けろりらが語る、TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界

作画監督としての挑戦

ーキャラクターにアニメーションで動きをつける際に、けろりらさんが意識したことはありますか?

けろりら 自分がやりたいアニメーションを先につけないで、要求されているものに対してどう応えるかを最初に考えるようにしてました。演出さんが各話にいるんですけど、それぞれのやりたいことがちょっとずつ違うので、なるべくそれに合わせつつ、目指すものは同じにしたいなってずっと思っていて。だから各回で微妙に絵の描き方が変わってるんです。それは面白いところでもあって、飽きない作り方だったかなって思います。

ークリエイティブをコントロールする上で大事にしていたことはありますか?

けろりら なるべく会社に出社して、人と会って話すようにしました。各回、いろんなスタッフの方が関わってるんですけど、何が起きてるのかとか、何がやりたいのかとか、困ってることがあるかとか、進んで聞こうとしてました。自分が知らないところでちょっとしたハプニングが起きてたりするんですけど、それをなるべく早い段階で処理しないと、どんどん大きな問題になっていっちゃうんです。だから状況を細かく見ながら、いま何が起きてるかを把握するようにしたんです。例えばアニメーターから作画担当の自分のところに修正が来た時に、今日あったことや困ってることを聞いたりして、そういう会話のなかで、「こういう表現がやりたいです」みたいな話も出てきたりする。それこそ第3話(「馳せサンズ」)で実写の素材がいっぱい出てくるんですけど、あれもそういうやり取りから生まれたものなんです。あと、制作進行って話数を担当して素材の管理をしたり、連絡を取ったりする仕事なんですけど、制作進行さんともなるべく会話しようとは思ってました。そんな感じで、いろいろ話を聞いてると向こうも話しやすくなってきて、だんだん何も言わなくても相談してくれるようになるんです。そういう状況にしたいなっていうのはずっと思ってたことでした。

ーなるほど。うまく皆さんをまとめることができて、いい雰囲気のなかでできたんですね。

けろりら 雰囲気はかなりよかった気がします。それぞれのスタッフに担当話数があり、それが終わったら大体みんな終わっていくものなんですけど、最初の方の話数から参加してくれてるスタッフが最終話ぐらいまで手伝ってくれてて、それも大きかったと思います。

ースタッフの希望が活かされたシーンって第3話以外にもあるんですか?

けろりら スタッフっていうか監督がやりたかったことですけど、第7話(「君の家まで」)のゾートロープとか、実写の映像とかはそうでした。最初はみんな動揺してたんですけど、作っていくうちにだんだん乗り気になってくる。誰かがそういう変なアイデアを出して、周りもそれ面白いかもってなってジワジワ進んでいった感じですね。第7話はいろんな面白いことが起きてた印象があります。セル画みたいな、アナログタッチのシーンが出てくるんですけど、あれもそういうのが得意な五十嵐海さんっていうアニメーターさんがやってくれたんです。ぼっちちゃんが縛られていて、周りで体育祭をやってる人たちが三角定規を持ってたり、変なことをしてる。でもヘンなことを言い出すのはやっぱり監督でしたね。第9話「江ノ島エスカー」のたこせんも、監督が「実写貼ったらいいんじゃない」って言い出して。監督が率先していろいろやってたから、みんなヘンなことをやりやすかった部分はあるかもしれないです。


「ぼっち・ざ・ろっく!」より(©はまじあき/芳文社・アニプレックス)


「ぼっち・ざ・ろっく!」より(©はまじあき/芳文社・アニプレックス)


「ぼっち・ざ・ろっく!」より(©はまじあき/芳文社・アニプレックス)

ーけろりらさん自身がチャレンジングだったシーンや話数はどれですか?

けろりら 作画監督として1話丸々やるのは初めてだったので、第1話は緊張しました。キャラクターデザインも初めてだったので、最初は探り探りというか。自分が先に原画作業をして素材を作っていくんですけど、初めての仕事はやっぱり緊張しますね。監督がどういうラインを求めてるのかがわからない状態から始まるので、「描いてみたんだけどどうでしょう」ってこまめに見せながら進めていきました。当初は線量の多い、もっと複雑なデザインだったんですけど、最終的にはかなりシンプルなところにまとめたんです。今までのCloverWorks作品では「ワンダーエッグ・プライオリティ」とか「その着せ替え人形は恋をする」とか線が多い作品が多かったので、シンプルな絵はチャレンジでした。線が多い方が難しいように見えるんですけど、逆に線が少ない方が描く情報を選ばないといけないので難しいんです。表情とか髪の毛とかの情報量もかなり高い精度でやらないと、画面で表現した時にぺらっとして見えちゃう。第1話はそこを探ってましたね。第2話(「また明日」)ぐらいでちょっとこなれてきて、そこからは軌道に乗っていった感じです。すっきりしたデザインでどう表現するかは、自分のキャリアとしてはチャレンジングな部分であったのかなと思います。

ー最終話の第12話(「君に朝が降る」)の作画監督もけろりらさん単独でしたよね。

けろりら 第12話の時は完全に描き慣れていて、第1話以上に原画も手がけました。第1話の時は「どうなっちゃうんだろう」って思ってたんですけど、最終話の時は「終わっちゃうのか」みたいな。もちろん作業が完了しないとオンエアできないから、終わった方がいいんですけど(笑)。表現としては自分の絵がだんだんまとまってきて、最後にやっとうまく描けたなって気持ちもあります。第12話は今でもけっこう見返してるんですけど、うまくいったなって満足感がありますね。



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