小田和正、8年振りアルバム『early summer 2022』を朝妻一郎と紐解く



田家:3曲目「小さな風景」です。この曲については?

朝妻:明日は必ず来るからって言っているわけ。繰り返しになるけど、ちゃんと世の中の人のことを考えてメッセージを発しているなと。このアルバム全体に小田くんのやさしい気持ちが溢れている感じがする。

田家:朝妻さんの選んでいただいた別の5曲の中に1977年の「秋の気配」が入っていたりしました。「小さな風景」というタイトルで思い出したのですが、オフコースの「小さな部屋」というシリーズコンサートがありましたよね。日本青年館とか小さいところで。その頃のことを朝妻さんはどんなふうに思い出されるんだろうと思って。

朝妻:僕は好きだったけど、広がりがいまいちね。このグループいいのに、なんで人気が出ないんだろうなと、もどかしい気がしていました。「秋の気配」をなぜ選んだかと言うと、初めて小田くんの詞が能動的に動いた。要するに僕が君から離れていくっていう、それまでだとちょっと相手を好きなんだけど想ってくれない、でもどうしようかなみたいな感じだった。

田家:こんなことはなかった。

朝妻:そう、能動的な動きが出てきたので、あ、このグループ絶対大丈夫だって。もちろんその前から「小さな部屋」のときとは違って売れてきていたんだけど、あ、もう大丈夫だなっていうのを実感したのは「秋の気配」だったね。

田家:そうやって大きくなってきた小田さんが今回は小さいことを歌っています。小田さんのこの曲に対してのコメントが公になっておりまして、「小さな風景はいくつもあったんだと思います。できるだけ言葉数を少なく、短く、印象的な歌にしたかった」。

朝妻:そういう意味で言うと、この曲が昔からのオフコースの感じを1番よく出しているよね。

田家:昔から言葉数がそんなに多くないですもんね。ずっと小さいことを大切にして、小さい関係、小さな風景を歌ってきた人たちだった。

朝妻:そうだと思う。「生まれ来る子供たちのために」の後にまた1つ違う流れができて、その流れは流れで幅広く滔々と川が流れている感じがするんだけど、でもこの下には「小さな風景」みたいな、昔からの流れもちゃんとありますよという。

田家:今おっしゃっていただいたのでその話を聞いてしまうのですが、「生まれ来る子供たちのために」をオフコースの方がシングルにしたい。レコード会社は「いや、これはシングルは困る」。そのやり取りはどうご覧になっていました?

朝妻:そこは知らないんだけど、でも絶対シングルで出したから、今の小田くんのいろいろな活動ができていると思うよね。レコード会社として反対したというのはメッセージ性が強すぎるということに対しての心配だったと思うんだけど。

田家:「さよなら」みたいなものを出してくれ。

朝妻:まあ、本当はね。だけど、あそこで「生まれ来る子供たちのために」を出したおかげでリーダーとしての小田和正のステータスは一段上がったと思う。

田家:そう思う伴走者がいたことがいまのキャリアを支えてきたのかもしれません。

Rolling Stone Japan 編集部

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