続・J-POPの歴史「新しいバンドたちが新しい扉を開けた1994年と95年」



1週目でNHKが「BSヤングバトル」という全国のバンドコンテストを90年に始めたという話をしましたが、1回目の優勝がGAOですね。そして2回目の優勝がシャ乱Q「ラーメン大好き小池さんの唄」。92年にメジャーデビューしたんですね。当然そういう番組で優勝したわけですから争奪戦が展開されて、シンガーソングライターのKANさんが所属していたアップフロントが獲得しました。

でも94年ですからね。もうバンドブームは衰退の一途、むしろ逆風ですね。トレンディドラマとラブソングの時代。これは先週のテーマでもありましたけど。シャ乱Qもなかなかヒットが出なくて、初めてのヒットが4枚目のシングル94年1月の『上・京・物・語』。これは契約打ち切りの危機の中で発売されて、その後の94年10月の『シングルベッド』が1年以上のロングセラーでミリオンを達成した。片や、トレンディドラマの主題歌がミリオンを記録しているときに演歌の曲のように1年以上かかって飲み屋さんとかスナックとか有線でじわじわ広がってミリオンになったんですね。

そういう背景を受けて、この「ズルい女」が登場した。かっこいいですよね。ファンク、歌謡ダンスミュージックという感じがありますね。94年はMr.Childrenの「innocent world」が年間チャート1位を獲得したという歴史的な年でもあったんですけど、そういう若者たちのメッセージとは違う泥臭さ、生活感、庶民性、これは関西のバンドじゃなかったら歌えなかっただろうなという曲でした。

もう1曲、そういうシンボリックな曲。典型のような曲をお聞きいただきます。この曲聞いたときはひっくり返りました。94年8月発売、ウルフルズ4枚目のシングル「借金大王」。



94年8月発売、ウルフルズ4枚目のシングル「借金大王」。アルバムも同じ8月に出た2枚目のアルバム『すっとばす』ですね。

これびっくりしましたね。ツイストですからね。踊りながらこれを歌うっていうセンス。借金は上田正樹さんが歌ったりしてましたけど、こういうお笑いの感じがクレイジーキャッツと思ったんですね。植木等かトータス松本かと思いました。ユニコーンもクレイジーキャッツの系譜を引いてるなと思ったりしてましたけど、ユニコーンはバンド全員の音楽的な遊びがありましたけど、このウルフルズのナンセンスさはそういうのを超えてました。「すっとばす」の映像にもびっくりした。関西のどっかの商店街でしょうね。みんな股間を押さえて商店街を行進している。おばさんたちがあっけに取られて見てて、演奏シーンもない。あの映像が流れたときには唖然として、面白いなこいつら、と思いました。

バンド結成が88年で、92年「爆発オンパレード」でデビュー。94年に伊藤銀次さんがプロデューサーに加わって、特訓したんですね。スタジオで泣きながら弾いてたという時期がありました。アルバム『すっとばす』には、大瀧詠一さんの「びんぼう'94」が入ってた。伊藤銀次さんですからね。大滝さんをやればウルフルズはブレークすると思ってるんでしょう。

95年5月に『大阪ストラット・パートII』が出て、その年の12月に『ガッツだぜ!!』が発売になって、彼らは全国区になるんですね。初めて見たのは日大文理学部の学園祭。なんで彼らを見に行ったかというと、当時キャンパスチャートっていうのが割と脚光を浴びてて、そのチャートで聞いたことない名前が上がっていた。ウルフルズ、妙な名前だなと思って見に行ったんですよ。それでびっくりしちゃった。アルバム『バンザイ』が出るのが96年1月ですからね。これから面白くなるというときに見ることができた。そんなバンドでしたね。

90年代に入ってちょうど5年目ですね。やっぱりみんないろんな転機を迎えてるときで、次の人たちは日本の夏を歌うようになって、5年目で最大のヒットが出ました。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE