川谷絵音が振り返る2021年の音楽シーン

YOASOBIとBTSが席巻
国内シーンを振り返る


―ここからは国内のランキングを見ていきましょう。まずは「国内で最も再生された楽曲」、1位は優里の「ドライフラワー」です。

川谷:このランキングを見ると、シンガーソングライターが強いですね。弾き語りチックな曲が多い。そこはやっぱりTikTokが関係しているんだと思います。6位のAwesome City Club「勿忘」は、映画きっかけでここまでヒットしたのも久々だと思うし、主題歌や劇中歌とは違う、映画本編では流れない「インスパイアソング」というものを定着させたのもすごい。以前「スッキリ」に出たとき、映画のプロモーションで出演していたSHE’Sがインスパイアソング(「Chained」)を歌ってるのを見て実感しました。あと、「勿忘」に関してはAPOGEEの永野亮さんが関わっていて(作曲・アレンジ)。僕はもともと永野さんが好きだったから嬉しかったし、ここで出てきたのは流石だなと思いました。



「国内で最も再生された楽曲」プレイリスト

―あとはやっぱり、YOASOBIが20位までに6曲もランクインさせているのが際立ちます(12位「ハルジオン」、18位「アンコール」、20位「ハルカ」)。

川谷:すごいですよね。Spotifyだけで総再生回数10億回突破とか、ここまで来ると化け物だなって。サブスクが生んだスターだと思います。J-POPでもありつつ、若い人からすると尖ってる感じもあるというか。「大正浪漫」みたいに攻めた曲もやってる。シーン全体が見渡せていて、今の自分たちに勢いがあることも、どういう役割が求められているのかもわかってますよね。ここまで成功してしまうと、同じような曲を作っちゃったり、攻めすぎてよくわかんなくなったりするものだけど、そのどちらでもないっていうのが、6曲も入った理由かなって。あとは幾田(りら)ちゃんの声に、いい意味で癖が少ないから聴きやすいんでしょうね。サブスクで流れてきたとき、嫌だと思う人が少ないっていうか。



―逆に、Adoは声のインパクトで今年の顔になったわけで、そこはある意味で対照的かもしれないですね。それとさっきのエド・シーランの話がYOASOBIにも通じる気がしました。アレンジは多彩なんだけど、軸にあるのはあくまで歌メロっていう。

川谷:暗すぎず、明るすぎずのメロディを作るのが上手いですよね。日本人好みの切ない感じもありつつ、絶望的というわけでもないというか、ちゃんと明るい部分もある。さっきビリー・アイリッシュの曲は時代の空気に合わなくなったのかもしれないって話をしましたけど、YOASOBIの曲はコロナ中でもコロナ後でも聴けるというか、これからも長く聴かれそうな感じがします。今ではテレビを通じて、お茶の間にも浸透してるだろうし、「紅白」も2年連続出場ですもんね。

―ネット発のアーティストは顔出ししないことが多いなか、ちゃんと顔を見せたうえで成功した稀有な例ですよね。

川谷:あとは「国内で最も再生された楽曲」で言うと、BTSの「Dynamite」が「Butter」よりも上位というのが海外と違うところですよね。海外のランキングだと「Dynamite」は入ってないですし(「Butter」が16位)。

―「Dynamite」のほうが曲調やテンポ感がより日本人好みだったということかもしれないですね。そして、「国内で最も再生されたアーティスト」の1位がBTSです。

川谷:それもすごいですよね。「YOASOBIじゃないんだ」って思いましたけど、BTSは世界全体でも3位ですしね。逆に、ジャスティン・ビーバーも日本の18位に入ってますけど(世界では5位)、世界で1位だったバッド・バニーは日本のランキングには一切入ってない。

―ラテンポップはK-POPと並んでグローバル規模では盛り上がっていますが、日本ではなかなか浸透しませんね。

川谷:ザ・キッド・ラロイの「STAY」みたいに、日本はエモい空気がないとこのランキングには入れないんでしょうね。BTSはそういうのも関係ないくらいのムーブメントになってるわけですけど。


「国内で最も再生されたアーティスト」プレイリスト

―ちなみに、「国内で最も再生されたアルバム」は1位がYOASOBI『THE BOOK』で、BTSがトップ10までに3作ランクインしています。

川谷:なるほど、これがアーティストのランキングにも反映されてるんでしょうね。2021年に入って、「Dynamite」でBTSが気になりだした人たちが、過去のアルバムまで聴くくらいハマったってことかなと。普通は少しハマったくらいだと最新作を聴いて終わりだけど、BTSは「沼」みたいな言い方もあるように、みんな深く好きになるじゃないですか? その結果がここに表れてる気がします。基本サブスクは(プレイリストなどを通じて)1曲単位で聴かれるものだから、アルバムまで誘導するのは難しいと思うんですけど、そういう意味でもBTSはやっぱり最強ですね。



―今年はK-POP関連のランキングも発表されていて、「最も再生されたK-POP楽曲」は国内外ともにBTSが上位を占めています。当然、「最も再生されたK-POPアーティスト」も国内外ともにBTSが1位。

川谷:「国内で最も再生されたK-POPアーティスト」の10位にMAMAMOOが入ってますね。去年、僕がテレビで紹介したときも反響がすごかったです。あとは幾田ちゃんがTOMORROW X TOGETHERとコラボしたり、BTSの曲をback numberの清水依与吏さんが提供してたり、もしくはNCTに日本人メンバーがいたりすることも含めて、クロスオーバーも進んでますよね。日本ではBE:FIRSTも今すごく勢いがあるし、来年以降どうなるか楽しみです。


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