けろりらが語る、TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界

リアリティの追求、バンドに関する原体験

ーけろりらさんとしてはバンドもののアニメをやるのは初ですか?

けろりら そうですね。

ー文化祭もそうですけど、バンドの活動を描くにあたって、例えば誰かのドキュメンタリービデオを見るとか本を読むとか、何かやったことはありますか?

けろりら 知らない知識がいっぱいあったんです。ギターが弾けなかったのでギターを買って練習してみたんですけど、実際に買って触ってみて、重いなと思って、ぼっちちゃん、こんなことやってるんだって。ライブのシーンは、ミュージシャンの方が演奏してる様子をモーションキャプチャーで3Dに取り込むんですけど、どういう感じで演奏するかの打ち合わせがあって、リハーサルをして、モーションキャプチャーの現場で演奏してもらって録画する。そのプロセスを見て、バンドの演奏している雰囲気がだんだんわかるようになってきて。バンドものを作ってるという実感が、脚本やキャラクターデザインの段階ではどうしても湧かなかったところがあったんですけど、そういう流れを経て次第にわかってきたという感じです。

あと、自分のいた学校が軽音部が有名な学校で、周りにバンドをやってる子がいっぱいいたんです。そういえば当時、友達のライブを観にライブハウスに行ってたなとか、今回いろいろ思い出して。自分はどっちかっていうと、ライブハウスにいるお客さん目線ですけど。第2話で、ぼっちちゃんがライブハウスのバイトでドリンクを渡す場面があるんですけど、本番が始まる前の客席の空気感とかこういう感じだったなって。自分は演奏できないから、演奏面のことはいろんな人にアドバイスをもらいながらでしたけど、ライブハウスっていう概念自体は割と近しいところにあったんだって、作業してる時に思い出しましたね。まったく知らない世界ではなかったというか、近しい世界にある日常として、繋がりがあったのはよかったです。

ー演奏シーンもそうですけど、音楽的なリアリティがある作品ですよね。等身大のバンドマンがそこにいる空気感というか。

けろりら 音楽面の細かいところは、原作のはまじあき先生、アニプレックスと芳文社さんに助けられたなって思っていて。皆さん経験者の方々なので、こうしたらもっと“らしい”、みたいなのを、細かいところまで教えてくれたんです。例えば演奏する時にシールドをストラップにかけてるんですけど、あれも当時、設定を描いた後に「ストラップにかけるといいよ」って、確かアニプレックスの方が言ってくれたんです。そういう細かいところをいろんな人が教えてくれて、それを反映したからリアリティが一段上がってるのかなって思います。それこそアンプやギターまわりのことってかなり細かく設定されてるんですけど、そういうのも全部チェックしてもらっていて。


「ぼっち・ざ・ろっく!」より(©はまじあき/芳文社・アニプレックス)

ーちなみに、けろりらさんは普段バンド音楽って聴かれるんですか?

けろりら それこそアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)さんを高校生ぐらいの時にすごい聴いてて、今回をきっかけに回帰した感じはちょっとあります。学生の時にギターが弾ける友達がいて、その人がいろんなバンドのCDを貸してくれたんです。そういえば、ぼっちちゃんが学校でお弁当食べてるような隅っこのスペースで、ギターを弾いてた人もいた気がして。当時はニルヴァーナやレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)を教えてもらって、そういうのがきっかけで高校生の頃にバンドの音楽を本格的に聴くようになりました。

ーそういう環境で学生時代を過ごしたのであれば、文化祭のシーンとかもエモい気分になったりしました?

けろりら みんな体育館でライブやってたな、みたいな。あんなに広い体育館ではなかったんですけど、机を並べて、軽音部のみんなが弾いてるのを見てました。自分は最終回で言うと、サイリウムを振ってる側でしたね。文化祭は、観客側だけど一応経験していて空気は知ってるから、こんな感じだったなってちょっとうれしかったです。

ー下北沢の街の美麗な背景と、かわいいキャラクターたちの対比もすごくいいですよね。その辺も美術監督の方と話されたんですか?

けろりら CloverWorksの美術部って、リアルな質感と密度がある美術が得意なんです。同じ社内だしそこにお願いできたらいいなって、最初から思ってた気がしますね。監督もそう思ってたので、結果、美術監督の守安(靖尚)さんにお願いできました。守安さんって「アイドルマスター」の背景も担当してたんですけど、アイマスの美術も、写実的だけどキャラクター自体はすごくデフォルメが効いてるじゃないですか。ああいうふうになったらいいなって、当初から着地点が見えていた感じがあります。3Dでライブハウスや部屋も組んであって、空間をしっかり設計した上で綺麗な背景が作られているので、そこに幅があるキャラクターが入っても大丈夫なんですよね。デフォルメされてるキャラクターなんですけど、大元の配置は最初に明確に決められているので、そこでリアリティを担保していく。出力されるキャラクター自体は3D的な絵なんですけど、空間の設計はかなりシビアに作られてるんです。それがリアルな背景においても、マッチするのかなって思います。


「ぼっち・ざ・ろっく!」より(©はまじあき/芳文社・アニプレックス)

ーすごく面白い話ですね。

けろりら CloverWorksは、3DCGアニメーションを制作してるBoundaryという会社と連携してるんですけど、どういう立ち位置にキャラクターがいて、どういう動きをしてっていう設定が、かなり細かいところまで考えられてる会社だなって印象があります。そこはCloverWorksの強みというか。他の会社もあるにはあるんですけど、3DのBoundaryとCloverWorksの美術部は特に連携が取れてるなって印象ですね。

ーみんなが連携して、チーム一丸になって作り上げたんですね。

けろりら そうですね。各部署の人たちがベストの仕事をしてくれた結果だと思います。作ってる最中に、いいものになりそうだなって雰囲気がみんなにあった気がします。いろんな部署の人たちがこうしたらもっとよくなるんじゃないかってことを、自発的にやってくれた印象です。もちろんこちらからこうしてほしいって最初に発注はするんですけど、そのなかでみんながよくしようとしてくれて。それが画面の細部に残ってるんだと思います。

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