マカロニえんぴつ・はっとりが振り返る10年間、王道と違和感のある音楽を作る理由

―アートで例えるなら、マカロニえんぴつは「色彩の魔術師」だと思うんです。はっとりさんが描いた絵をメンバーが「髪の毛を青にしよう」「目は緑にしよう」と定石ではない色を塗る。さまざまな色を足すんだけど、引いてみた時にちゃんと一枚の絵になっている。セオリーを理解している上で、あえてはみ出した色使いをするのがマカロニえんぴつの音楽じゃないかなって。

前にラジオか何かで、自分でもその例えをした気がしますね。僕は現場監督で大きな1枚の絵を遠くから見て「ここはどの色にしてくれ」と指示を出す。そのようにみんなと協力しあって大きな絵を描いているイメージなんです。あくまでアレンジやレコーディングの話ですけどね。僕の感覚も今仰っていただいたことに近いです。

―「売れ線」って誰かの成功例を下敷きにした創造物だと思うんですよね。だけどマカロニえんぴつの場合は、自分達の物差しで良い曲をリリースしている印象なんです。

いや、売れ線を作れたらそれに越したことはないですよ。ロックも商業音楽の世界なので売れない曲を作っても仕方ないし、そもそも予算が降りなくなりますからね。なのである程度、売れる曲を作らないといけない。……って思っていますけど、ちょっとズラしておきたいのはありますね。それが良いのか悪いのかは分からないですけど。

―うんうん。

王道というのは“安心感”と類似する言葉だと思っていて。僕は王道は好きですよ。余計なことを考えないで聴けるので。基本の基盤としては王道でいたいんです。だって音楽は生活に馴染まないといけないものだと思っていますから。曲に気を取られて作業に手がつかなくなるのって、それはそれで良い音楽かもしれないけど、生活のBGMではないと思うんですよ。

―だけどマカロニえんぴつは、ただ聴き流せる音楽とは違う気がするんですよ。

そうですね。安心して聴き流せる王道感はありつつも、「何だこれ⁉︎」と言って巻き戻したくなるような違和感を随所に散りばめていたい。それはユニコーンイズムでもあるし、あとは親父の影響も大きいですね。イエスとか、ジェントル・ジャイアントとか、70年代初頭のヨーロッパで活躍したプログレバンドのアプローチを小さい頃から聴いていたので、ちょっとした違和感や組曲的な展開をした方が落ち着くんですよね。ある種、発作みたいな(笑)。

―ついつい、そうしたくなっちゃう。

やらなくても良いんだけど、そうしたくなっちゃう。

Rolling Stone Japan 編集部

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