石橋凌が語る、ロックという言葉を使うのをやめた理由

―この2~3年、誰もがいろんなことを考えた期間でした。石橋さんはどのような想いで日々を過ごしてきましたか。

石橋:コロナ禍でイベントが中止になったりして、みなさんと同じように悶々とした時間を過ごしていました。ただ、創作活動においては逆に時間がたっぷりあるなと思ったんです。以前、小説家の方が「意図的に書いたんじゃなくて、何かの力が働いて書かされた」という「自動書記」の話をしていて、20代前半の頃に書いて今でも歌っている「魂こがして」「AFTER ’45」(共にARB時代の曲)を思い返してみると、もしかしたらそれに近いんじゃないかと思ったんですよ。それで、行きつけの喫茶店に行って歌詞とメロディが同じタイミングで降りてくるのをひたすら待ったんです。それで降りてきたものをノートに書き留めるっていう繰り返しで10曲が揃いました。時間的には丸々2年ぐらいかかってます。



―本当にコロナ禍でずっと制作をしていたわけですね。アルバムには様々なメロディ、歌詞、アレンジの曲が並んでいて、1つの舞台を見ているような気持ちにもなりました。アレンジはどのように行われたのでしょうか。

石橋:新曲10曲が揃ってから、ギターの藤井(一彦)くん、ピアノの伊東(ミキオ)くんと3人でスタジオに入って、全部アカペラで歌ったものを彼らがギターとピアノで音を拾って譜面にしてくれたんです。そこからアレンジ担当者を決めて譜面を渡して、自分が思う方向性を話しました。それと、レコーディングノートを作って、曲の歌詞の内容、意味を書き添えました。

―藤井さん、ミキオさん、梅津和時さんらはソロ活動の初期から参加していますよね。そういうミュージシャンの音が、曲を作る上で最初からイメージできていたということですか?

石橋:曲が降りてくるまで待つ間も、頭の中には全楽器をセッティングしているんですよ。その上で、この曲はイアン・デューリーのこういう曲、この曲はトム・ウェイツのこういう曲というように参考にする曲を挙げたんです。それは模倣するということじゃなくて、自分が好きなミュージシャンへ捧げる想いもありました。ソロになったときに、どこか古くて懐かしい匂いがするんだけど、今の時代に見合った音楽を作っていこうということで、自分の音楽スタイルとして「ネオ・レトロ・ミュージック」という言葉を掲げたんです。今回は「ネオ・レトロ・ミュージックの完成度、成熟度を増したい」ということをレコーディングノートに書いて渡して、みなさんすぐに理解して音にしてくれました。

Rolling Stone Japan 編集部

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