田家:道を提案した、道を指し示したことになりますね。次はアルバム5曲目「so far so good」ですね。アメリカ、ビル・シュネーの話をされましたけども、朝妻さんが選ばれたこれまでのキャリアで印象深い曲の中に、1985年の英語アルバム『Back Streets of Tokyo』がありました。
朝妻:その中で「愛の歌」という曲が「I’ll be coming home」というタイトルになったんだけど、その曲を聴いて、あ、これカーペンターズみたいでいいなと思って。なんとかリチャード・カーペンターに届くようにってA&Mの人に頼んだの。そしたら、その後に小林明子さんをリチャード・カーペンターにプロデュースしてもらおうということで、レコード会社が小林明子さんをリチャードのところに送ったら、リチャードがこの曲どうだって言って、「I’ll be coming home」のテープを聴かせてくれた話を僕は小林さんから聞いたんだよね。
田家:わお! すごいなこれ(笑)。
朝妻:たしかにリチャードは僕がいろいろA&Mで頼んだのを受け取ってくれていて、なおかつ、いいなと思ってストックしてくれていたんだよね。
田家:小田さんのソロの1枚目『K.ODA』、1986年のアルバムは9ヶ月間アメリカに滞在して作られていて、それも全部朝妻さんが設定されていた?
朝妻:いや、それはほとんどビルだと思う。
田家:ビルの存在は大きかったということですね。
朝妻:ビルと小田くんはすごいハモって、例えばランディ・グッドラムっていう作詞家がいるんだけど、ランディ・グッドラムも半分僕が紹介したようなものだし、ビル・シュネーも小田くんに「ランディ・グッドラムなんかどうだ?」って紹介したんだと思うね。
田家:なるほどねー。伴走者であります。「so far so good」に関しては、「このドラマはコメディですというインフォメーションがあった。でも、原作漫画を見たらコメディというイメージが湧かなかった。軽快に明るいというテーマはクリアしないといけない。それで頑張った」という小田さんのコメントですね。
朝妻:でも、みんなを幸せにしたい気持ちはすっごく出てるよね。
田家:これはNHKのドラマ主題歌なんですけど、タイアップとかの窓口みたいなところに朝妻さんは?
朝妻:僕は全然そんな重要なところには参加させてもらえないんだけども。
田家:制作者として関わる。
朝妻:「ラブ・ストーリーは突然に」のときは担当させてもらったけど。
田家:それはケース・バイ・ケースでという。
朝妻:はい。
田家:そういうときはどういうお願いの仕方をするんですか?
朝妻:たぶんどのテレビ局でも映画会社でも同じだと思うんだけど、いかにこの番組、この映画に小田くんの音楽が必要かってことのプレゼンをどういうふうにしていくかってことだと思う。ただ、やっぱり小田くんが「あ、そうかこれに自分が参加することによって、こういうふうに良くなるんだ」ってことが分かれば、喜んで書いてくれると思うし、「俺が参加してもあまり意味ないんじゃないの?」っていうプレゼンだとなかなか話が前に進まないと思う。
田家:小田さんはこの曲に対して、「みんなに迷惑をかけないで少しでも役に立ってこいよという気持ちで送り出した」というコメントがありました(笑)。