Novel Coreが語る、「もうひとつの正解」が示す新たな道標

削ぎ落として見つけた「本当の答え」

―今作の中でそれが一番やれた、と思う楽曲をひとつ選ぶとしたら? もちろん、全曲だとは思うんですけど。

Novel Core:迷うんですけど、でも「Untitled」は今まで出してきた表情と真反対なものなので。いわゆる足し算気質で、色々足していって派手にしていく方が得意だったので、ここにきてすべてを削ぎ落としてアコースティックギターとボーカル1本で曲を作ること自体がチャレンジでした。



―ビートやベースなどを足す選択肢もあったとは思うんですけど、これだけシンプルに仕上げたのはどういう理由でしたか?

Novel Core:削ぎ落とさないと本当の答えは見つからない気がしたのかもしれないです。自分自身が本当に何を思っているのかの答えが欲しかったので、極限まで削って、ボーカルも含めて自分自身と向き合うことを大事にしたかった曲でした。1本になる分、ボーカルがすごく目立つのでセルフディレクションも意識しましたし、ジョン・レノンとかを意識した新しい歌い方だったので(笑)。それがこのタイミングでできたことで、今後の音楽活動に対しても希望が増えたのでよかったと思いますね。

―このリリックはまさに最初話してくれたように、素直に書けたものだと言えそうな内容ですね。

Novel Core:これはもともとこのアルバムに収録する予定がなくて。アルバムの締め切りが6月20日とかだったんですけど、6月3日のワンマンライブを終えるくらいのタイミングで作品の中にどうしても入れたくなっちゃって、ワンマンが終わったタイミングでクマさん(クマガイユウヤ。Novel Coreのライブでサポートギタリストを務める)に正式オファーさせてもらって。歌詞もレコーディング当日に書いたんですけど、どういう曲にしようかと思ったときに素直にパッと出てきたのが、「もしも地球が明日滅びるとか、自分の人生が明日で幕を下ろしてしまうんだとしたら、今日は一体何をするだろう」というテーマで。これは今になってようやく言語化できるようになったんですけど……「音楽をする」って言って欲しかったんだと思うんですよ。音楽が本当に心の底から好きなのか、音楽を商業的な目線のみで見ていないのか。ファンの人たちが「救われた」「命綱になった」とか言ってくれるのを見て喜んでいるけど、自分自身は果たして自分の音楽に救われているのか――正直、『A GREAT FOOL』制作以降、わかんなくなっている時間がちょっとあって。それがわりと苦しかったというか。自然とサビで“今を口ずさんで”というフレーズが出てきたときに、「もし仮に地球が終わるとして、誰も聴いていないかもしれないのに、自分は自分自身の今の感情を切り取って歌うんだ」と思ったら、本当に音楽が好きなんだなって再確認ができて、それがすごく嬉しくて。書きながらずっとブースで涙が止まらない曲でした。このタイミングで作れたことにはすごく意味があるなと思っていますね。

—『A GREAT FOOL』制作以降に悩んでいたのは、具体的に何かきっかけがあったのか、それとも心の隅に置いて蓋していたものがちょっと出てきてしまったみたいな感覚なのか。どういうものだったんですか?

Novel Core:多分、蓋していた感覚もあって。本当は、メジャーデビュー以前からなんとなく、自分が音楽に対してどれだけの熱量があるのかがわかってないところが正直あって。でも環境の変化も大きかったですし、この2年間はとにかく走るしかなかったので考えている余裕がなくて、とにかく目の前のクリエーションと向き合い続ける感じで。

―どんな分野でも「自分はこれを誰よりも愛し抜いていて、情熱も才能もあるんだ」と信じ切れている人の方が少ないと思うし、Coreさんの感じ方が一番リアルだと思いますけどね。がむしゃらに続けることで極まっていくだけ、というか。

Novel Core:ことあるごとに、1個何か大きな結果を出すと、自分の脳みその中で次の作品に対する結果に関しても固執する部分があったり。「前作以上に成績を出さなきゃ」「これくらいのセールスを出さないと次に繋がらないな」とか、そういうことばかりを考えてしまっている時間がわりと長い気がしていて。本当に音楽と素っ裸の状態で向き合えているのかというと、多分そうじゃなかった気がしていたので。でも歌っている曲はああいう内容だし、ギャップがあることにモヤモヤしていて。やっとそれを晴らせたという感じですね。


Photo by Kentaro Kambe

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