性的暴行疑惑のヒットメーカー、米音楽業界での輝かしい実績と「黒い噂」

完全復帰はこれから?

ケシャに提訴されてからたった3年後にゴットワルドの新しい「秘蔵っ子」が音楽シーンに躍り出た。2017年8月にキム・ペトラスが1stシングル「I Don’t Want It At All」をリリースしたのだ。これはゴットワルドとペトラスの数多の共作のはじまりでもあった。



ペトラスと緊密に仕事をしたことのある某クリエイティブディレクターは、ゴットワルドが「音楽やビジュアルをはじめ、ありとあらゆること」に干渉したと明かした。「ゴットワルドはとても細かくて、支配欲が強いです。でも、いままで数多くのポップスターを生み出してきた実績があります。ですから、見方によっては、自分が何をしているかわかっているのです」。久しぶりに「スヴェンガリ・モード」全開のゴットワルドが戻ってきたのだ。

ペトラスもゴットワルドとの共作によって多方面から非難されたが、それでもやめなかった。2022年には、「500万人があの人と仕事をしてるのに、どうして私だけが非難されないといけないの? 私は何とも思ってないし、後ろめたくも何ともない。だから放っておいてよ」とSNSに投稿(のちに削除)。6月23日にリリースされたペトラスのデビューアルバム『Feed The Beast』には、ゴットワルドの楽曲が多数収録されている(これについてペトラスの代理人はノーコメント)。

だが、ゴットワルドの復帰の道筋をつけたもうひとりのアーティストがいた。2014年ごろに契約を交わしたドージャ・キャットだ。ドージャ・キャットのブレイクのきっかけとなった2019年のシングル「Say So」は、Tyson Trax名義でゴットワルドが単独で手がけた作品だった。この曲の大ヒットにより、ゴットワルドは2014年ぶりにグラミー賞にノミネートされた。そのいっぽう、2012年の本誌のインタビューでドージャ・キャットは、ゴットワルドとはもう仕事をしないと宣言している。



ゴットワルドが態度を改めたことも復帰を後押しした。これについて某エグゼクティブは「メジャーレーベル相手に真っ向から喧嘩をふっかけるような奴とは、とてもじゃないけど働けない、という噂が絶えませんでしたが、最近はまともになったようです(中略)とても感じがよかったです。少し態度を改めなければいけないことに気づいたのかもしれません」と言った。

Prescription Songsにおいてもゴットワルドは裏方に徹し、エグゼクティブ(全員が女性)に運営を任せている。「正直なところ、Prescription Songsの社員のほとんどは素晴らしい人たちです。ゴットワルドと会社の緩衝材のような役割を果たしてくれます」と某ソングライターは語る。

とあるアーティストのマネージャーは、示談が成立する前から一部のアーティストが良心の呵責を感じずにゴットワルドと仕事をするには、その一連の輝かしい成功だけで十分だったと指摘する。「やや高級でサービスも悪いのに客が絶えない近所のレストランのようなものです」と彼は語る。「ゴットワルドがやった恐ろしいことに目をつぶるわけではありませんが、トランプ元大統領の支援ステッカーが窓に貼ってあるからと言って、お気に入りのレストランを避ける人はいません」

今回の示談によってゴットワルドの汚名が完全にすすがれたかどうかを判断するのは時期尚早かもしれない。

「それでも、一部の人は彼と働きたがらないと思います」と某ソングライターは言った。「そのいっぽう、彼と働くことに何の抵抗も感じない人もいるでしょう」

ゴットワルドが本当の意味で復帰できたかどうかは、トップクラスのポップスターが彼と再びタッグを組むかどうかによって証明されるだろう。かつてのコラボレーターのケイティ・ペリーのニューアルバムに参加するかどうかも注目したいところだ。いずれにしても、ゴットワルド自身が決めるまでは、誰も彼のキャリアに終止符を打つことはできない。これについては本人が2011年のインタビューで次のように語っている。「私は、この仕事が大好きだ。そう思えなくなった時がやめどきだと思う」

※本記事の追加ルポルタージュはエズラ・マーカス、シェイエン・ラウンドツリー、ギャヴィン・エドワーズが行いました。

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from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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