石橋凌が語る、ロックという言葉を使うのをやめた理由

―確かに、バンド時代から歌っていることはブレてないですよね。今回はご家族のことも歌にしていらっしゃいます。「ファンキーバァバ」はお母さまのことを歌っているんですよね。

石橋:2年前に、102歳で亡くなったんですけど、大往生ですね。この歌詞そのまんま、豪放磊落な人で。親父が病気で早くに亡くなったものですから、文字通り女手一つで息子5人を育ててくれたんです。本当に経済的に厳しい家庭だったんですけど、でもなぜかギターやレコードプレイヤーをちゃんと与えてくれていたんですよね。それには本当に感謝しています。この曲は、東欧のノー・スモーキング・オーケストラ(映画監督のエミール・クストリッツァがギター兼バンマスを務めるバンド)のサウンドが好きで、梅津さんに参考に伝えたらすごく詳しくて。それでアレンジしてもらったんですけど、レコーディングした音を聴いて笑ったのは今回が初めてですよ(笑)。

―(笑)。ユーモラス且つ、展開が目まぐるしくてすごいですよね。

石橋:梅津さんには、「ありがとう、おかげさまでおふくろが甦りました」って言いました(笑)。音で「ファンキーバァバ」を表してくれているんですよね。

―バンド時代の「ダディーズ・シューズ」(1981年)ではお父様のことを歌っていらっしゃいました。そちらのアレンジはスカでしたが、「ファンキーバァバ」を作る際に何か意識していましたか?

石橋:母はライブにもよく来てくれていたんですけど、「なんで「ダディーズ・シューズ」みたいに私をヒロインにした曲を作らないの?」って言われたことがあるんです(笑)。今回はそれを思い出して「ファンキーバァバ」を作りました。

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―一方で、「言ワズモガナ」は二女の俳優、石橋静河さんのことを歌っていますね。

石橋:子どもたちのことを歌うのは今回が初めてなんです。歌詞の冒頭で、〈頑張ってるから頑張りなって言わないよ〉って歌っているんですけど、これはたまに家に帰ってきたときに交わした日常会話なんですよ。〈時代は変わった〉という歌詞もあるんですけど、阪神・淡路大震災のときや、東日本大震災のときなんかに、「がんばろうKOBE」とか「がんばろう ふくしま!」とかあったじゃないですか? でも、被災された人たちが「俺たちもう、がんばってるよ。これ以上何をがんばればいいんだよ」という場面を報道なんかでよく見たんです。「がんばれ」という言葉は場合によってはその人にとっては過度なプレッシャーやストレスを与えてしまうんじゃないかなと思うんです。娘との日常会話と、「がんばっている人にがんばれって言うのは時代的にもう違うのかな」という思いも込めています。

Rolling Stone Japan 編集部

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