マネスキンが日本で語るバンドの現在地 「駆け抜けた」一年と新たな始まり

日本の熱狂ぶりは「クレイジーだと思う」

ーこの間、初のグラストンベリー・フェスティバル出演、イタリア3都市でのスタジアム公演、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでのソールドアウト公演と、マイルストーン的なライブを多々経験しました。あなたたちにとって一番学びが大きかった公演はどれですか?

ヴィクトリア:個人的にはグラストンベリーかな。もしくは、フェス全般って言うべきなのかも。やっぱりフェスだと、自分たちのファンだけで構成されているとは限らないオーディエンスとコミュニケートしなくちゃならない。もちろんマネスキンのファンはものすごく盛り上がってくれるわけだけど、中には古典ロックにこだわる年配の人たちもいたりして、「お前らバカじゃないの?」とか「どうせポップ・バンドでしょ」って見下されているかもしれないし、となるとこっちも、そういう人たちを一生懸命説き伏せなくちゃいけない。だからハードルが上がるわけだけど、そういう時にこそ最高のパフォーマンスができる。ハードルを上げられると奮起しちゃうタイプだし(笑)。

イーサン:フェスティバルで僕らのパフォーマンスを見て、最初は疑問に思っていた人でも、最終的にはみんな味方になってくれたんじゃないかと思うよ。

トーマス:特定の公演の話ではないけど、例えばステージで機材の不調だとか何かトラブルが起きると、僕はそういう時こそ何かを学ぶチャンスだと捉えている。ミュージシャンとして、その時々にトラブルをスピーディーに解決できるとすごく気分がいいし、次のショウでまた何かが起きた時に戸惑わないで済むから、絶好の成長の機会になるんだよね。



ーアーティストの中には、ハードなツアーのスケジュールや環境の急激な変化が理由で、メンタルヘルスを悪化させる人も少なくないですよね。あなたたちはどんな風にメンタル面のケアをしていますか?

ダミアーノ:僕らの場合はツアーをやればやるほど、ツアー生活のストレスを軽減する方法が身に付いてきた気がする。メンバーそれぞれアプローチは違うけど、世界中どこにいても地元にいるような気持ちになれるというか。最初の頃は本当に辛かった(笑)。でもその後どんどん慣れてきて、みんな成長してたし、今回のツアーはキャリア最長でありながらもこれまでで一番楽だよ。

ヴィクトリア:うまくオフの日を入れたり、日程に余裕がある時は4~5日だけでもイタリアに帰ったりして、パターンを打破すれば消耗しない。オフを挿んでツアーを再開した時はめちゃくちゃエキサイティングなショウができるし。1カ月間連日プレイしたりすると、そういうドキドキ感が薄れてしまうことは否定できないから、バランスが重要かな。

イーサン:ヴィクトリアに賛成。あとひとつ、僕がすごく重要だと思う点を加えるとしたら、僕らは基本的にバンドとして成功することを一番の目標に掲げているわけだけど、同時に、僕ら自身がハッピーかどうかっていうことも同じくらい大切にしていて、そこは常に気を付けているんだよ。


2023年12月2日・有明アリーナにて(Photo by Fabio Germinario)

ーちなみに日本では4公演があっという間にソールドアウトになりました。

ヴィクトリア:とにかくクレイジーだと思う。昨日みんなで街に出かけたんだけど、ローマの街を歩いている時より頻繁に呼び止められて、「明日ライブに行きます!」って言われたりしてビックリした。でも振り返ってみると、初めて来た時から日本のファンとはスペシャルなコネクションを感じて、あの時のライブの想い出は私たちの心に永遠に刻まれている。本当に美しいエネルギーに溢れていたし、日本のオーディエンスは私たちをすごく深いレベルで理解してくれている気がしていて、そういうコネクションがこうして私たちを再会させてくれたんだと思う。だからこうしてそのコネクションがさらに強くなっているのが、ものすごくうれしい。

ー今回日本に到着して、空港に姿を見せた時のダミアーノのファッションが話題になりました。『チェンソーマン』のポチタのかぶりもの姿でしたが、大のアニメ・ファンなんですよね。

ダミアーノ:うん。僕が日本のアニメが好きな理由は、作品に描かれているエモーションがすごくヒューマンなところ。でもアニメだから全てが誇張されていて、だからこそ、より深く響くんだ。自分自身のエモーションを実感する上でも助けになるし、激しいアップダウンや予想外の展開があって、すごく複雑なだけに、物事に集中するためのトレーニングになる。ケータイをいじりながらアニメを観ることはできないよ。脳にもすごくいい刺激を与えると思うけど、あまりに混沌としていて、たまに休憩を挟む必要があるかな(笑)。

ーちなみに、日本の音楽は聴いたりしますか?

イーサン:僕はカシオペアを聴いているよ。70年代のプログレッシブなフュージョンというか、まるでマシーンみたいな驚異的なバンドだね。



ーシンコペーション満載ですよね。

イーサン:そうそう!

ヴィクトリア:シンコペーションはイーサンの大好物だから(笑)。

Translated by Yuriko Banno, Post Production by Kenneth Pizzo @pizzok

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