私立恵比寿中学、10周年ツアーファイナルで見せた「今が最高」の理由

これまでのエビ中の歴史になかった新しい色

本ツアーの見どころのひとつは、メンバーが数人に分かれての歌唱。まずは真山、柏木、中山莉子、風見の4人が「でかどんでん」を披露。パワーのある先輩ボーカリストに引けを取らないパフォーマンスを見せた風見が素晴らしかった。彼女は「未確認中学生X」でも新たにオープニングを任されるなど、徐々に重要なパートを振られている。歌におけるエースとして今後の成長が楽しみ。



前述の小林と小久保による「約束」では、舌足らずで子供っぽい純粋さがきらめく小久保のボーカルが小林の歌声と見事にマッチしていた。安本彩花、星名美怜、桜木がチャラさとギャル度高めでオープンカーに乗りながらパフォーマンスしたのは「結ばれた想い」。この演出は桜木のようなイマドキの女子がいたからこそ実現したと思う。こんなギャル要素(ふざけ気味だったが)は過去のエビ中にはなかった。こうしてグループは変化していく。






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本ツアーのセットリストで一番自由度が高い、というか一番ふざけているのは「夏だぜジョニー」。メンバーそれぞれが夏らしい格好をして現れるのだが、柏木の様子が常におかしい。先日のTOKYO DOME CITY HALL公演では東京ドームが近いということでヤクルトスワローズのユニホームを着ていた。ほかの公演は観ていないが、おそらくこのファイナルが一番ひどかっただろう。なんと宇宙人にさらわれそうな人間の着ぐるみで登場したのだ。これにはメンバーも驚きながら大爆笑。エビ中らしさが存分に発揮されていて、笑いつつもグッときた。ストイックだった6人時代のエビ中も大好きなのだが、あの頃にここまで突き抜けたおふざけはできなかっただろう。それができるのが今のエビ中で、これもまた素直に大好きだと言えるし、そう言えるのがうれしい。



真山、小林、桜木、小久保が客席1階の通路で歌うというサプライズ演出があった「宇宙は砂時計」に続く、「ナガレボシ」も素晴らしかった。振付はなく、歌に集中したパフォーマンスでグッと観客を惹きつける。『私立恵比寿中学』の楽曲は表現が難しいものが多いのだけど、加入から1年と少ししか経っていないメンバーが3人いる状態でここまで仕上げてきたのは凄まじい。もちろん、新メンバーは様々な点でポテンシャルがあるからこそオーディションを勝ち抜いたわけだけど、だからといって難易度の高いエビ中楽曲と百戦錬磨の先輩メンバーに追いつくというのは並の努力では足りない。





終盤は「イエローライト」「靴紐とファンファーレ」「ポップコーントーン」と新旧の名曲が披露されたが、今のエビ中を象徴するのは9人体制スタートの曲「イヤフォン・ライオット」だと改めて実感した。ポップでフレッシュでポジティブ。これまでのエビ中の歴史になかった新しい色で歩いていくんだと再認識できた。









「COLOR」で本編は終了し、本ツアー初となるアンコールが始まる。アンコール1曲目は新曲「青春ゾンビィィズ」。TAKUYAが作詞作曲を務める名曲で、振付もキャッチー。今後もたくさん披露されることを祈る。そして、アンコールラストはなんと「手をつなごう」。この2013年リリースのシングル曲も9人体制では初披露。長年愛される名曲ですべての歌唱を終えたのだった。







すべての演目を終えたメンバーは名残惜しそうに最後のトーク。今年12月での転校(脱退)をすでに発表している柏木が必死に涙をこらえる場面は、見ているこちらもグッときた。そして最後、本ツアーをずっと支えてきたセットに感謝をするという流れになり、9人揃ってセットに向かって頭を下げ、再び顔を上げると、視線の先にある額縁スクリーンに<ツアー完走おめでとう!全国のファミリー&スタッフ一同>の文字が。予想外のサプライズに皆が驚き、風見は涙を流した。その光景は、2013年に行われた「エビ中 夏のファミリー遠足 略してファミえん in 河口湖」の最後、さいたまスーパーアリーナ公演が発表されたときと重なった。形は変われど彼女たちはずっと私立恵比寿中学で、どの時代も愛すべきグループで、今が最高だと思わせてくれる。ただ、これまでと違うことがあるとするなら、今は国内屈指のパフォーマンス力を誇るアイドルだと胸を張って言えること。メジャーデビュー10周年ツアーを通じて、9人は常に変化し続けながらも根っこは決してブレない私立恵比寿中学の姿を我々に優しく朗らかに届けてくれたのだった。


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