BREIMEN・高木祥太とガリガリガリクソンが語る、「キャラ」と「商売」からの解放

左から、高木祥太、ガリガリガリクソン(Photo by Renzo Masuda, Hair and Make-up・Styling by Riku Murata)

『あらびき団』『爆笑レッドカーペット』などで大ブレイクしたガリガリガリクソンは今、お笑いの仕事がスケジュール帳に刻まれることを拒み、株と向き合うことに時間を費やしている。BREIMENのボーカル・高木祥太が今気になる人物の人生を聞き出す連載企画、第5弾。「ガリガリガリクソン」という巨大なキャラクターを背負い続けたジレンマと、「商売」に縛られる苦しさを抱えた過去から現在に至るまでを初めて明かす。この人生の選択の奥にはお笑いへのまっすぐな想いがあることも、高木は見逃さなかった。

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※この記事は「Rolling Stone Japan vol.24」に掲載されたものです。

家族は公務員
13歳でお笑いライブを主催

高木 ガリさんとはつい先日初めてお会いして。DAWAさんっていう、大阪のレコード屋(FLAKE RECORDS)のおじさんと飲んでいたらガリさんが合流して、「BREIMENというバンドをやってます」と言ったら存じ上げていただいていて。

ガリ ただ、あのときも僕、だいぶ酔っぱらってて。なにを会話したかもほとんど覚えてない!

高木 全部奢ってくれましたね。

ガリ そう、家帰ったらめちゃくちゃお金減ってた!

高木 (笑)。「そもそもなんで芸人になろうと思ったのか」みたいな、いろんなところで聞かれているであろうやつから聞いてもいいですか?

ガリ もちろん。うち、お父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも公務員で。無理やりなにかをしないと、おそらく就職か公務員の道しかないと思って。それこそ小学校のときからみんなが遊んでるときもずっと受験勉強していたくらいで。中学は大学までついてるところやったから、入学したときに「もう人生終わった」と思って。

高木 レールがね。

ガリ そう。なんとかここから抜け出さないと、っていうのでお笑いを始めることに。

高木 でもたとえばミュージシャンとかもあるじゃないですか。なんで芸人だったんですか?

ガリ 大阪やからやない? しかもちょうど始めたのが『M-1グランプリ』が始まった年で。当時僕は中学3年生で、ライブハウスを借りて自分で主催ライブを始めて。

高木 え! 早い。いきなり企画側だったんですね? 自分も出て?

ガリ そう、自分も出て。当時13歳で同期やったのが、おいでやす小田、三浦マイルドとか。だいぶ年上の人と一緒にやってたから、学校に行っても同世代の人と話が全然合わなくて。見てる漫画も違うし、聴いてる音楽も違う。そこでどんどん個性が磨かれていったのかな。

高木 お笑いライブを始めるまで、1人でなにかお笑い的なことをやっていた期間もあったんですか? それともいきなりライブを?

ガリ いきなりライブ。

高木 ええ! それすごい。面白いですね。

ガリ 要は、芸人さんって、クラスで一番人気な人がなるものじゃなくて。「昼休みに漫才します」みたいな人じゃなく、大体2番目3番目とか、ひっそりしてるやつが実はお笑い目指してることが多かったり。そういうタイプやったかもしれん。

高木 13歳くらいからやって、そのままずっと芸人ということですか?

ガリ 当時トリオでやってて、それこそさっき言ったおっさんたちとコンビを組んだり。で、18、19くらいのときに『R-1グランプリ』に出てみようと思って、行きしなに考えたネタで適当にやったら準決勝まで行けちゃって。

高木 すご!(笑)

ガリ そこから、気づいたら『あらびき団』『エンタの神様』『爆笑レッドカーペット』とかが始まって。

高木 そこからずっと吉本でやって、最終的に株を始めると(笑)。

「ギャップが悲しい」
キャラと自分のギャップ

ガリ 『R-1』のときに「ガリガリガリクソン」っていう、オタクでニートなキャラクターを作ったんやけど、それが楽で。僕らの場合、ひとつインパクトのあるキャラを見つけてしまったらほぼ一生食べていける。一発インパクトを残せたらずっとできちゃうから。

高木 逆に言えば、そこからキャラ変する人も少ないですよね?

ガリ 少ない。

高木 キャラ変したいと思うとき、ないんですか?

ガリ それが今で。「ガリガリガリクソンって言ったら、ニートで、インターネットでいろんな人を叩いてて」みたいなことが浸透しすぎて、自分の中でもう飽きちゃって。トークライブをやっても、ぶっちゃけレベル99までいっちゃたなと思って。

高木 そのキャラでできることとして。

ガリ そう。これ以上ガリガリガリクソンというキャラをやるのもなって。あとは、一般の人がほんまにオタクやと思ってきはるから。特に大阪やったら街で「ケツ蹴らせろや」みたいな。

高木 いやそれは怖すぎるだろ(笑)。

ガリ まあそれは大阪の人たちの愛情表現でもあったり。ただ言うても、もうすぐ40歳やし。家族も悲しむし。「お母さんに1万円もらいました」とかも嘘やし。みんなが思ってる以上に、芸人さんって普段明るくないし。

高木 このあいだもずっと「僕を話題の中心にしないで」って言ってました。お笑いのトーンでね。結局ずっと中心になってたけど。

ガリ あ、そうそう。中心になるのが嫌で。目立ちたくないし。ほんまはおとなしいから。でも「イェーイ!」のイメージでしょう。

高木 オンとオフが明確にあるんですね。

ガリ めちゃくちゃ。

高木 このあいだ明るかったですけどね。オンだったということですか?

ガリ 多分。それかめちゃくちゃ楽しかったか。ほんまに記憶ないんやけど(笑)。

高木 ガリガリガリクソンで演じてる、いわゆるステレオタイプなオタクでもないですよね?

ガリ 全然違うと思う。でも世間の人からしたら「『ガンダム』とか『エヴァ』に詳しいんでしょう」「目悪いんでしょう」とか。『エヴァ』見たことないし。

高木 見たことない!? 惣流・アスカ・ラングレーのネタやってますよね?

ガリ 『ONE PIECE』とかも読んでなくて。でも周りの芸人さんはめちゃくちゃ読んでるから「ガリクソンはもちろんオタクやから読んでるよな?」みたいな。この前もジョイマンと一緒にご飯食べてて、そこで僕がどういう人間なのかをいちいち説明しないといけなくて。「思ってたんと違う」みたいな。ほんまの僕はこうなのに、世間とのギャップが悲しい。そこらへんが自分の中で若干落ち込むところかも。


Photo by Renzo Masuda, Hair and Make-up・Styling by Riku Murata

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