Diosが語る、ポップミュージックで「自由」を歌う限界と可能性

“ただしいフォーム”について、さらにツッコんで聞く

―その「ただしいフォーム」というのはどこからやってくるんですかね? 自分が思っている「ただしいフォーム」が本当にただしいのか、というのはまた難しいところで。

たなか:それはおっしゃる通りで。僕の中で「ただしいフォーム」と「鎖」が一体化しているんですけど、自分で決めるものではないっていう。例えば、歩くことにおいてのただしいフォームは、骨のつき方とかで決まっていて、それはトレーナーさんとかに教えてもらって矯正していくもので。寿司職人とかだったら、大将が握っているところを見て、盗んで、失敗して、ということを繰り返す。結局鍛錬って、自分1人で完結することはほとんどないと思う。

Ichika:ここで言ってる「ただしいフォーム」というのは、「自分で見つけなさい」じゃなくて、理想値があって、それを見つけることも含まれていると思う。

たなか:そう。だから、ただしいフォームを発掘することもスキルだよねとは思います。

―自分でただしいフォームだと信じ込んでいたものが実はただしくなかったとわかったときの絶望って大きいですよね。その経験も未来に活かせる、と信じきれたらいいけれど。

たなか:でも、活かせなかった人を否定したくないんだよなあ。

Ichika:でもそれは無理だと思うぞ。これを出す時点でさ、もう表裏一体じゃん。今までも切り捨てたものがすでにいっぱいあるのよね。

―ひとつの音楽で全員を救うことはできないというのは真実だと思います。でも、この作品は片足を暗いところに突っ込んでいる人にこそ届け得る音楽だという希望は持っていたいですよね。

ササノ:ちゃんとまだ心に光が宿っている人間には届くと思う。

たなか:もう真っ暗まで行くと、ね。

Ichika:それは音楽でどうこうするレベルではない。両足どっぷりじゃなくて、片足自分で抜け出せてるけど、もう片足が浸かっちゃってる、みたいな人たちに向けたアルバムじゃない?

たなか:そういう人たちに「自由」「アンダーグラウンド」で気づいてもらって、「じゃあ何をすればいいんですか?」って言われたときに、“ただしいフォーム&疾走”、これです(笑)。



―最後に、10月に行われる『Dios TOUR 2023』はどういうツアーにしたいと考えているかを聞かせてください。

たなか:ただしいフォームについて歌うからには、僕らがただしいフォームでやらないと話にならないんですよ。鍛練を積み続けて、その果てに出る一撃というのが誰かの人の心に響くものだから。「&疾走」でもまさにそういうことを書いているんですけど。

Ichika:本当に、それを俺たちが体現しないとね。

たなか:“飽きにすら飽きてくその後に/やっと来る一撃”とありますけど、ただしいフォームがわかってくると、サボりたくなっちゃうんですよね。それをちゃんと練習し続けた結果、黄金比をちゃんと捉えたような、自分たちをとんでもない遠いところに連れていってくれる一撃が出ると思っているので、それを出したいですね。

Ichika:これは強烈な鎖になるよ。音楽的表現も、自分の出せる最高のパフォーマンスを練習して出さなきゃいけない。

たなか:いやそうなんだよ。僕ら自身がただしいフォームで疾走しつつ、お客さんにとって、ちゃんと美しくて、エンタメとして成立してる楽しいもの、面白いものを届けたい。その上で、2時間で完結する空間じゃなくて、“ただしいフォーム”というのがみんなの中に少しでも染み込んで、いい鎖に縛られてくれたらいいなって思いますね。

Ichika:どんな形でもいいから、家に帰ったあと実践してほしいよね。




Photo: Yukitaka Amemiya


Edited by Yukako Yajima

<リリース情報>


『&疾走』
Dios
発売中

1.自由
2.アンダーグラウンド
3.&疾走
4.渦
5.また来世
6.花束
7.ラブレス
8.Struggle
9.裏切りについて
10.王

https://dios-andshissou.carrd.co/

<LIVE INFORMATION>


Dios Tour 2023
10 月 7 日(土)仙台 Rensa
10 月 8 日(日)札幌 PENNY LANE24
10 月 11 日(水)福岡 DRUM LOGOS
10 月 12 日(木)広島 LIVE VANQUISH
10 月 19 日(木)大阪 BIG CAT
10 月 20 日(金)名古屋 BOTTOM LINE
10 月 23 日(月)東京 Zepp DiverCity

https://linktr.ee/dios_tour2023

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