笠置シヅ子&服部良一特集、刑部芳則が語る戦前のブギ、「東京ブギウギ」



田家:昭和23年、1948年1月発売。

刑部:これを聴いたときには、あ、これで戦争が終わったんだな、平和な日本が来たんだなっていう感じがしますし、それからやっぱり服部さんじゃなきゃ書けない新しいサウンドだなって感じがしますよね。

田家:焼け跡の中央線の電車の中で浮かんだという有名な話がありますもんね。

刑部:そうですね。これは霧島昇さんの「胸の振子」という、服部良一さん作曲なんですけど、それが終わって中央線に乗っていたらつり革が揺れているのを見て、その振動でメロディが浮かんできたみたいなんですね。西荻窪に着いたときにこれは忘れちゃいけないというのですぐに喫茶店に入りまして、紙ナプキンに五線譜を自分で書いていったという。それがこの「東京ブギウギ」の誕生だそうですよ。

田家:この「ブギウギ時代」は昭和23年、1948年11月に発売になって。

刑部:「東京ブギウギ」が当たったことによって、服部さんがたくさん作るんですよね。まさにブギっていうものが大衆にも求められていた時代を象徴している曲だと思うんです。それから歌詞の中に“トウキョウ ネギネギ ブギウギ”とか、それから“猫も杓子もブギウギ”とか遊んでますよね。作詞が服部さんなので。

田家:村雨まさをさんという名前になってますよね。

刑部:そうなんです。ペンネームで使っているんですけど、服部さん、今の2つのフレーズを大変気に入っていたみたいで。だから猫も杓子もブギウギなんていうのは市丸さんが歌った「三味線ブギウギ」にも同じフレーズで出てくるんですよね。

田家:NHKドラマ『ブギウギ』はこの後戦争に入っていくんでしょうけども、戦争はどんなふうに描くんだろうと思っているんですよね。

刑部:そうですね。それがみなさんやっぱり一番気になるところだと思うんですけどね。これは実際に放送を観て、確認して楽しんでいただければと思いますね。

田家:先生の風俗考証はどんなことをおやりになるんですか?

刑部:テレビ画面に映る小道具であるとか、背景に出てくる時代にふさわしいものを用意するというか考えるんですね。例えば商品なんかでも喫茶店なんかに入りますよね。そうすると、そこのメニューとか。例えば昭和何年の何月の段階だと、これがここに出てもおかしくないかどうかとか。1つ1つ調べて、ちゃんと裏取りして提供しているんですよね。

田家:どこで調べるんですか?

刑部:当時の文献とか雑誌、新聞とかそういうものをくまなく見ていって、本当にそれがその当時の東京にあったかどうかとか。東京にあっても、大阪にはなかったんじゃないかとかですね。そういうことを調べているんですよね。

田家:さっきお聴きいただいた「東京ブギウギ」は昭和22年に大阪の梅田劇場で初めて披露されたんですってね。

刑部:あ、そうなんですよ。

田家:なんで大阪だったんですかね。公演があったから?

刑部:そうですね。そこで初披露という形になるんですけど、これはやっぱり服部さんが戦後復興していく人々のために新しいサウンドを作ろうという形で、最初はブルースを作ろうと思ったんです。そしたら先程出てきた作詞家の野川香文さんが、いやー今の時代はブルースよりも、もっとリズミカルな曲の方がいいんじゃないかと言ったときに、じゃあこれはブギウギがいいと服部さんは考えたんですよ。

Rolling Stone Japan 編集部

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