大江千里が振り返る、昭和から平成へ移り変わる時期の楽曲への想い

大江千里

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年9月の特集は「大江千里」。1982年、関西学院大学2回生の時にCBS・ソニーオーディションの最優秀賞を受賞し、1983年にピアノを弾いて歌う男性シンガー・ソングライターの新星としてデビューした大江千里。80年代キャンパスカルチャーのシンボルとしてキャリアをスタートさせたその後もソングライターとして数々のヒット曲を残してきた。そんな彼をゲストに招き、「今だから語りたいマイ・ソング」をテーマに自薦した楽曲の制作秘話や思い出のエピソードを赤裸々に語っていく。パート2ではパーソナリティの田家秀樹とともに初のシングルコレクションから楽曲を振り返る。

田家:「FM COCOLO J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れているのは大江千里さんの最新アルバム『Letter to N.Y.』から「The Kindness of Strangers」。今月の前テーマはこのアルバムの中から毎週違う曲を選んでお送りしております。こんばんは。

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大江:どうも。

田家:新ためて『Letter to N.Y.』について触れておきたいんですが、7枚目のジャズアルバムで、アルバムの手応えみたいなものがかなりあるんでしょう?

大江:そうですね。コロナの時期にステイホームしていた際に、カシオのキーボードをアップルコンピューターに繋いで自分の家の好きな場所に移動して全部作ったんです。ベースを弾いているときも至福で自分は今ジャコ・パストリアスだと思ったり、マイルスなんだとかって音色に酔いながら、それっぽいことをやって詰め込みました。1人究極ジャズっていうか(笑)。

田家:(笑)。「The Kindness of Strangers」はどのようにできた曲ですか。

大江:僕がニューヨークに初めて行った頃、クワイエット・ストームってタイプの音楽がすごく流行っていて、渋い声のDJが「Oh~!City of the Lights」ってやってて。そういう世界観をやってみました。

田家:ニューヨークに初めて行ったのが89年の年末だった。

大江:そうです。横浜体育館でクリスマスコンサートをやったのが24日で、25日の朝の便でニューヨークに行ったので、ちょうど25日に着いたのかな。クリスマスなので、きっと5番街はきらびやかなんだろうなと思って。アメリカのクリスマスのことを全然知らなかったんですけど、25日は一番静かな日なんですよ。

田家:聖なる日ですもんね(笑)。

大江:5番街はほとんど明かりが落ちていて。僕はシェラトンに泊まったんですけど、寂しくて寂しくて、泣きそうになるぐらい孤独なクリスマスを過ごしました。

田家:そのときに曲を作ってらっしゃるんでしょう? 90年の「APOLLO」の原型はそのときにお作りになったっていう話がありましたよね。

大江:レコード会社が気を利かせてくれ、危ないからっていうんで、困ったときはってつけてくれたコーディネーターが、「明日からロンドン行っちゃうから、私のダウンタウンのアパートの鍵を渡すから勝手に住んでいいよ」って言ってくれて、そこに移ったんですよ。そしたらピアノがあって。雪が降ってきて、大きい窓をぐわあって開けて、雪が舞い込んでくる中作ったのが「APOLLO」って曲なんです。

田家:今日はその頃の話です。DISC2の中から「今だから語りたいマイ・ソング」と題して千里さんが選んだ曲をお聞きいただきます。88年6月発売のシングル「GLORY DAYS」。

Rolling Stone Japan 編集部

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