渡瀬マキが語る半生「歌うことを息をするぐらい普通のことにしたい」

―2020年に配信リリースされた「~種~」は、そうした人生経験がないと書けない歌だと思います。どんな想いで書いた曲ですか。

これは30周年のツアーに向けて新曲を出したいということで、書いた曲なんです。自分がそのとき置かれている状況って、がんばってきて、だけどちょっと立ち止まって休んで、何かがんばろうと思ってもがんばれなかったりとか、何をやってもうまくいかなかったりとか、生きていたら誰にでも起こることで。私の経験したフィルターを通して、そういう人たちに、伝えたいなっていう想いが強くあって、そのときの私の中に溜まっていた言葉を吐き出した感じです。

―現在も、新曲は書いていますか?

2月にソロライブがあるので、そのために1曲作ったりしています。

―2月22日がお誕生日ということですから、2022年は数字的に絶対ライブをやった方がいいですよね。

そうなんですよ。本来、ライブは休日に合わせるんですけど、今回は2揃いの日にやらないと意味がないなということで。22歳ならなお良かったんですけど(笑)。やっぱりその日にやることに意味があるような気がして、平日ですがこの日にやります。

―「back to basic 222~ソロとリンドとカバーと~」というタイトルがついています。どんなライブを考えていますか。

去年の終わりぐらいから、なんとなく考えていることなんですけど、半世紀生きてきて、これからどうやって生きていこうかっていうのと、今まで生きてきたこと、両方考えるお年頃なんです(笑)。機能性発声障害になってから、ずっと考えていることなんですけど、正直に言うと、いまだにトンネルの中に入っているみたいな感じなんですよね。それは、マインドの問題だったり、はたまた脳の誤作動のせいかもしれないし、思考の癖なのかもしれないし、「人の前に立って歌う」ということが、まだ全然日常じゃないというか、特別なものになりすぎていて。だからちょっと怖かったりするんですよね。もっと楽しみたいのに、すごくいろんな緊張が邪魔したり、不安が邪魔したりとか、いろんな余計なもののせいで、純粋に楽しめない自分がずっといるんですよね。歌うたびに落ち込む、歌うたびに悲しい思いをする状態から、もういい加減抜け出したいんです。中学生とか高校生の頃、部屋で1人で歌っているときって、本当にめちゃくちゃ楽しくて、その日に学校で嫌なことがあっても、全部忘れてしまうぐらいに、歌にすごく救われたんですよ。もう1回、あのときの感じで歌いたいなって思ったんです。これから先どうやって生きていきたいかって考えたとき、やっぱり今までの50数年のことも紐づけていかないと、次には行けない気がしていて。だから、自分のベースに帰ることによって、この先の光が見えてくるんじゃないかなって意味で、こういうタイトルを付けました。

―タイトル通り、LINDBERG、ソロ、カバー曲で渡瀬さんが歌いたい曲を網羅したライブということですね。

そうですね。だから、子どもの頃に影響を受けた曲も歌おうと思っています。キャンディーズさんとか、ピンクレディーさんとか。改めて聴くと、ものすごくあのワクワクする感覚が甦ってくるんですよ。そういう曲を歌うことによって、何か気付きがあったり、ちょっと突破口が見つけられたらいいなと思っていて。2022年は、2月22日から、歌が日常の何でもないものになるまで、とにかく歌いたいというのが私のテーマなんです。インスタライブで歌ってもいいし、友だちのライブに出させてもらうとかでもいいですし。とにかく人の前で声を出すことをたくさんやって、歌うことを全然特別なことじゃない、息をするぐらい普通のことにしたいです。そんな2022年に、という感じです(笑)。

渡瀬マキ instagram

Rolling Stone Japan 編集部

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