マネスキンが日本で語るバンドの現在地 「駆け抜けた」一年と新たな始まり

音楽は社会を写し取るポートレイト

ー2023年はまた、ザ・ビートルズがAI技術を用いて仕上げた新曲「Now and Then」も話題を集めました。AIテクノロジーが音楽シーンに与える影響については、曲作りに使うべきか否かとか、色んな議論が成されていますよね。4人で鳴らす音だけで勝負しているあなたたちはどんな風に感じていますか?

ダミアーノ:僕が思うにAIは人工の知能で、究極的には人間が作っているわけで、人間の知性を超えるというのは考えにくい。そもそも名前自体が間違っていて、要するにデータベースでしかないんだよね。情報の集積であって、通常のコンピュータより処理能力は高いとはいえ、人間の脳は未だ解明されていない部分がたくさんある。僕らはそのほんの一部分しか使っていない。人間は歴史を通じて、脳を使って様々な発明をしたりしてきたわけで、これからもそこは変わらないと思うよ。

トーマス:それにAIに曲を書かせると言っても、いい曲を作るには、単にクールなメロディを見つければ済むってものじゃない。その曲が生まれた文脈こそが重要で、なぜその曲を書いたのか、なぜこのインストゥルメンタル・パートをこういう形で配置したのか、どうしてこのメロディとこの歌詞をマッチさせたのか、曲を聞けばそういったことが分かる。だからこそ心に残ると思うんだよね。

ダミアーノ:結局は、単に使い捨ての音楽が増えるだけだろうな(笑)。


Photo by Haruki Horikawa


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ー2023年の政情に目を転じると、イタリアでは昨年末に発足した右派のメローニ政権が、LGBTQの権利を抑制しようと動き始めていますよね。ほかにも各地でリベラルな価値観を否定する右派勢力が台頭しています。自由に自分を表現することにこだわるバンドとして、どんなふうに昨今の動きを見ていますか?

ダミアーノ:かなり不安は抱いているよ。

ヴィクトリア:うん、すごく悲しい。だいたい右とか左とか政治的にどういう立場であろうと、他人を差別することが許されてはいけないし、LGBTQに限らずマイノリティを差別する法律を作る権利を与えていいわけがないでしょ? ただ若い世代はもっともっとオープンマインドで、例えば著名人がカムアウトしても広く受け入れられている。みんな自分が何者であるか誇りを持って自由に語っている。たった10年前と比較してみても、本当に大きな変化が起きたと思うから、若い人たちが主導権を握って正しいことを実行してくれたらって、願うしかないかな。

ダミアーノ:ほら、前回イタリアで極右政党が政権に就いた時のことを思い出してくれれば、知っての通り、僕らの国にとってあんまりいい結果にならなかったよね(笑)。歴史からちゃんと学んで、同じあやまちは犯さないようにするべきなんだよ。

ーこういう不穏な時代に、音楽に何ができると思いますか?

ダミアーノ:音楽はその時々の社会の、最もリアルでクリアなポートレイトのひとつだと思うんだ。誰が政権にあってもカルチャーや音楽が右側に傾くことはまずないし、政府が流布しようとしていることと、実際の社会のあり様の違いを、常に正確に写し取っていくことが重要なんじゃないかな。そうすればこれらふたつがいかに背反していて、権力側が押し付けようとしていることは現実には絶対に成立しないと、はっきり示すことができるから。


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ーでは、2023年を振り返ってみて、一番インパクトが大きかった出来事を教えて下さい。

ダミアーノ:それはやっぱり『RUSH!』を作って、リリースしたことだね。

ー2023年を振り返ってみて、『RUSH!』以外で一番聴いたアルバムは?

トーマス:僕はクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジの『In Times New Roman…』。

ダミアーノ:ナッシング・バット・シーヴスの『Dead Club City』とスティーブン・サンチェスの『Angel Face』だね。

ヴィクトリア:私はロックじゃないんだけど、DBBD×ミス・バッシュフルの『Hot European Summer』。

イーサン:ロイヤル・ブラッドの『Back To The Water Below』。でも次のデュア・リパのアルバムもすごく楽しみ。何しろテーム・インパラと組んでいるからね。







ー2024年のスケジュールを見ると現時点ではいくつかのフェスティバル出演が決まっているだけですが、バンドとしての予定は?

ヴィクトリア:少しオフを取って、それから夏はフェスに出て、あとはひたすら曲を書くつもり。これまで以上にいい作品を仕上げて戻って来れるように。

ー2024年はどんな年にしたいですか?  ちなみに2023年の初めに同じ質問をした時、トーマスは「グッド・ヴァイブス」、イーサンは「ロックンロール」と答えていました。

ヴィクトリア:私なら「ニュー・ビギニング」かな。

トーマス:じゃあ、ロックンロールとグッド・ヴァイブスとニュー・ビギニングってことで!


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SUMMER SONIC 2024
日程:2024年8月17日(土)・18(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園
https://www.summersonic.com/


マネスキン
『RUSH!(ARE U COMING?)』
発売中
配信・購入:https://maneskinjp.lnk.to/RUSHauc 

Translated by Yuriko Banno, Post Production by Kenneth Pizzo @pizzok

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