THE ORAL CIGARETTESが語る「回帰」の真意

「俺らだけの視界の中で簡単に閉ざしちゃダメだなって」(山中)

―「Red Criminal」「MACHINEGUN」ともにロックバンドとしての強度を確かめるような楽曲で、音作りからして違うように感じました。

山中 ロックバンドの強さをより前に出していこうというのが音づくりや楽曲づくりのテーマになっていました。ロックバンドの楽曲には、セックス・ピストルズとかニルヴァーナとか、最近で言うとThe1975とかヤングブラッド、マシン・ガン・ケリーもそうですけど、政治や社会情勢が反映されている曲が多いけど、日本にはそういう発言をしてはいけないという空気があるので、それをどうやってぶち壊していくか考えたときに、「ロックバンドにしかやれないことを突き詰めていくべきなんじゃない?」って。そういう思考がサウンドや楽曲のテイストに深く結びついてると思います。

―なるほど。

山中 でも、『SUCK MY WORLD』で気付かされた部分も絶対ありますね。より深い部分でロックバンドでいるということが『SUCK MY WORLD』をつくったことで明確に見えてきて。ゴスペルだったりトラップっぽい楽曲をつくることができたあの作品を通じて、当たり前の中に隠れていたロックのカッコよさに触れることができたんです。バンドで初めて音を鳴らしたときのなんとも言えない感覚にカッコよさがあることを思い出せたのは、『SUCK MY WORLD』のおかげといってもおかしくないと思います。

―では、「Red Criminal」も「MACHINEGUN」も『SUCK MY WORLD』をつくった反動ではないんですね。

山中 反動ではないですね。しかも、コロナじゃなかったら今ほどロックシーンにこだわらなかった気がします。『SUCK MY WORLD』のテイストを入れつつ、ロックバンドとして戻ってくる、みたいなことをやってたと思います。

―もう少しなだらかな変化をしていたかもしれない。

山中 そんな気がします。でも、コロナのせいでロックシーンが窮地に追い込まれた感覚があったし、コロナの有無でテンションが変わってたと思います。さっき、「肩の力が抜けた」ってメンバーが言ってたこともそうなんですけど……これもすごく言い方が難しいんですけど、俺らみたいにレーベルに入ってたり、事務所がついてたり……今のバンドってたいがいそうなんですけど、そういうバンドはライブを我慢するのがインディーズのバンドよりも容易いと思うんですよ。

―そうですね。

山中 会社がついてるってだけでもギリギリ生活していける保証はあって。でも、コロナ禍になってから若いバンドのライブを観に行くようにしているんですけど、現場で後輩の話を聞くとあいつらはかなりキツそうなんですよ。今日ライブをしないと明日食えるかどうかもわからないという状況があって、そこまで追い込まれてる連中のことが見えてなかった自分に気づいたんですよ。そういう奴らのこれからを、俺らだけの視界の中で簡単に閉ざしちゃダメだなって。そのせいでロックバンドが減ったらますますシーンが衰退するのは目に見えてるから、そういうところにも気を使ってやっていかないとなって思ってます。

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