プロデューサー瀬尾一三と紐解く、中島みゆき44枚目のオリジナルアルバム

体温 / 中島みゆき

田家:みゆきさんのアルバム『世界が違って見える日』の5曲目「体温」。アルバム発売の前にいろんなニュースが流れてきました。拓郎さんがみゆきさんのアルバムに参加した。それがこの曲です。

瀬尾:拓郎さんが自分でバラしちゃいましたね(笑)。黙ってられない人なので。

田家:本当は言わないでおこうと思っていた?

瀬尾:僕としては、カメオ出演的に、映画で言えばクレジットも出てないような感じで。ヒッチコックが通行人で出るみたいな感じぐらいで、渋いねってやりたかったんですけど、拓郎さんが喋っちゃいました。僕の最初の思惑とは全然違うんですけども。

田家:でも瀬尾さんがおっしゃらないと、こういう参加はないわけだから。

瀬尾:僕と吉田さんのいつもの生存確認メールをやってるときに、中島さん今レコーディングしてんの?って聞いてきたんで、してるよと言ったら、ギター弾いてもいいよって。

田家:拓郎さんの方から言ってきた?

瀬尾:そうなんですよ。コーラスをやってもいいし、ハモるしって。本当にやる?って言ったら、いいよって言うから、中島さんと相談して、どの曲がいいかなと思って。勝手にぱぱっとやって、じゃあとよろしくって帰ってしまいました(笑)。

田家:みゆきさんが何のときか、拓郎さんがギターを弾きたいって言っていて、ラジオのお便りコーナーか何かでみゆきさんが「あの人が1曲で帰るわけないじゃない」とかって言われていましたね。

瀬尾:いろいろと考えていたんですよ。たらればの話なのでどうしようもないんですけど、実はラストツアー『結果オーライ』でどっかで引っ張り出そうと思ってたんです。それができずじまいだったので。そういうことも吉田さんと話していたので、その機会も含めてこの1曲やってもらって収めていただこうということになった。

田家:でも、アルバムの中では割と明るめですよね。

瀬尾:そうですね。ただアイロニー、とても皮肉っぽいですけどね、今の世の中に。

田家:しかもウォールオブサウンドっぽいサウンドに拓郎さんが入るっていうのもね。

瀬尾:彼としてもDフラットってギターで弾きにくいので、カポしてCでやってって言われて。譜面を書き直してって言うから全部書き直して、お願いしますって言ってやってくれましたけど。

田家:あの2人が一緒にスタジオにいるところで感慨深くなったりは?

瀬尾:特別感慨深くはないですね。2人ともそんな時代というのはもう終わっちゃったというか、僕たちもいつ鬼籍に入っても構わない状態なので楽しくやるしかない(笑)。会ったときぐらい楽しくやりましょうって。

田家:拓郎さんライブ活動引退ってことで、特に何かってことは?

瀬尾:ないですね。というか、過去にも何回も引退なさったことがあるので、本当の引退かどうか僕の中で信じてないんで。

田家:実は僕もです(笑)。来週はアルバムの後半をご紹介していただこうと思います。来週もよろしくお願いします。

瀬尾:よろしくお願いします。

Rolling Stone Japan 編集部

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