プロデューサー瀬尾一三と紐解く、中島みゆき44枚目のオリジナルアルバム

十年 / 中島みゆき

田家:『世界が違って見える日』の3曲目「十年」。これはクミコさんに2007年に提供した曲ですね。

瀬尾:そうなんですね。

田家:そうなんですねっていう感じですか?

瀬尾:僕は全然関与をしてなかったので。

田家:あのときは坂本昌之さん。

瀬尾:だから本当に申し訳ないんですけど、クミコさんヴァージョンは聞いてません。嫉妬なんでしょうかね(笑)。

田家:(笑)。今回はシャンソン風ですもんね。クミコさんヴァージョンは逆に、シャンソン歌手なのにシャンソン風じゃなかった。

瀬尾:それはアレンジした坂本くんに聞いてください(笑)。

田家:今回シャンソン風にしたのは?

瀬尾:中島さんとシャンソンが乖離しているわけじゃないと思うんですよ。申し訳ないけどさっき言ったようにクミコさんのバージョンを聞いたことがないので、僕は新曲としてやっていて。僕がデモを聞いたイメージだけでやっているので。こういう男女の恋愛の過程がシャンソンは結構多いですから。そういうのを歌っている。だからある意味、こういうふうに彼女がやりたかったんだなっていうのを僕が色をつけただけのことなので。

田家:瀬尾さんの中でシャンソンとはどういう距離なんですか? いろんな音楽やってらっしゃいますが。

瀬尾:フランス映画とかイタリア映画が流行ったときにシャンソンもスタンダードで聴いていたし、僕の中ではイタリアのカンツォーネもそうで。スペイン語も、結構いろんな音楽を中高大学と聞いてたので、そんなに僕の中で区別がないんですよ。

田家:そういう意味では、みゆきさんでこういうものをやってみたかったというのもあるんでしょうか?

瀬尾:僕がやりたいというより、彼女が歌うのにどう合わせていくか。彼女の歌の主人公の背景をどうしようかって。ジャンルがこれだからこうとかって結び付け方はないです。

田家:アルバム1曲目、2曲目、3曲目、みゆきさんの歌い方も違いますよね。

瀬尾:そうですね。今回はこう来るのかなと思いましたね。これは詳しくは言えないんですけど、なるほどねっていう感じで。

田家:なるほどなぁってことで言うと、並木っていう同じ言葉、同じ条件だから時間が変わっているんでしょうね。淡々と始まっていながら感慨が深くなってくのがアレンジでわかる。

瀬尾:それはありがたいですね。同じシチュエーションっていうか、近くなり遠くなりしながら。でもシーズンと年が変わっても同じように歩いてる感じしません? 2人の男女が久しぶりに会ったのか、最後10年ぶりに会ったのかもしれないけども、一つのショートフィルムみたいな感じがすると思うんですよね。

田家:2番の歌が始まる前に転調されて、あれから10年みたいなセリフが入った感じがしますよね。

瀬尾:あははは。テロップが入る感じですもんね。

田家:メランコリックなサックスが入ったりする。この辺の細やかさ。

瀬尾:そう言ってくださればいいんですけど、自分の中の引き出しの中にはなかなかなくて。これはソプラノサックスだなみたいな感じで決めちゃったんですけどもね。

田家:10年っていう長いか短いかって感じがとてもよく出てるなと思ったりもしました。

Rolling Stone Japan 編集部

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