続・J-POPの歴史「一番売れた人たちが一番誠実に音楽を作ってた1998年と99年」



98年11月発売、SOPHIAの8枚目のシングル「黒いブーツ~oh my friend~」。いい曲でしょ? 90年代屈指のバンド少年の友情ソングだと思ってます。ボーカル松岡充さん、ギター豊田和貴さん、ベース黒柳能生さん、ドラム赤松芳朋さん、キーボード都啓一さん。黒柳さんは愛知県で、他はみんな関西。大阪、兵庫ですね。

SOPHIAは95年にメジャーデビューしたんですね。初めて見たのは、その年の日清パワーステーション。97年6月に日比谷野音でジュンスカの解散コンサートがあったんです。その1週間後にSOPHIAの初めての野音があった。両方見て、終わっていくバンドと、こっから羽ばたいていくバンドはこんなに違うのかと思った記憶があります。制作してたのが同じ事務所だったんですね。GLAYのステージも作ってた事務所でした。新しいバンドがなかなか出にくい状況になってたのが90年代の後半でもありました。そういう中で新しいスタイルの先陣を切ったバンドが彼らでした。99年5月発売、Dragon Ashの「Grateful Days」。

Grateful Days / Dragon Ash feat. ACO, ZEEBRA

99年5月に発売になりました『Dragon Ash feat. ACO, ZEEBRA』。Dragon Ashは97年2月にメジャーデビューしたんですね。僕が初めて見たのが、98年の8月に赤坂BLITZで佐野元春さんが行ったイベント「THIS!'98」。「THIS」っていうのは彼が主催していたプライベートマガジンですけど、そのタイトルの新しい人たちを紹介するっていうイベント。スーパーカーとかthe pillowsなんかと一緒にDragon Ashが出てたんですね。その頃はまだミクスチャーっていう言葉もあまり広まってなくて、ヒップホップという言葉がやっとみんなの口に上るようになった時代で、バンドとDJっていうスタイルがとっても新鮮でした。先週ご紹介したEAST END×YURIとかスチャダラパーっていうヒップホップのイメージと全然違ってて、あれがミクスチャーってことだったんだなって後になって気づいたということがありました。

この「Grateful Days」は5枚目のシングルなんですけども、ミクスチャーロック初のオリコンチャート1位ですね。「俺は東京生まれHIPHOP育ち悪そなヤツはだいたい友達」。大阪でも、大阪生まれヒップホップ育ち、悪そうなやつは大体友達っていう、そんな人たちがヒップホップをやってた時代です。「Grateful Days」がシングルチャート1年、年間チャート13位。この「Grateful Days」が入ったアルバム『Viva La Revolution』も年間チャート13位。ウイークリーチャート1位でした。いろんな音楽が売れた90年代ですね。

90年代の10年間、音楽のスタイルだけじゃなくて、環境も激変しました。7年ぶりにオリジナルアルバムを出したという人の作品をお聴きいただきます。山下達郎さんのアルバム『COZY』から「ヘロン」。

ヘロン / 山下達郎

98年8月発売、山下達郎さんのアルバム『COZY』から「ヘロン」。91年に出たアルバム『ARTISAN』以来、7年ぶりのアルバム。寡作で知られている達郎さんですが、7年ぶりというのは当時最も空いたブランクですね。オリジナルは80年の『RIDE ON TIME』以来、7作連続の1位を記録しました。

その7年間に、クリスマスアルバム『SEASON'S GREETINGS』とかベストアルバム『TREASURES』、既発アルバムのリマスターをやってたりはしたんですけど、オリジナルアルバムが7年ぶり。「ヘロン」のレコーディングデータを見てたら、93年、94年、97年、3回ありました。CMに出たりしたんで、それを全部やり直したりした。時間がかかった理由の一つがスタジオでした。自分たちのスタジオが湾岸開発で取り壊されてしまった。96年に新しいスタジオができて、その間いろんなスタジオを転々としながらアルバム作り、音楽作りをして、なかなか思うような結果が手にできないで7年経ってしまった。

97年に、KinKi Kidsのデビュー曲「硝子の少年」。作詞・松本隆、作曲・山下達郎が出て、大ヒットしてるわけですけども、このアルバムには入れてませんね。売れるからという理由は、あの人にはないんですね。自分の作品をどこまで納得できてるかどうか、それが全て。まさに職人です。達郎さんと同世代の盟友のアーティストの曲をお聞きいただきます。99年の年間チャート4位です。坂本龍一さんの『ウラBTTB』から「Energy Flow」。

Rolling Stone Japan 編集部

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