エルヴィス・コステロが語る過去と現在、「怒れる若者」と呼ばれた1977年の記憶

 
ニューアルバム、少年時代と両親からの学び

―新作の『The Boy Named If』は、子供から大人への成熟の過程がテーマだそうですね。そうした過程をご自身はどうとらえたのですか?

コステロ:自由に行き来できなくなって、いつまたステージに上がれるのかもわからなかったせいで、考える時間ができた。取りかかった曲をあらためて振り返ったら……「哲学的」という言葉は使いたくないんだが、どの曲も幼少時代や無邪気な少年時代からの旅立ち、悩める青年時代といった様々な視点から人生を見つめていた。それを今度は異なる視点で振り返っていったのさ。

―音楽制作でそうしたテーマが再び浮上してきた理由は何だと思いますか?

コステロ:下の息子たちは来週15歳になるし、一番上の息子はもう40代だ。だから、そういったような成長過程については俺なりの考えもある。10年前には親父を亡くしたし、おふくろも死んで1年になる。誰しもそういうことがあると、自分が子供だった時代を考えるものだ。ある意味そうした出来事で人は成長するからね。

―ソングライターとして、両親からはどんな影響を受けましたか?

コステロ:600ページの本を書いたことがある(2015年出版、2020年に邦訳された『エルヴィス・コステロ自伝』のこと)。俺の祖父と親父が旅芸人という設定で、それが自分に及ぼした影響を空想した話だ。だが本を書き始めた時、親父はパーキンソン病で余命僅かだった。親父は本の執筆中にこの世を去ったが、ページの上では生き続けたってわけだ。実をいうと、執筆を勧めてくれたのはおふくろだった。いいことも悪いことも、胸につかえていることを洗いざらい書きなさい、とね。いかにもおふくろらしいよ。



―ニューアルバムに収録されている「Farewell, OK」には、“ベルベットのあの世にいるエルヴィス”という一節があります。今現在、エルヴィスという名前とはどんなつながりを感じていますか?

コステロ:俺は全く気にしてない。家族からはそう呼ばれないしね。たいていはイニシャルで呼ばれる。言い出しっぺは親父だった。アイルランドの慣習だと思うが、親父が俺を(デクラン・パトリックの頭文字を取って)DPと呼び始めた。エルヴィスの名前で呼ばれることはあまりないし、自分も気にしなくなった。別のアイデンティティというか、クラーク・ケントと呼ばれるみたいなものさ。単なる名前、単なるブランドだよ。

Translated by Akiko Kato

 
 
 
 

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