して、稽古とかやるんでしょうけどね。

嶋佐:でももう、ネタが浮かばないときは浮かばないので。だから今年も無事にできるのか!?っていう。実際、まだ全然できてないっす(笑)。あとはやっぱ屋敷と同じで、1万人埋まるのかというのと、ミスらずにやれるのか、ちゃんと笑ってもらえるのかっていうところですね。単独ライブってホント、芸人活動の中で唯一と言っていいくらいプレッシャーがのしかかります。

ー寄席と違ってニューヨークさんを好きな人たちしかいないですし、言い訳ができない「純度100%ニューヨークの出し物」とおっしゃってますもんね。

屋敷:ホンマそうです。おもんなかったら完全に俺らのせいですしね。だから「祈り」ですよ、ずっと。「おもろいネタできろ!」「お客さん来てくれー!」っていう……。



ー僕もニューヨークさんのオンラインサロンに入らせてもらったんですけど、あの場所であがった意見とかアイディアを採用することってあるんですか?

屋敷:そうですね、グッズとかに関しての意見はちゃんと目を通させてもらってます。YouTubeとかラジオのコメントってそんなに読まないんですけど、サロンはなるべく密なコミュニケーションが取れたらええかなっていう気持ちがあって。単独のタイトルも一緒に考えてもらったりして、まだ採用はしたことないですけど、ニュアンスとして一部に入ってきてたりはしますよね。たとえば去年の『Last Message』なんて、サロンで出てきた「ラストなんとか」って言葉にピンと来て、「Last」ってアリやな~みたいな。

ータイで開催する『トゥクトゥクピアス』を足がかりに、いつか海外でも単独ライブをやりたいという願望はありますか?

屋敷:それはあんまないですね(笑)。俺らって日本人に対してしかできないし、海外進出には興味がなくって。日常とか、自分たちが育ってきた背景とかにすごく影響されてもうてるネタが多いんで。だから、「文化が違う人たちを笑かしたい」っていう欲求はないかもなあ……。

嶋佐:うん、俺らはたぶん無理でしょうね。今から外国語を憶えるのも大変ですし、言葉を憶えても日本で言うところの厚切りジェイソンさんみたいな笑わせ方になっちゃうと思うんで(笑)。

屋敷:「わかるわかる!」「おるなー、そういう奴!」って、みんなに共感してもらいたいんやろうな。

嶋佐:そうね。

屋敷:だからまあ、お笑いの単独とかも、もっと見る人が増えてくれたらなとは思うんです。それこそ音楽のライブみたいに。「クリープハイプのチケット取れたけど一緒に行く?」くらいのノリで、ニューヨークの単独ライブにも来てもらえたらええなって。


左から嶋佐和也、屋敷裕政(Photo by Mitsuru Nishimura)

<INFORMATION>

ニューヨーク単独ライブ 「虫の息」
出演者:ニューヨーク(屋敷裕政、嶋佐和也)
主催:吉本興業
公演日程:
■名古屋
会場:名古屋市芸術創造センター
2023年7月12日(水)18:00 開場 19:00 開演
■福岡
会場:よしもと福岡 ダイワファンドラップ劇場
2023年7月22日(土)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
■大阪
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2023年8月5日(土)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
2023年8月6日(日)①12:00 開場 13:00 開演
■北海道
会場:共済ホール
2023年8月11日(金)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
■東京
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
2023年8月17日(木)18:00 開場 19:00 開演
2023年8月18日(金)18:00 開場 19:00 開演
2023年8月19日(土)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
2023年8月20日(日)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
※オンライン配信あり(詳細は後日発表)

<チケット情報>
チケット価格(税込・全席指定):前売 5,000円
※未就学児童不可
※当日券に関してはお問合せください
※オンライン配信あり(8月20日(日)東京芸術劇場プレイハウス公演のみ)


『今更のはじめまして』
ニューヨーク著
発売中
仕様:四六判・並製
定価:1,650 円(税込)
発行:ワニブックス

~目次~
第一章【激変する環境】
第二章【子供の頃】
第三章【学生時代(AD 時代)】
第四章【NSC時代】
第五章【順調な芸人人生のスタート】
第六章【挫折】
第七章【YouTube とM-1グランプリとキング オブ コント】
第八章【相方のこと】
第九章【結婚】
第十章【これからのニューヨーク】
特別企画【マヂカルラブリー×ニューヨーク スペシャル対談】


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