遠野遥が語る『教育』のインスピレーション源 Perfume、横浜ドリームランド、ボカロ曲

意味の分からないものを、分からないまま描きたかった

─印象的なシーンはたくさんあるのですが、催眠をかけられ「女子高生」になった主人公が見る「夢」というか、夜の遊園地で経験するエピソードがもう悪夢のようで。

遠野:あそこは書いていて楽しかったです。実際に遊園地は好きで、ディズニーランドやシーには年1くらいの頻度で行っています。だからこそ書いてみたかったのかもしれない。ちなみに小説に出てくる遊園地は、小さい頃に行った「横浜ドリームランド」という、今は閉園してしまった遊園地をモデルにしています。細かいディテールは実際と違いますが、子供の頃よく行っていた時のことを思い出しながら書きました。それと、ボカロPのトーマさんが書いた楽曲「魔法少女幸福論」のミュージックビデオにもインスパイアされましたね。結構、怖い感じの遊園地が出てくるのですが、それは結構頭の中にイメージとして残っていました。「魔法少女幸福論」は曲も好きです。



─可愛いはずの着ぐるみをグロテスクに感じたり、気づいたら全く知らない場所に迷い込んでしまったり、実際にはそんな経験したことがないはずなのに、まるで自分も以前どこかで同じ目に遭ったような気がしてくるくらいリアルかつグロテスクでした。

遠野:遊園地のマスコットってちょっと怖いんですよね。表情が変わらないし、中にいる人がどんな人か分からない。男性が入っているのか、女性が入っているのかも分からない。ひょっとしたら殺意剥き出しの表情をしているかもしれないのに、それは着ぐるみで覆われているから分からないじゃないですか。でも着ぐるみの「ガワ」はニコニコしているので子供はついていってしまう。それを想像したときに「怖い!」と思った気持ちが小説にも表れていると思います。

─僕はジョーダン・ピール監督作『アス』のオープニングシーンを思い出しました。遊園地のミラーハウスに迷い込んだ女の子が、恐ろしい体験をするストーリーです。

遠野:遊園地の怖いエピソードって結構ネットとかにもありますよね。お化け屋敷なんてものもありますしね。楽しい場所だけど、非日常的だから色々と想像力をかき立てられる場所なのかなと思います。

─恐竜ヴェロキラプトルが唐突に現れるシーンはやはり『ジュラシック・パーク』がモチーフですか?

遠野:あれが一番、意味わかんないですよね? どこから来たんだろう……恐竜も『ジュラシック・パーク』も普通に好きだし、恐竜がいると小説に動きが出ると思ったのかな。

─あははは。ラプトルがサッカーしていますもんね。

遠野:小学生の頃にサッカーをやっていたのもあって「恐竜がサッカーしていたら面白いかな?」という単純な発想なんですよね。恐竜がフォークとナイフを使って鶏肉を食べていたら面白いかな? とか。ちょっと悪ふざけに近い思いつきの部分もあるし、全てに意味がなくてもいいと思っていて。すべてのエピソードが、「これはこういうことが言いたいんだろう」と解釈できてしまったらつまらないと思います。意味の分からないものを、分からないまま描きたかったのかもしれない。

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