サーヤが語る「礼賛」だから表現できる自分らしさ、川谷絵音と共鳴し合うポップな感性

Photo by Maciej Kucia

礼賛が初のEP『PEAK TIME』を発表した。昨年1月に1stアルバム『WHOOPEE』をリリースして以降、2度のツアーやフェス出演などを繰り返すことで、個性の集合体からバンドとしての記名性を獲得。ステージ映えのするフィジカルな楽曲を軸に据えた『PEAK TIME』は、文字通りライブにおけるさらなるピークタイムを作り出すことだろう。

本作でもCLRことラランドのサーヤが作詞とトップラインを担当し、前作に続いてメロディーメーカーとしてのセンスを発揮しつつ、歌詞の筆致には変化も見られる。『WHOOPEE』では芸能活動の中で感じるフラストレーションや違和感、その世界で生きる覚悟を楽曲に落とし込んでいたが、『PEAK TIME』のラストナンバー「生活」ではそこからさらに一歩踏み込んで、自身の過去と現在を飾らない言葉で綴っている。

2021年に個人事務所を設立し、現在ではお笑い、音楽、役者と幅広く活動を続け、テレビでもYouTubeでもTikTokでもその姿を目にしない日はないほどになったサーヤには、時代のアイコンとしての側面があることは事実。しかし、そんなサーヤが現在最も素に近い状態でいられるのが礼賛であり、それが可能なのは川谷絵音、休日課長、木下哲、GOTOといったメンバーとの親密なムードがあるからこそ。〈生業と思えた27、8 これでいいやと 変え始めたものさし〉。転機となったこの一年について、サーヤにじっくり話を聞いた。



Photo by Maciej Kucia

―礼賛としてサーヤさん単独で取材をさせてもらうのが初めてなので、本格的に音楽活動をしようと思った理由を改めて話していただけますか?

サーヤ:そもそも私のキャリアは子役から始まっていて、芸事に対するハードルがガバガバで、気づいたらもう現場にいたんです。小さいころからドラマとかCMとか雑誌とかをやってて、でも小学校に入る前に「義務教育やれ」って親に辞めさせられて、そこで結構フラストレーションがあって。当時一緒にやってた子がテレビに出てるのを見て、「あのままやってたら私も売れてたのかも」みたいなのがどこかにずっとあったんですよね。で、中学高校では漫才をやりつつゴスペルっぽいのもやってて、大学でもお笑いサークルだけじゃなくてアカペラサークルにも入りたかったけど、ノリが合わなくてやめただけで(笑)、ずっと同時進行で「こういうこともやりたい」みたいなのが万遍なくあったんです。たまたま漫才のほうで上手くいって、そっちに集中する期間が長かったですけど、音楽もお芝居もやりたいなってずっとうっすら思ってて、あとはタイミングだけだなって。で、事務所を設立して、何となく安定したタイミングで絵音さんとまず美的計画でご一緒させてもらって、「やっぱりこっちもやりたい」って思い出した感じだったんです。

前回のメンバー全員取材でASOBOiSMの「Categorizing(feat. なみちえ)」の話もさせてもらいましたけど、もともとお笑いも音楽もお芝居も並列で捉えてるし、音楽の活動に絞ってもバンドもやればソロで客演もやる、その自由さはやっぱり絵音くんとの親和性をすごく感じます。

サーヤ:本当ですね。学生芸人時代から私は何組も組んでて、それが普通だったし、多分絵音さんもそうで、最初からいろんなことをやられてて。だから「次こういうことやろうと思って」みたいな話をしたときに、ちぐはぐ感が一切ないんですよね。

―芸能界の中だと「お笑いだけやってればいい」みたいなことを言う人もいるだろうし、絵音くんも「バンドを絞ったら?」みたいなことをずっと言われてきたと思うけど、でも自分のやり方を貫いてきた人で。

サーヤ:全部結果で返してるのがかっこいいですよね。すごく大きい背中だなっていう感じがします。「そっか、ちゃんとやればいいんだ」みたいな。礼賛が始まったときも、「ジェニーハイがそうだったんだけど、最初は軽く見られるから」っていうことを言われて、でも同時に「ちゃんと継続すれば大丈夫だよ」みたいなことも言ってくれて。「真摯にずっとやってれば、形になるから」みたいなことを最初に言ってくださったので、そこはもう安心してちゃんとやろうと思いました。私が尊敬してるのは藤井隆さんとかで、海外だと当たり前のように、DJやってサックスもやってラップもやってコメディもやる、マセーゴみたいな人もいっぱいいるから……。

ーチャイルディッシュ・ガンビーノだってそうですしね。

サーヤ:その感じを自信持ってやっていくのがいいんだろうなって。だからMCもステージングも芸人芸人しなくていいけど、かといって、つまらないテンプレMCも良くないなと思ってたので、この一年はお客さんの様子を見ながら、一番気持ちいいところに当てなきゃっていうので、トライアンドエラーを何回もやった気がします。

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