「対バンがOKかOKじゃないかというのは、人と人との関係な気がします」(山中)
―10-FEETも、当時絶対的な存在だったハイスタとは別のところで京都大作戦を始めたし、それぞれが自分たちの居場所を作ったり、独自の方法論を打ち立てて、そこがいつしかみんなが集まる場所になっていったと思うんですよね。なので、オーラルもきっと、何かを生み出していくのか、無意識のうちに生まれるのか、なんらかの新しい形で自分たちの場所を築いていくのかもしれないですね。
山中 これからは、シーンというのももちろん大事なんですけど、シーンを支える一部として、家族をつくっていく時代になる気がします。昔、アメリカのヒップホップではデス・ロウ・レコードとかいろいろなレコード会社が生まれたし、最近のロックシーンでもダーティ・ヒッツみたいに「ビーバドゥービーってここのレーベルなんだ、じゃあ聴こう」みたいな流れがあるし、そうやってファミリーとして、ひとつの塊として、いかに流れをつくっていくのか。10年代に個人個人が発信元になるという流れがあったからこそ、これからは家族がより大事になる気がしています。そういう場所で新しいものを作っていくことを意識して、コロナが始まったタイミングからちょくちょく動き始めてはいます。
―まさかここでデス・ロウの名前が出てくるとは思いませんでした(笑)。
山中 (笑)。オッド・フューチャーもその流れだったじゃないですか。個々で動く時代があって、チームで動く時代があって……音楽ってジャンルもそうですけど、プロモーションの仕方も一定の周期で回ってる気がするんですよ。なので、先人たちがやってきたものにプラスアルファして新しい流れをもう一度つくっていくという。それをいま勉強しています。
―若手バンドの話と同じ流れなのかはわからないですけど、今度PassCodeと対バンしますよね。なぜ彼女たちのオファーにOKを出したんですか?
山中 個人的に妹みたいな感じでかわいがってたというのもあるんですけど、ライブを観に行かせてもらったときにけっこう感動したんですよね。
―去年1月にあった新木場STUDIO COAST公演ですね。
山中 そうですそうです。なんて言ったらいいんだろう……踊って歌う女の子のグループって山ほどいるじゃないですか。バンドもそうですけど、そんな中で必死に生き抜いている奴らってライブに臨む姿勢からそれが見えるんですよね。PassCodeも地べたに這いつくばってる姿勢がすごく見えたし、それ以外でも彼女たちにはしんどくなったときにしんどいって言える強さや、困ったときに素直に人を頼る強さもある。だから、さっきの家族の話じゃないですけど、そういうふうに頼ってきてくれる人たちのことはしっかり守っていきたいんですよね。PassCodeもメンバーが変わって大変だとは思いますけど、少しでも助けられるならという気持ちが個人的にあるんですよね。
―なるほど。
山中 結局、対バンがOKかOKじゃないかというのは、人と人との関係な気がします。たとえば、ほかのメンバーが「このバンドを救いたい」と言うなら「お前がそう思うならいいよ」ということになるし、昔からそういうふうに対バンを決めているところはありますね。