【密着ルポ】ディアハンターが明かす過去と現在「同世代で最もボウイに近いのは僕だ」

ディアハンターのブラッドフォード・コックス(Photo by Daniel Dorsa for Rolling Stone )


MGMTのアンドリューも驚いた、ブラッフォード・コックスのデカダンな日常

応接室の隙間という隙間はすべてロウソク、ランプ、ジェムストーン、彫刻、雑貨、レコード、本で埋め尽くされている。特に本の数たるや――豪華なハードカバーの古本や古びたペーパーバック、愛犬フォークナーの名前を拝借したウィリアム・フォークナーの南部ゴシック作品も多数揃っているし、オルダス・ハクスリーの1931年のエッセイ集『Music at Night』もある。コックスの蔵書は読書好きにとっては夢のライブラリーだ。読書家のコックス曰く「子供の頃はいつも本が欲しかったけど、手に入れることができなかった。ほら、見ればわかるけど、その埋め合わせでこんなふうになっているってわけさ」。

彼の友人であるMGMTのアンドリュー・ヴァンウィンガーデンがコックスの家を初めて見たとき、19世紀のセンセーショナルなフランス小説『さかしま』と比べてしまったと言う。同署では、世間に幻滅した貴族の末裔が、芸術を愉悦し社会を拒絶する人生が描かれている。「『この生活はあの本みたいだよ。お前はデカダンス好きだね』って、アンドリューが言ってたよ」。


2018年12月、ディアハンターのブラッドフォード・コックス、ニューヨークにて。

コックスは、自身がアトランタで築き上げた静かな生活を、それまで10年以上続けたライブ活動と対立的な議論まみれのインタビュー活動の緊張感から離れるために選び取ったようだ。「極端な表現を長い間続けてきたから、今は自分の殻の中で小さくなっていたい、引きこもりがちな性格だからね。この家を出るかって? 僕はもうミドルエイジだよ。一人で平和と静けさを満喫したいんだ」。

かといって、コックスが芸術の才能を失ったのかというとそれも違う。彼は昨夜、お気に入りの作品であるニコラス・ローグの『地級に落ちて来た男』を観るために外出したそうだ。こういう話も隠遁生活をする芸術好きの男らしい。「あれは最高の映画だ。大好きな(デヴィッド・)ボウイが出ているからだけじゃなくて」と言ったあと、コックスは私の方に身を寄せてきた。「同世代で最もボウイに近いのがこの僕だ。信じるかどうかは君次第だけど」という続けざまの一言が私にしっかり聞こえるように。

この発言の意味は何なのだろうか? 私の反応を待ちきれないように、「ほら、見てみてよ。僕たちの文化は自ら進んでみすぼらしい形になってしまったじゃないか」と彼がジェスチャーを交えながら言う。

Translated by Miki Nakayama

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