プロデューサー瀬尾一三と紐解く、中島みゆき44枚目のオリジナルアルバム

倶に / 中島みゆき

田家:人偏に具と書いて「とも」って読むのは知らなかったです。

(※「倶(とも)に」:正しくは “倶” は旧字体表記)

瀬尾:4文字で使用されているのもありますけれど、この字を当ててくるというのはとてもすごいなと思いました。やっぱり試されているので、いつも怖いんですよ。

田家:あはは。始まり方はシンプルで、途中から舞台が変わっていきます。

瀬尾:テレビの主題歌用に作ったと思われがちなんですが、アルバムを作るときの曲の中にもう入っていたんですよ。だからこのドラマに合わせて作ったわけじゃないんです。内容もあらすじとかいただいて、僕もそれを読んだときに水というのがヒントになって。熱いわけでもない冷たいわけでもない。それはもしかしたら母胎の中だと思って。それをイメージして冒頭を作ったんですけど、どんどん盛り上げていかなきゃ駄目なのは彼女の歌い方がそういうふうになっているからで、歌に合わせるように考えて。はじめは大サビ前のブレイクもなかったんですけど、最後のブレイクを作ったりとかして。

田家:それから舞台のような広がりをみせる。

瀬尾:突然スケール感が広がりますからね。断崖に立ったところで止まって、ブレイクして、そこからジャンプして次のところに行くイメージで作ったんですけどね。

田家:走り出すだけじゃなくて一緒に飛んだ。

瀬尾:立ち止まっちゃ駄目だし、その崖を飛びこさなきゃ駄目なので。一瞬、ん?ってなって、倶に飛ぼうってなるイメージで作ったんです。



田家:「風前の灯火」っていうのはいろんなニュアンスがあるんでしょうけど、俺たちのことか!みたいな感じがちょっとありましたね(笑)。

瀬尾:それは身にしみますけどね。この「風前の灯火」は、もしかしたら年代関係なく、最後までちゃんとやり抜こうっていうか。彼女もある程度妙齢を越した歳になってますので、近い人が亡くなったりとか、いろんなこともあったんでしょうね。こういう今の状況だから、直接に会えなくてもそういうのを感じながら、お互いの生存確認というか、僕とあなたみたいな関係ですけど、それでも最後まで行こうっていう。

田家:走り出そうっていうのが、『親愛なる者へ』の1曲目「裸足で走れ」にもありましたけど、今走れというふうに歌えるのがいいなと思いました。

Rolling Stone Japan 編集部

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