クミコと加藤登紀子が語るシャンソンとフランスの関係、美輪明宏の存在

Père-Lachaise (ピアフに捧ぐ) / 加藤登紀子

田家:今お聴きいただいているのは加藤さんがお書きになったエディット・ピアフ、トリビュートソング「Père-Lachaise (ピアフに捧ぐ)」。話の中に出ていたフランス革命200年のときに加藤登紀子さんが向こうに行ったときに作った歌でもありますね。加藤さんは本当にグローバルにワールドワイドにボーダーレスに動かれているので。

加藤:そうですね。やっぱり私の切り札ですよね。「愛の讃歌」は、カーネルホールで最初にコンサートしたときにアメリカ人の記者があなたは何語で歌うか?って言ったわけよ。私は頭にきたから日本語で歌いますって言って、びっくりしたわけよ。日本人が日本語で歌うのは聴いたことがないっていうわけ。私はじゃああなたはフランス人にもイタリア人にも、アメリカでコンサートするときにあなたは何語で歌うかって訊くのかって訊いたわけ。初めてそのときにすまなかったって。だけど、日本人が日本語で歌っているポップスはあまり聴いたことがない。それを聞いたときにそうだな、日本の音楽はインターナショナルじゃないんだって、だからしょうがないのかなと思って。1つの切り札として世界中を歩くときにも、「愛の讃歌」とかシャンソンを知らない人はほとんどいないので使いますよね。だから、訳詩家協会の会長にはなったけど、私はやっぱり日本人としての歌をガシッと根の張った表現力のある歌を作っていきたいなって気持ちはあります。

田家:そういう協会長がいる中で理事として(笑)。

クミコ:私が理事おかしいと思うんですよね(笑)。

加藤:理事ですって名乗った人が理事に選ばれているわけよ(笑)。会長が指名したの。

クミコ:もうねー、仰せのままにな感じなんですよ。

田家:今度会長と理事が一緒に歌うコンサートを。

加藤:というか60年間で訳詩家協会が銀座ブロッサムでコンサートを開いたのって初めてなんですよ。60周年なのでコンサートぐらいしましょうよってことで奮起してとてもいい会だったと私は思っていて。

田家:登紀子さんは年間80本コンサートをおやりになっていて、9月マレーシア、10月ジョージア、もうお帰りになっているんですね。11月12日に大阪の新歌舞伎座。

クミコ:新歌舞伎座ってすごいですね。

加藤:46回目なんですけど、大阪のほろ酔いは。京都が甲部歌舞練場。これは何回かやって、今改装が終わってやっと復帰できました。

田家:登紀子さんのスケジュールも、この先たくさんあるのでぜひチェックしていただけたらと思うのですが、ぜひ2人のステージを拝見したいなと思いながら今日は終わろうと思います。これをきっかけにもっと深い付き合いになることを願っております。

愛の讃歌 / 加藤登紀子

田家:もしこの歌に日本語の訳詩がついていなかったら、これだけ幅広く時代を超えて歌われる歌になったでしょうか。最後にお聴きいただいたのは加藤さんが私の切り札と言っている、ご自分で訳詩されたエディット・ピアフの名曲「愛の讃歌」。2006年のアルバム『シャントゥーズTOKIKO~仏蘭西情歌~』からお聴きいただきました。





流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

泥沼にわか勉強でお2人の話に一生懸命ついていくという1カ月でしたが、あらためてこの対談を聞いて2つのことを思ったんですね。1つは最近のポップス、曲が短いんですね。3分から3分30秒、長くて4分。そういう中で失われていくものがあるなと思ったのは1つの歌のストーリーなんです。シャンソンはストーリーソングですね。どんな人たちがどんな恋をして、どんなふうに生きて、どんなふうに国を追われて、何を悲しみ、何を喜んだかということがずっとストーリーになっている。こういうことをあらためて紹介することでポップスの中のストーリーということ、光をあらためて考えられるといいなと思ったのが1つ。

もう1つは中東で戦争が始まりました。ハマスとイスラエルが激しい戦いを繰り広げています。アメリカがイスラエルを全面支持しました。僕らがアメリカに求めていた、アメリカに見ていた幻想というのが今崩れかけている気がするんですね。アメリカとロシア、そしてヨーロッパ。またヨーロッパの時代が来るのかなと思いながら、シャンソンについて考えてみたいなと思いました。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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