プロデューサー瀬尾一三と紐解く、中島みゆき44枚目のオリジナルアルバム



流れているのは、この番組の後テーマ竹内まりやさんの「静かな伝説」です。2021年、22年、23年と、まだどこか時間が止まっちゃった感じがしていて、あれは何年だっけなみたいな気分なんですが、去年のアルバムラストツアー『結果オーライ』が出て、瀬尾さん1年ぶりの登場なんですね。ツアー自体は2020年2月に中止になったので、3年空いているわけです。3年あればオリジナルアルバムが作れる十分な時間ではあったとは思うんですけど、この状況ですからね。いろんなことがあった中で、今度のアルバムはどういうアルバムになるだろう。もちろん世界もそうですし、みゆきさんも1回ああいう形でピリオドを打った後のアルバム。どんなアルバムになるのかなと思ってタイトルを見てですね、ちょっとびっくりしましたね。

『世界が違って見える日』。今までこういう日本語のタイトルっていうのがあんまりなかったですからね。しかも拓郎さんが、これは瀬尾さんの話の中で本人が喋っちゃったんだと言っていましたけども、拓郎さんが引退するにあたって、中島みゆきさんのアルバムに参加したっていう、いろんな意味で期待・想像が膨らんでたわけですが、こういうアルバムになりました。音楽を語ることの意味、役割っていうのはこういうことなんじゃないかと思わされながら瀬尾さんのインタビューを聞いておりました。サブスクになって音楽が単体でバラバラで聞かれるようになって、アルバムのテーマとかアルバムの流れとかアルバムのストーリーがあまり語られなくなってくる中で、今回の『世界が違って見える日』はまさにアルバムですね。イントロから最後まで何の無駄もなくて、全てに意味ある。そんなアルバムです。

1曲目の「倶に」の「風前の灯火だとしても 消えるまできっちり点っていたい」。これはいろんな解釈があるでしょうが、僕らの歌でもあるんだろうなと思いながら来週は後半に臨みたいと思います。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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