続・J-POPの歴史「一番売れた人たちが一番誠実に音楽を作ってた1998年と99年」



98年1月発売、Kiroroのデビューシングル「長い間」。玉城千春さんと金城綾乃さんですね。デビューしたときは、ともに21歳。沖縄県読谷市の高校の同級生です。Kiroroっていう名前は、玉城さんが小学校のときに訪れた北海道で耳にしたアイヌ語の響きから付けたという。沖縄の2人がアイヌ語から生まれた名前のユニット組んでる、そういう2人ですね。

98年99年は、CDが最も売れた年なんですね。B'zやミスチル、宇多田ヒカルさんGLAY、L'Arc~en~Ciel、こういう突出した人たちに目が行きがちなんですが、この「長い間」もデビュー曲でミリオンセラー。年間チャート6位なんですよ。最初は大阪の有線放送で火がついて、そこまでに広がってったんですね。バンドの曲でもないし、ダンスミュージックでもありません。どっちかっていうと地味に近いようなオーソドックスなバラードなんですけど、こういう曲がそれだけ売れたっていうのは、当時のリスナーの耳、当時の聞いてる人たちが本当に音楽が好きだった、そしてCDという形が必要だった、そういう現れでしょうね。98年は宇多田ヒカルさん、椎名林檎さん、aikoさん、女性アーティストが続々デビューした豊作の年でもありました。その年のデビューアーティストです。MISIAの「つつみ込むように…」。



98年2月発売、MISIAのデビューシングル「つつみ込むように…」。アルバムは98年6月に出た『Mother Father Brother Sister』でしたね。シングルは週間でトップテン入り、アルバム初登場で3位、そして1位になりました、年間チャートで8位でしたけど『Mother Father Brother Sister』も250万枚売れてるんです。アルバムの評価で改めて注目されました。

98年12月は宇多田ヒカルさんの衝撃のデビューがありました。宇多田さんはいきなりラジオで「この人誰?」状態になったんですが、MISIAは既にクラブシーンで噂の的になってましたね。リズムアンドブルースとクラブミュージックを融合した、5オクターブの歌姫。ライブは生演奏でしたからね。長崎県の離島の出身で、教会でゴスペルに触れてブラックミュージックに入っていった。その頃からずっと書きつけてるノートがあるっという話をしてました。インタビューしたのがちょっと遅くて、「Everything」が出たときだったんですが、そのときにもエイズで亡くなったDJの話をしてました。それともう一つ、津軽三味線を勉強してるとも言ってました。あれはソウルミュージックだと思いますっていう話が印象的でした。

女性アーティストの年、98年。年間チャート9位だったのがこの曲です。Every Little Thingで「Time goes by」。



98年2月発売、Every Little Thingの「Time goes by」。96年デビューの音楽ユニット、当時は3人編成でしたね。僕がインタビューしたときはもう2人になってましたけど、デビューアルバム『everlasting』が1位になって、これもミリオンだった。「Time goes by」は8枚目のシングルですね。この曲が収録されている2枚目のアルバム『Time to Destination』は350万枚だった。98年の年間のアルバムチャート3位なんですよ。1位2位は何だったかといいますと、B'zの『B'z The Best "Pleasure"』と『B'z The Best "Treasure"』。98年に一番売れたオリジナルアルバムが、この曲の入った『Time to Destination』でした。

改めて聞いていて、TRFからダンスの要素を薄めて、ZARDのすがすがしさ、みずみずしさを加えるとこうなるのかなと思ったりもしましたが、この曲のサビとか転調の印象は小室系だなっていう。エイベックス系の中でも小室哲哉さんの影響を一番受けてるのがEvery Little Thingだったのかもしれないなと思ったりもしました。MISIAはクラブミュージックという背景があって、ELTにもやっぱりダンスミュージックとポップスという一つの線があったんだなと改めて思いました。

Rolling Stone Japan 編集部

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