目立ちたがりのアバズレ? 米インフルエンサー界の草分け的存在が振り返る壮絶な過去

「私に向けられた憎悪は、見るからにものすごい量だった。私をけなす人たちから精神的苦痛を受けても、ほとんど助けを得られなかった」

彼女は折に触れてネットに足を踏み入れたが、その度に後悔した。「もう安全だと思って画像を投稿すると、すぐにアンチに遭って削除した」と彼女は説明した。憎悪が消えることはなかった(あるユーザーは2019年、「今さらJAをフォローする気か、40になった彼女の人生は完全にみじめで中途半端だぞ。まさに何の価値もない存在だ」とRedditに投稿した)。

近年では90年代から2000年代に若い女性がメディアから受けた仕打ちを、社会全体で見直す動きが出てきている。ブリトニー・スピアーズやモニカ・ルウィンスキー、パリス・ヒルトンといった女性有名人が、自分たちの体験を再検証するドキュメンタリーに出演している。女性蔑視的なジャーナリストが女性をこき下ろす動画が掘り返され、TikTokの若いオーディエンスを震撼させている。

だがアリソンの場合、そうした過去の清算は行われていない。今や164億ドル規模に成長したインフルエンサー市場のパイオニアであるにもかかわらず、彼女は見直されるどころか無視され、見過ごされ、いまだ認められていない。シリコンバレーの投資家がようやくインターネットでのエコシステムに関心を向け、「クリエイター経済」と呼ぶようになっても、アリソンの名前は一度も表に上がってこなかった。

当時ジュリア・アリソンが誰よりも長けていたのは、インターネットでの認知を利用したこと、それを抜け目なくビジネスに転換した点だ。いずれも今では当たり前だが、2000年代中期は型破りだった。当時のブロガーは熱烈なファンを増やすべく、テーマありきのニッチな分野を開拓した。だが、個性の力だけで風穴をあけ、インターネットの新たなツールを駆使して無名の存在から名声を勝ち得えようとしただろうか? ジュリア・アリソンはそれを最初に試みた1人だった。

「(アリソンは)webカルチャーが大きく様変わりした時代を象徴していた」と、コメディアンのヘザー・ゴールドはツィートしている。「彼女は全てが変わった時代の申し子だった。そこに彼女の存在意義がある。彼女はwebカルチャーから受け入れられなかったが、彼女のしたことは定番化した」。

元Gawkerのマネージングエディター、ショワール・シーシャ氏はWIRED誌にこう語っている。「彼女はこのメディアを活用して、無敵の存在になった。彼女はある種魔法のようなやり方で、しなやかにそれをやってのけた」。パリス・ヒルトンは生まれながらにして有名であるがゆえに有名人となり、トップセレブの定義を変えた。ジュリア・アリソンはパリスよりもずっと少ない資産で同じ道を歩み、セレブのあり方を変えた。彼女にとってはインターネットが最大の武器だった。今日、数百万人のユーザーがアリソンと全く同じことをしている。心無い暴力や非難に耐えながらも道を切り開いてきたことを考えると、彼女が残した功績はより一層計り知れない。


2007年、ロシアン・ティー・ルームにて© JULIA ALLISON

「周りからは目立ちたがり屋のアバズレと呼ばれた。でも、本を売ろうとする人を世間では作家と呼ぶんじゃないの? レッドカーペットを歩く人を映画スターと呼ぶんじゃない? 相手が男性だったら、同じようなことを言ったかしら? 私は月2500ドルの家賃を払うために、みんなに自分のコラムを読んでもらおうとしただけ。『アバズレ』という言葉だってそう、みんな何かにつけて私をそう呼んだ。目立ちたがりのアバズレだって」。

以前と比べれば今のアリソンの生活は平穏だ。マサチューセッツ州ケンブリッジの自宅でフィアンセと暮らし、つい最近ではハーバード大学ケネディスクールの修士課程に合格し、リーダーシップと公共政策を学ぶ予定だ。「今のインターネットとの関係も、10年前とそれほど変わらないと思う」と本人。「がっかりしている自分もいるけどね。ありのままの自分をさらけ出すのがインターネットの本来の価値だと思うから、他の人がそれをやれてるってことは、私もまんざらじゃないわね」。

パンデミック中にはInstagramやFacebookに近況を投稿した――限られた少人数の友人にのみ公開された、貴重な投稿だ。「いつかインターネットに復帰できたらなと思ってる」と本人は言い、こう続けた。「TikTokにはもうおばあちゃんかもしれないけどね。それでもいつか復帰してこう言ってやるの、みんなくたばれ!って。今はまだ、その時にむけて地ならしをしているところよ」。

copyright©2023 by Taylor Lorenz. 新著『EXTREMELY ONLINE』(テイラー・ロレンズ著、Simon & Schuster出版)より、許諾を得て引用

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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