サンタナを救った一曲、低迷期に大ヒットが誕生した感動秘話

カルロス・サンタナ、ロブ・トーマス、クライヴ・デイヴィス、その他「スムース」の制作の関係者たちが1999年のメガヒットの実現がいかに困難を極めることであったかを語る(Frank Micelotta/Getty Images)


1. ラジオへの復活を望むサンタナ

男性アイドルグループやブリトニーがチャートやラジオを席巻しようとしていた1997年までに、カルロス・サンタナに興味を持つ人はほとんどいなくなっていた。それでもポリグラムとのメジャー・レーベルは続いていたが、彼は15年以上もヒット・シングルを生み出していなかった。しかし、チャートでの成功に対するプレッシャーを感じていた彼は、1997年7月にニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールでのライブにクライヴ・デイヴィスを招待した。当時、アリスタ・レコードの社長であった彼は60年代後期にコロムビア・レコードでサンタナにとっての初めてとなるレコード契約を結んだ人物である。サンタナのバンドが「ブラック・マジック・ウーマン」や「イヴィル・ウェイズ」、「僕のリズムを聞いとくれ」などのヒットを生んだ全盛期を2人は共に過ごした。

クライヴ・デイヴィス(現在のソニー・ミュージックのチーフ・クリエイティブ・オフィサー):私たちは一緒に何かをするということが本当に何年もなかったけど、彼がラジオ・シティでライブをするから来ないかって誘ってくれた。彼にまた会えるなんて嬉しいことだと思ったよ。誰かとすごく密接に仕事して毎日顔を合わせていたら、もしも仕事が変わってしまったとしてもその関係性がなくなったりはしない。だから、彼を見に行くということは私の感情に訴えかけるものがあったよ。何年も一緒にありえないような経験をしていたわけだからね。

サンタナ:子どもたちと車に乗っていてエリック・クラプトンやベイビーフェイスが流れると、子どもたちに「パパの曲はほんとにたまにしかラジオで聞かないね。流れても『ブラック・マジック・ウーマン』だし」って言われていた。

デイヴィス:カルロスと後で話した時は、子どもたちは当時ティーンエイジャーでラジオで彼の音楽を聞いたことはほとんどなかったって言っていた。その頃の人で一番親しい人は誰かって子どもたちに聞かれた時、私だって答えたと言っていた。「最後にクライヴ・デイヴィスと会ったのはいつ?」って聞かれて「本当に何年も前だよ」と答えたようだ。「それがあなたをラジオ・シティのライブに誘うきっかけになった」と彼は言っていた。そして、その時に「また一緒に仕事をしてくれないかい?」と言われたんだ。

サンタナ:俺はポリグラムとの契約を終わらせようとしていたところだった。クリス・ブラックウェルに「名曲が生まれてくるところなんだ。でも、それをあなたに託すことはできない。“この子”を扱いきれるだけの力をあなたが持っているとは思えない」と言ったら、彼は「残念だ」と言い、それで終わった。

ピート・ガンバーグ(当時のアリスタのA&R責任者で現在アトランティック・レコードのA&Rプレジデント):カルロスの当時の奥さん、デボラが「ねえ、カルロス。またあなたの音楽で商業的な成功をしてもいい頃よ。クライヴのところに行ってみたらどう?すべてはクライヴと一緒に始まったんだし」と言った。それがディオンヌ・ワーウィックであれロッド・スチュワートであれザ・グレイトフル・デッドであれ、クライヴは「アーティストを成功させるために必要な50%はそのアーティストがどんなアーティストかということを人々に知らせることであり、もしそれがすでに達成されているのであれば、成功への道のりは半分まで来ていることになる」というビジョンをいつも持っていた。すでに名前が売れているアーティストであれば後は、そのアーティストが作ろうとしている作品が大衆のリスナーに「ああ、これ覚えているよ」と言わせるだけのすばらしいものになるように、A&Rと音源制作に全力を注ぐだけでいいと彼は常に考えていた。

デイヴィス:私はラジオ・シティで、彼が演奏するのを見て、彼が変わらずまばゆいばかりの名プレイヤーであるのを目の当たりにして、そして、彼が一緒に演奏している若いバンド・メンバーを見て、初めてアメリカにおけるヒスパニック人口の成長について考えるようになったんだ。そこで民族的にも人種的にも年齢的にも異なる様々なオーディエンスを目にした。私は「カルロスは復活できるんじゃないか」と思い始めた。そして、私たちはビバリーヒルズで会う約束をしたんだ。

サンタナ:クライヴに「カルロス、君のライブは最高だけど聞きたいことがある。そのエネルギーをスタジオでも出すことができるかい?やってみる気はあるかい?私も7曲用意するから、君も7曲用意してほしい。できるかい?」と聞かれて、俺は「もちろんだ」って答えた。



Translated by Takayuki Matsumoto

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