大江千里が振り返る、昭和から平成へ移り変わる時期の楽曲への想い

おねがい天国 / 大江千里

田家:89年7月に発売になったシングル「おねがい天国」。

大江:来てますねこれね。

田家:あははは。さっきの「これから」が昭和最後で、これが平成最初です。

大江:もうキャラが変わりすぎ(笑)。フジテレビの大多(亮)さんが「これから」が出て千里音楽にぐっと入って、次に来た新曲が「おねがい天国」で「千里さん本当にこれでいいの?」って言われました。

田家:あははは。

大江:僕は『ベルリン・天使の詩』のフェアリー、天使なんですよって。だから、うまくいってないカップルに「働き過ぎだよ」「気遣いすぎだよ」って。たまに離れた方が愛を育てるんだみたいなことを言って。少しコメディチックでいいと思いますって言ったら、「いやあ、そうかあ?」って。ロマンティックで最高だと思って作ってるんだけど、いろんな聴き方をされるんだなと思って。でも確かに「これから」のあとに来たからみんなびっくりしたのかな。

田家:まあ、でも時代が変わったっていうのがよくわかりますもんね。

大江:平成はこういう気分で過ごすんだみたいな。昭和天皇崩御の日に多摩に行って「MAN ON THE EARTH」っていう『Bed Time Stories』と一緒に出した12インチの曲をバンドのメンバーで録ったんですよ。ツアーをやって、レコーディングをやって、音が仕上がってきて、ツアーでまた噛み砕いて、また新たな世界観が加味されてっていう不思議な時代で。それが平成の始まりとともに全部リンクして。僕自身は音的にもっとツアーのことも歌いたいし、気持ちが日本の外へ向かってもいいし、底抜けに楽しいものを作りたいって思いがあったんだと思いますね。

田家:男性のシンガー・ソングライターが「ゴミ出しをする」っていうのはきっとこれ初めてですよ。

大江:「月・金、燃えないゴミを出すのさ」っていう歌詞がありますからね。今回宿泊させてもらってる友達の家で今朝ゴミ出ししてきました。

田家:あははは。

大江:何時まで出して、網はちゃんとかけといてねって言われて必死になってゴミ出してきましたけど、やっぱりゴミを出すっていう生々しさはポップミュージックの中でいいのかなと思って歌詞に入れてみたんですけど。

田家:槇原さんが「東京DAYS」でゴミ出しの話を書いてるんですけど、それが94年ですから。5年前です。

大江:おーーー。

ラジオが呼んでいる / 大江千里

田家:89年9月に発売になりました「ラジオが呼んでいる」。アルバムは89年10月に出た『red monkey yellowfish』。これは最後のアナログシングルですね。

大江:そうですね。もう時代がガラッと変わる。

田家:これはブックレットの解説で知ったんですが、シングルチャートで初めてTOP10入りしたんですね。意外でした。

大江:僕の歌は、音もポンポン飛んで歌うのも難しいし、あまりシングルとして売れてる感じじゃなくて。裏声を使って、どうやってカラオケで歌うんだって歌がタイミング的に初のトップテン入りをさせてもらって。この曲には、僕のラジオに対する気持ちもそうだけど、自分で作ったものがラジオで流れて、人の人生に関われちゃったりしてっていう自分の夢と欲望と願望が全部「ラジオのほうが恋を覚えている」っていうフレーズにギュッと凝縮されてて。

田家:でも、さっきの「GLORY DAYS」のときに、やっぱりシングルはこうじゃなきゃいけないみたいなことが選択の基準だったわけでしょ?

大江:そうですね。まっちゃん(松浦善博)の影響もあって、小坂さんがしゃあないな、やんちゃな奴らがいてってふうになってて。信ちゃん(清水信之)と千ちゃんととまっちゃん。まっちゃんはスティールギターで西海岸サウンド命で。信ちゃんもそういうのが大好きで総合音楽監督みたいな感じで音にしていった。僕はアイデアをバンバン出していって声を重ねていくっていう感じだった。もう24時間、お互いの部屋で音楽の話して。それ終わったらプールで泳いで、スタジオ行って音聞いてっていうね。ちょっとやんちゃし始めた3人を小坂さんがコントロールできなくなっちゃって、あいつらもしゃあないなあ!って受け止めてもらってた時期ですね、これはね。

田家:曲の入った『red monkey yellowfish』はCD チャートが1位で総合チャートが2位だった。総合チャート1位になるのが次のアルバムわけですよね。

大江:そうです。『APOLLO』ですね。

田家:ついに『APOLLO』が来ました。

大江:いろんな思いが詰まっています、これは。

田家:90年9月発売9枚目のアルバムのタイトル曲「APOLLO」。千里さんが選んだ今日の6曲目です。

Rolling Stone Japan 編集部

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