おおくぼけいと竹内理恵、現・頭脳警察のメンバーが語るPANTA

海を渡る蝶 / 頭脳警察

田家:作詞が桃山邑さんで作曲がPANTAさん。

竹内:すごく主観的な思い出になるんですけれど、2019年の今のメンバーのみなさんが最初にライブしたのって水族館劇場の花園神社の野外劇場で、私はお客さんとして観に行っていたんですけれど、そのときのものすごい圧倒される感じを忘れられないでいて。今の自由で朗らかで力強い頭脳警察も大好きなんですけど、始まりのときのみんな目を光らせて周りを観ていて、しかもそれは演劇のセットで俳優さんたちが出てきて、わーって合唱する瞬間もあってみたいな。街のパワーとかお客さんのパワーとか全部飲み込む、ちょっとした緊張感みたいなものをすごくよく覚えていて。

おおくぼ:作詞の桃山邑さん、水族館劇場の中心的な存在、作家さんだったんですけれども昨年がんで亡くなっていて。水族館劇場の話って大体まつろわぬ人々の話なんですよね。今回の復讐劇とか、そういうテーマにすごく合っているんですよね。

田家:水族館劇場というのは野外劇でとても有名な劇団で、花園神社でやるということで。

田原:当時50周年の開幕ライブをやるにあたっていた時で。2018年に水族館劇場の劇伴をやってくれという話を受けたときに、頭脳警察が50周年でただ大きいホールでライブをやっても当たり前だから、何か事件を起こさなきゃいけないというときに、劇伴を引き受ける代わりにその劇場でやらせてくれってことを申し込んだんですね。それを4月のあの劇場でやるというときに新宿のど真ん中ですし、場所も場所ですし(笑)。バンドでやるわけですから、もしものときはみんな楽器を置いて逃げてくれみたいな(笑)。

おおくぼ:街に響いてましたもんね(笑)。

田原:リハーサルするときに東口を出たら、音が聴こえたって言われました(笑)。

ソンムの原に / 頭脳警察

田家:アルバムの5曲目「ソンムの原に」をお聴きいただいていますが、これも『ミュージック・マガジン』増刊号で志田歩さんが解説の中に1968年当時に書かれた曲だというふうにありましたが。

田原:その通りですね。TOSHIさんのお宅にPANTAさんが行って、寝ているTOSHIさんの耳元でギターを弾きながら。

田家:その曲は1週目に話が出ていましたね。今回のメンバーの中に岡林信康さんの遠い親戚がいらっしゃる。

おおくぼ:ギターの澤竜次が。初めて会ったときに岡林さんの話をするべきかどうか迷ったらしいですね(笑)。

田家:すごいなあ、それは。偶然でしょうね。田原さんはご存知だった?

田原:それは知ってました。最初にそれぞれのメンバーのライブをちゃんと観に行って選んでいるので、初めての澤竜次のソロのアコースティック・ライブに行ったときに竜次はこの話した方がいいのかどうしようかなって(笑)。

田家: 1968年当時というのはおおくぼさん、竹内さんは全然もう。

おおくぼ:あ、産まれる前ですね。

竹内:前ですねー。

田家:どんなふうに思われます?

おおくぼ:自分の産まれる前の音楽、ロックの源流みたいなものは好きだったので、澤竜次がよく言っていたんですけど頭脳警察という教科書に載っている人たちと一緒にやるんだって教科書みたいなものとして。

田家:竹内さんはお父様がこの頃のことをご存知なんですね。

竹内:そうですね。このへんの音楽のこととか、両親とも大好きでよく家でかかってたりとかするのが、大体母がジャズとかテクノとかが好きでしたね。父はロックが好きで。頭脳警察が家でかかっていたかと言うと、そういうわけではなかったんですけど、この時代の音楽の根底に流れているリズムとか音の感じはすごく親しみを持って聴いています。

田家:この「ソンムの原に」というのもストーリーがあるわけでしょう?

田原:そうですね。PANTAさんがキンクスの「ウォータールー・サンセット」を聴いて、俺もやらなきゃダメだって言って、この曲を作ったんですけど全然勘違いで(笑)。

おおくぼ:ワーテルローの戦いじゃなくて、ただウォータールーっていう駅が(笑)。

田原:そこの歌だったんですけど、そこもPANTAさんの妄想力のすごさですね。

おおくぼ:現在だと調べると全部情報が出てきちゃうんですけど、出てこない中で想像するというのがおもしろいんですよね。

田家:そうですよ、インターネットなんかないんだから(笑)。

おおくぼ:そういうものの方がなんかおもしろいと思うんですよね(笑)。

田家:竹内さんが選ばれた次の曲はそういうまさに世界史、世界を思い浮かべながら生まれた曲でもあると思いますね。PANTA & HALのアルバム『マラッカ』のタイトル曲「マラッカ」。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE