moonriders11年振りアルバムを鈴木慶一、佐藤優介、澤部渡とともに語る



田家:流れているのは2曲目の「岸辺のダンス」です。

鈴木:これは岡田くんが作曲し、私が歌詞をつける予定だったのだけど、どうも思いつかなくて。もたもたしている間に鈴木博文が先に作ってしまったんですよ。しかもアレンジもしてきた。岡田くんのアレンジはもっとエレクトロニカなシンセサウンドだったんですけど、今回のアルバムでは岡田くんのシンセサウンド的なものがあまりないんです。「岸辺のダンス」は、その前にライブでやっていて。それが2021年の6月くらいかな。その時に鈴木博文のアレンジでタンゴにしようと。リハーサルでは、じゃあドラムはジェファーソン・エアプレインの「White Rabbit」にしようと言ってね。だから、岡田くんがアレンジをする前に我々でやってしまったんですよ(笑)。それで、非常に生々しいバンドサウンドになっているんです。

田家:佐藤さん、澤部さんのお二人はこの楽曲にどう思われたのですか?

佐藤:さっきの1曲目の「monorail」と、この2曲目の「岸辺のダンス」で、決して明るい幕開けのアルバムではないってことが分かると思うんですけど。

鈴木:暗いのは決して悪いことではないのだけど、このアルバムの特徴は歌い回しなんですよ。私、リードボーカル宣言してませんからね今回!

田家:はい、皆さんで歌ってる。ミュージシャンのクレジットに「RECORDING」という言葉が一曲に一人ずつ入ってますけど、これはレコーディングに対するある種の責任をということなのでしょうか?

鈴木:いや、これは簡単に言いますと、自宅で録音したということですね。

田家:あ〜なるほど。

鈴木:要するに、自分で録音してその音を楽曲に使っていると。例えば、ギターの白井良明は家で録ったから、レコーディングエンジニアになるわけですよ。あとエディティングというのもあって、誰かが弾いたフレーズを、家で編集することですね。

田家:この「岸辺のダンス」では、夏秋さんもレコーディングということになっています。

鈴木:夏秋くんは、何かを沢山被せたんだよね。これダビングしたいですってメーリングリストに来るんですよ。でももうそれは、家に帰ってコンピューターの中を見ないとわからないよね(笑)。

田家:この曲は、エロチックな曲だなぁと思ったんですよ(笑)。

鈴木:これタンゴというより、フラメンコ、タンゴメンコだね。コード進行がフラメンコなんですよ。ギターも途中パコ・デ・ルシアのようなのが入ってますね。

田家:この曲のエディティングは慶一さんであります。

鈴木:ある部分の、キーボードをエディットしたとかですよ。で、もう一個思い出したのが、歌にはAメロ、Bメロ、Cメロとかありますよね。このCの部分を岡田くんがどうしてもいれたいと言って、自分で録音して持ってきたんですね。

佐藤:後からなんですね!

鈴木:そうですね。だからそこにはめ込んで。

佐藤:確か6月のライブでは、そこがなかったんですよね?

鈴木:なかった。でも最終的にどうしても入れたいということで(笑)。歌詞も足しました。

田家:1曲目の「monorail」も、そして「岸辺のダンス」も博文さんの詩ですけど、やっぱりこの年代じゃないと書けないものがいっぱいあるのだろうなと思いましたね。

鈴木:「夜のランチは 舌と舌で」とかね。

田家:そこですよ、エロチックの真髄は(笑)。

鈴木:まぁ「monorail」もそうですけど、防波堤って言葉を使うのは珍しいねとか。普通なら大田区だったら堤防ですよ。防波堤は港区になりますね。はっぴいえんどの「風をあつめて」ですけどね。

田家:やっぱり(笑)。モノレールと路面電車の違いがあるっていうのも。

鈴木:そうそう。まぁモノレールは港区までいってるから、この話は破綻して終わりますが(笑)。

田家:そういう面白さも沢山あるというアルバムであります。

Rolling Stone Japan 編集部

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