おおくぼけいと竹内理恵、現・頭脳警察のメンバーが語るPANTA

マラッカ / PANTA&HAL



田家:1979年3月発売、PANTA & HALのアルバム『マラッカ』の1曲目。

竹内:これはPANTAさんの日本語の歌と歌詞の素敵さが詰まっている気がしていて、ジャンル感とかすべて包み込んで西洋音楽における日本語歌詞、日本語歌唱の素晴らしさが詰まっているなと思っている曲です。大人になってあらためて最初に聴いたのが、この曲だったんですね。たしかヨーロッパにツアーに行っていたときに一緒にDJの人がいて、その人がおもむろにこれをかけたら、ボルドーの若者が踊りだしたんですよ。

田家:竹内さんがヨーロッパのツアーに?

竹内:ツアーに行っていたときにかけたら、なんだこれは!と思って。でも声は絶対聴いたことあるし、日本語でなんだろうって思ったら、これはPANTA & HALの「マラッカ」という曲ですって。

田家:すごい! 向こうで聴いたんだ! ちなみに何のツアーだったんですか?

竹内:そのツアーは藝大の先輩と組んでいたアンサンブルユニット、トリオで、海藻姉妹というのがあるんですけど、今私は卒業して1人でいるんですけど、そのときは3人女の子でサックス、サックス、ピアノというユニットをやっておりまして。

田家:海藻姉妹って海外ツアーをやっていたんですか。

竹内:やっていたんです、そうそうそう。

田家:おおくぼさんも海外でライブやってらっしゃるんでしょう?

おおくぼ:そうですね。所属しているアーバンギャルドというバンドで海外でやったりはしていますね。

田家:ドラムの樋口素之助さんもロンドンで演奏活動をされていて。

おおくぼ:そうですね。修行をされていましたね。

竹内:セッションに夜な夜な通って、だんだん認められていってみたいな。

おおくぼ:スティック2本を持って、ロンドンに渡って。

田家:澤竜次さんと宮田岳さんは黒猫チェルシーのメンバーだったわけで。田原さんはそういう経緯を全部ご存知なんでしょう?

田原:そうですね。当時、メンバーをどうするかって話になったとき、正直言うと運営側からしてみれば、そのままのメンバーで引き継いだ方が50周年を前に楽なことは楽だったんですけど、PANTAさんは全く新しいバンドでやるつもりになっていたので、そこから一人ずつメンバーを選んでいくってことになったんです。宮田岳と澤竜次は偶然黒猫チェルシーだっただけで。

田家:あ、偶然なんだ。黒猫チェルシーのライブを観てということではなくて。

おおくぼ:それぞれ別々に呼ばれて来てみたら、スタジオで(笑)。

田原:これは本当の話なんです(笑)。

田家:それはPANTAさんが探したんですね。

田原:ライブに行って、もちろん澤はアコースティック・ライブでしたし、宮田のときも劇伴の音楽をやっているときに行っていますので、それを観ていいっていうことになって。

田家:おおくぼさんと竹内さんも、PANTAさんがこの人たちとやりたいんだと。

田原:おおくぼさんは2018年のクリスマスのライブのときに来ていただいて、そのままなし崩し的に我々が強引に引きずりこんだ感じですね(笑)。PANTAさんの中では当時からキーボード、ピアノに対して何かあったんだと思うんです。その中でおおくぼさんとの出会いは本当に大きな出来事だったんだと思いますね。

田家:おおくぼさんが選ばれた頭脳警察の曲がこれでした「まるでランボー」。

まるでランボー / PANTA



田家:1973年7月発売、5枚目のアルバム『仮面劇のヒーローを告訴しろ』の中の「まるでランボー」。

おおくぼ:過激ですねー(笑)。歌詞のちょっと衝撃的というか、ちゃんと詞として必要だから言っているというものとしてやっているのは素晴らしいなと思ったし、これ実はブリジット・フォンテーヌの曲なんですよね。PANTAさんはすごくシャンソンとかフレンチ・ポップに詳しくてらっしゃって。僕も実はシャンソンとかの毎年新春シャンソンショーでピアノを弾いていたりして、意外とシャンソンには少しは詳しい方だったので、PANTAさんとその話をよくすることができていたので、そういうこともあってこの曲は思い出深かったんですよね。

田原:亡くなる年の1月に新春シャンソンショーに出させていただいたときに、この曲をやっているんですよ。おおくぼさんのバンドをバックにして。PANTAさん、人生初で最後のシャンソンライブだったんですよね。

おおくぼ:シャンソン縛りで。

田家:シャンソン縛りのライブがあったんだ。

田原:それがこの歌だったんですね。

田家:PANTAさんの中の頭脳警察というのは世間、僕ら、いろいろな人たちが持っているものとはかなり違うものがあるんでしょうね。パブリックイメージってことになるんでしょうけど、今までお話をしていたのもかなり違いますもんね。

おおくぼ:言葉とかの過激な部分はあると思うんですけど、音楽をやりたいっていうのが中心に確実にあって。そういうパブリックイメージの方で見られるよりも、自分は音楽をやりたいんだっていうのが確実にあったのではないかなと思うんですよね。

田家:おおくぼさんと竹内さんに過去の曲2曲で新曲2曲で選曲してくださいとお願いをしたら、同じ曲が出てきました1990年のアルバム『頭脳警察 / 7』に入っている「腐った卵」。お2人が選ばれました。

Rolling Stone Japan 編集部

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