吉田豪が翔とTAKUと語る、故・嵐ヨシユキの思い出と「横浜銀蝿」の軌跡

チェッカーズとの関係

―事務所トラブルで、なぜかチェッカーズが一時期ユタカプロ預かりになったことにより、事務所のビルに置いてた自分の荷物を外に出されて「俺は必要とされてないのか」的な感じになった、みたいな話だったんですよね。

翔 そうなんだ! 俺なんかは何があったって大輔はかわいいし、哲太も1回抜けたときもあるけど、そのときも茅ヶ崎まで行って「おまえ、何も言わないで抜けるっておかしいよ」って話して、筋道が通ってれば俺は「頑張れよ」って言うだけで。チェッカーズがいたのは知ってたけどさ。

TAKU でも、俺らの部屋にあいつらが寝泊まりし始めたときは「なんだこれ?」って思ったよね、そういえば。事務所の3階に銀蝿の部屋っていうのがあったの。2DKかなんかで畳の部屋が2個あって台所がついてて。いつの間にかあいつらがそこに寝泊まりしてたから。

翔 俺はそのときも誰か預かってるんだろうなと思って、そこにものをいっぱい置いてるわけじゃないから、好きに使えばいいのにと思って4階の嵐さんの部屋に行ったり、みんながたむろしてるところにいたりしてて。行っても練習スタジオとして使うか事務所でサイン会とかそういうことしかないから、まあいいだろとは思ってたんだけどね。そのうち突然いなくなって、なんだったんだろう、みたいな。

―あまりロック史で語られない部分ですよね。一時期チェッカーズが後輩になってたというのは。

翔 そうそう、あいつらぜんぜん挨拶来ないもんね(笑)。まあいいけど。

TAKU 話ぜんぜん違うんだけど、俺らが最初にTBSホールに出たとき、デビューしたばかりのチェッカーズも出てたんだよ。その帰りに銀蝿のファンの子たちが「フミヤがいい」って言ってる声が聞こえたから、「じゃあこいつらすごいのかな、化けるのかもしれない」っていう予感はあって。そしたら、それからしばらくしたらもう大坂さんが呼んで事務所に来てたから、大坂さんすげえなって。たぶんそのときに大坂さんは目をつけてたと思うんだよね、いくんじゃないかって。

―だから銀蝿が異端なだけなんですよね、あの事務所では。基本そういうアイドル色のあるバンドを売りたい人で。

TAKU そういうこと。最初の頃に、翔くんが事務所からもらった楽器にレモンパイ(75年にユタカプロからデビューしたアイドルバンド)のシールを剥がした跡がついてて、それを翔くんとJohnnyが分解してピックアップいじくってプラモデルみたいにしてたの覚えてるもんな。俺は俺でもらった楽器すぐに売っちゃったけど、レモンパイのお古だったんだよね。

―だからこそおもしろくなったと思うんですよね、その芸能テイストと不良要素が不思議に混ざって。

翔 そうだね。

TAKU それは間違いない。

―その鍵を握るのが嵐さんなのも間違いない。

翔 そうだね、それは間違いないよね。

―嵐さんもホントに不思議な人というか、シルバーレコード(レコード会社)を立ち上げてからも、「犬のCDがすごい話題になるっていうから出したのにさ、あれぜんぜん売れねえんだよ!」「木村健悟のCD出せば売れますよって言われて出したんだけど、売れねえんだよ!」って愚痴をすごい言ってました(笑)。

TAKU ハハハハハハ! 俺、V6の『学校へ行こう!』を観てたのよ。そこで癒し系ミュージシャンの企画をやってて、嵐さんに「あれのレコードをシルバーが出せばいいんじゃない?」って言ったのよ。その時点でジャニーズはそれを出せばいいって気づいてなかったの。それで結局あれ(『卒業~「学校へ行こう!」癒し系ミュージシャン作品集』)がシルバーレコードで一番売れたんだよね。10万枚は超えたと思うんだけど、俺その発案者なのにノンケアだもんね、いま思えば(笑)。

―ダハハハハ! 金一封出してもいい話ですよ!

TAKU 10万枚ってことは1億だからさ。

―うわーっ!! ボクが嵐さんを取材した時点では、CDが売れなくて借金がヤバくてだんだん支払いが遅れてるみたいな話もしてました。

TAKU たぶんシルバーは『学校へ行こう!』のサントラだけじゃないかな、弾けたのは。翔くんのソロアルバムのとき、俺は日音にいたんですよ。それで嵐さんが来て、「ベース弾いてくれ」って言うんで、何曲か弾いたの。俺は何も考えずにそのまま帰ったんだけど、ディレクターが「ギャラもらったの?」って言うから、嵐さんに「ギャラちょうだいよ」って言ったらさ、「そうか?」とかすっとぼけてて、「じゃあいますぐ現金で払う」ってその場でもらったことがあったんだけど、言わなかったらないままだったんだよ。

―ダハハハハ! 友情出演のまま(笑)。翔さんは嵐さんに困ったことはあるんですか?

翔 俺は銀蝿もソロも音楽をやれてる環境が幸せだったからさ。嵐さんはもちろん経営もしてるから金のことがいろいろあるだろうけど、こっちは不自由なことがあっても、それは兄貴だし、いいやいいやでやってきちゃってるから、そのへんのことはあまり気にしないでやってきたかな。金銭的な部分でどうこうっていうのは全部目をつぶろうと思って、それより楽しい部分でやってたからぜんぜん……嵐さんの常套手段は、「金が欲しいのか仕事が欲しいのか」みたいな(笑)。

―その二択?

翔 そうそう。そうするとミュージシャンはみんな「仕事が欲しいです」って言うから、「じゃあ仕事やるから頑張れよ」って。金が欲しいなら金が欲しいってやり方でやるっていうね(笑)。

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE