マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ケヴィン・シールズが語る過去・現在・未来

ケヴィン・シールズ(Photo by Takanori Kuroda)


ケヴィン流の作曲プロセス

―MBVの楽曲がまた気軽に聴けるようになるのは嬉しいことだなと思っています。そこで今回は過去の作品についてお聞きしたいのですが、MBVの革新的なサウンドメイキングに関しては、すでに色々なところで散々聞かれているので、今回はそもそものケヴィンの曲作りのプロセスについて、詳しく聞かせてもらえますか?

ケヴィン:そうだな、音楽のことは常に頭の中にあるのだけど、まずは「曲を作りたい」というよりは「ギターを弾きたい」というところから始まることが多い。そのために、家のそこら中にギターを置いているんだ。ただ、大抵の場合は寝る直前になって急にギターを弾きたくなるんだよね。実際に演奏を始めると8時間くらい経っていて、夜を明かすどころか昼過ぎになっていることが多い(笑)。ギターはアコースティックの場合もエレクトリックの場合もあって、その時の気持ちのままにどちらかを手に取り、ただ弾いてみる。「曲を作る」という意識は特にないのだけど、大抵そんなことを30分くらいやっていると、何かがふと浮かんでくるものがあって、それを書きとめていく感じ……。気分が乗ってくると、そのアイデアについて何日も、何週間も練る事になる。それが僕の曲作りということになるかな。チューニングをいじっている時に何かを思い浮かぶことも多いね。いずれにしても曲というのは、ギターを弾いていると向こうから勝手にやってくるから、それを捕まえ整えていく感じなんだ。

―「コードにメロディをつけていく」とか「思いついたメロディにコードをつけていく」とか、いわゆる「通常の」曲作りとは少し違うわけですね?

ケヴィン:大抵は一つか二つのコードから始まるのだけど、そのコードに乗っかっているヴォーカルメロディもほぼ同時に浮かんでくるんだよね。そこから少しずつ発展させていく……なので、メロディだけを独立に考えることはまずないかな。

―「ギターを弾きたい」って思うのは、具体的にはどんな状態なんでしょう。

ケヴィン:これは言葉で説明するのがすごく難しい、とてもストロングなフィーリングなんだよね。「何か作りたい」「何かしなきゃ」と思ってギターを手に取ってしまう。そのときに、ギターを弾く代わりに絵を描いてみようと思うこともあるんだけどね。若い頃はアートが好きで、常にスケッチブックを傍に置いていたんだ。ただ、「よし、じゃあ今日はギターを弾くのではなくて、絵を描くことにしよう」と思っても、どうしてもギターを持ってしまう(苦笑)。

―あなたが絵を描くのは初めて知りました。

ケヴィン:子供の頃は、アートの道に進みたかったんだ。ともかく、「ギターを弾きたい」というよりは「弾かずにはいられない」みたいな感覚なんだよ。「もうそろそろ寝なきゃいけないし、今から弾き始めたら明日が台無しになってしまうのは分かっている。なのに、それを止めることが出来ない」。そういう衝動だ。もちろん、テレビを見ながら何となくギターを抱えて爪弾き始めるなんてこともあるのだけど、そういう時は別にワクワクするようなアイデアは浮かんでこないんだよね。

―そういう曲作りのプロセスは、MBVの初期から基本的には変わってないですか?

ケヴィン:そうかもしれない。1988年の頃は、僕が曲を作る時には常にコルムがそばにいて、一緒に仕上げていく感じだったけど、『loveless』の頃になると僕がほぼ1人で曲を書いていたし、一方でコルムはプログラミングに夢中になっていった。僕もコルムも、曲を作り始めたばかりの頃はまだテクニック的に未熟で、作るスピードも今よりずっと遅かったかな。


Photo by Steve Gullick

―歌詞はいつもどうやって思いつくのでしょうか。

ケヴィン:通常はメロディができた段階で、3分の1か、うまくいけば半分くらい言葉も一緒に出てくるのだけど、その段階で見えている方向性に沿って言葉を整える段階がものすごく大変で。書きたいことは全て頭の中にあるのだけど、夜通し苦しむことが多い。5時間くらいそうやって頑張っていると、1時間くらいゾーンに入る時があって、そうするとあっという間に書き終わるんだけどね。

―2013年リリースの3rdアルバム『m b v』にはオルガンが主体の「if this and yes」という曲もありますが、ケヴィンは鍵盤も弾くのですか?

ケヴィン:うん。最初にキーボードで曲を書き始めたら、そのままキーボード主体の曲になる。鍵盤で書いた曲をギターに置き換えることって今までしたことがないのだけど、いつか挑戦して披露したいと思っているよ。

―同作はそれまでのアルバムに比べて、ケヴィンの「メロディメーカー」としての魅力が、より前面に打ち出されているように感じました。例えば「New You」の洗練されたメロディ、メジャー7thコードの使い方など、バート・バカラックやロジャー・ニコルスなどを彷彿とさせるのですが、この曲はどのようにして生まれたのでしょうか。

ケヴィン:確かにバート・バカラックの影響もあるし、さらに遡るとボサノヴァからの影響が、バカラックを通じて入ってきているとも思う。あと、これは奇妙に感じるかも知れないけど、プリンスの影響もあるんだよね。実は「New You」のメロディの半分は、カート・コバーンが亡くなった後に書いたものだ。僕は彼の訃報を聴いてものすごくショックを受け、しばらくそのことばかり考えていた。カートのような立場にもし自分がなったら……などと考えてしまってね。だから、ある意味でこれは「死」についての曲でもあるし、別れの曲でもある。死者への別れではなく、生者に対する死者からの別れのような。そういう死生観を歌った曲に仕上がったよ。

Translated by Kazumi Someya

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE