吉田豪が翔とTAKUと語る、故・嵐ヨシユキの思い出と「横浜銀蝿」の軌跡

アルバム『All for RAN』に込めた想い

―ふたりの思いはだいぶ伝わりましたよ。だからこそいまアルバムを作るとなったら嵐さん追悼盤としてちゃんと思いを込める、と。

翔 そうだね、だから『All for RAN』っていうタイトルも、銀蝿ってホント「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」じゃないけど、ひとりが誰かのためにやる部分もあって、みんなで銀蝿のためにって部分もあるバンドでね。嵐さんの追悼アルバム出そうって話になったとき、俺のなかではいま話したようにいろんな思いがあるけど、でも俺の行き着いたところはやっぱり「ありがとう」って気持ち、感謝の気持ちしかないんですよ。銀蝿のことを一番考えてた人だと思うから、それを追悼するに当たって、嵐さんの銀蝿への思いを返すには、みんなで嵐さんのために何か作りたいと思って。最初は『All for One』ってタイトルだったんだけど、これは『All for RAN』だなと思って。42年間のありがとうを伝えたいのと、あとはまだロックンロール一緒にやりたかったよっていう気持ちを伝えたい。これは制作の段階で全員で合唱するって決めて楽曲を作ったんで、コーラスじゃなくて全部一緒に歌いたいんだよって言って。AtsushiもJackも入ってくるし、Johnnyにも歌ってほしいんだよって言って。そしたら「もちろんそれはやるよ」って二つ返事で。ホントに嵐さんのための歌になったなと思う。これは嵐さん追悼のベストソングになったなとは思ってるんですけどね。



―嵐さんのアルバム『生涯現役』から2曲入れようっていうのは?

翔 TAKUからの提案があって、ミニアルバムで4曲だったら嵐さんのアルバムから入れよう、と。『生涯現役』はまさに嵐さんが生涯現役でやり通したっていうのと、『RUN & RUN』に関しては、俺これだけ長くやってるけど嵐さんに作詞作曲両方とも全部やって曲をプレゼントすることはなかったの。自分たちで作った『お前に会いたい』とか歌ってましたけど、その後、嵐さんが作った曲って歌詞は嵐さんで別の人に頼んだり、TAKUも頼んだりしてて。俺は嵐さんが歌う曲に関しては嵐さんが好きなようにやればいいと思ってたから。で、『生涯現役』を作るときに、これは1曲書きたいなと思って。その『RUN & RUN』は俺が唯一、作詞作曲両方手掛けた嵐さんの楽曲なんですよ。だからそれを入れたいなと思って。

―『生涯現役』はTAKUさんが作られて。

TAKU 俺は嵐さんと出会ってこの世界に入れて恩返ししたいなと思ってたんで、嵐さんが還暦になったとき「俺プロデュースするからアルバム作ろうよ」って。嵐さんは「大丈夫か?」って言ってたんだけどね、「絶対大丈夫だから任せて!」って言ってアルバム作ったんですよ。還暦っていっても、もう7年経つのか……。あれはとてもいいアルバムなんじゃないかってずっと思ってて。今回も嵐さんの『生涯現役』っていう曲だけじゃなくて、あのアルバムをまたみんな聴いてよって気持ちも含めたサンプルじゃないけど、その2曲って感じはありますね。

―嵐さんのことがあって、おふたりも自分の人生を考えるきっかけになったりしました? 

TAKU 人生の射程距離とかあるじゃないですか。俺いま62歳で、そうするとひとりの人が生まれて去るまでの時間的な実感がわかるようになってきた。いざ同世代っていうか、いままでも仲間のミュージシャンが亡くなることはいっぱいあるんだけど、40thのときに俺、「いろんな周年でやるいろんなバンドあるけど、結局オリジナルメンバーが揃ったまま40周年迎えられて俺たちは幸せなんだ」みたいなこと言ってたわけ。だから、いろんなこと考えたよね。俺、18歳の頃から、たとえば道を走ってても嵐さんの車があって翔くんの車があってJohnnyの車があって、前3台のテールランプを見ながら走ってきたみたいな話をしてたの。そしたら今度は嵐さんがいなくなっちゃうと、いろんなこと考えるじゃない? 俺もいずれいなくなるわけだしっていうのをリアルに考えられるようになっていくというか、他の友達とか音楽仲間が亡くなるときよりも痛烈に感じたというか。

―一番前を走ってた車がいなくなって。

TAKU そうそう、ホントに。だからそれ以降、これから俺の趣味は長生きにしようって考えたりね(笑)。そういう局面になりました。

翔 嵐さんが亡くなって、ホントまだ慣れてないっていうか。嵐さんが亡くなったことで自分のことをまだ顧みられてないのが正直なところなんですよ。もちろん、どんどん老化していく自分もいるじゃないですか。頑張らなきゃいけないことばかりなんですよね、歌もそうだし。変な話、家で観てるテレビもそうなんだけど、何を観ようとかのチョイスが、自分があとどれだけ生きるんだろうとか考えたときに、必要なもの以外はいらないんじゃないかってなってくるんですよ。若いときはいろんなものに興味があって、これもいいなあれもいいなって趣味が多彩になっていってたけど、嵐さんが亡くなってからは残りの時間をどう使おうかっていうことを考えるようになったかな。銀蝿が続くってことは嵐さんを忘れないってことだから……銀蝿が続くことによって嵐さんがいつまでもそこにいるっていうのが一番いいんじゃないかって考えてるかな。やっぱり嵐さんのためにってなっちゃうんだよな。いまは銀蝿のためにじゃないんだよ、嵐さんの存在がいつも見え隠れする銀蝿をどうやったら一番いいのかなって考えてるんだよね。それ以外のことは二の次になっちゃってる感じ……ごめんね、うまく言えなくて。

―いや、でもわかります。

翔 わかっちゃいるんだけど、なんでいないの?っていう葛藤はまだありますよね。

―たしかに銀蝿が続く限りは象徴としての嵐さんが生き続ける感じにはなりますもんね。

翔 そうそう。忘れてほしくないし、だから銀蝿を続ける。それはどうやって続けるんだっていうのはいろんな道があると思うし、リーダーは嵐なんだっていうところの、いまのセンチメンタルな気持ちだけかもしれないって部分もあるけど、でもまぎれもなくいまはそれを思ってる、嵐ヨシユキっていう人間を誰にも忘れさせないぞっていう気持ち。新しい曲を作ろうが、このあと来年に向かってまた動き出したとしても、そういう気持ちでありがとうを伝えたいっていうのかな。

TAKU 俺、まだぜんぜん嵐さんが夢に出てくるのよ。

翔 ファンのなかでもロスはデカいからさ。絶対に前に進まなければいけないとは思ってるし、1カ月経ったらとか100日経ったらとかいろいろ考えてたんだけど、数えてるところがもうダメじゃん(笑)。

―引きずってますよね(笑)。

翔 引きずってるわけじゃん。これダメだとは思うんだけど、このアルバムに関しては、みんなやっぱり嵐さんのためにと思ったらすごいんだと思った。また半年とかして俺が立ち直ったらまた取材に来てください。「復活! 翔!!」みたいな(笑)。

【関連記事】横浜銀蝿オリジナルメンバーで完全復活、吉田豪と語る「再会」の舞台裏

<INFORMATION>


『All for RAN』
横浜銀蝿
キングレコード
発売中
配信リンク:https://lnk.to/all_for_ran

WOWOWプラス Presents
T.C.R.横浜銀蝿R.S. 嵐追悼
関東集会 All for RAN
2022年12月18日(日)東京・日本橋三井ホール
16:45開場/17:30開演
大阪集会
12月9日(金)UMEDA CLUB QUATTRO
18:30開場/19:00開演
名古屋集会
12月11日(日)ElectricLadyLand
17:00開場/17:30開演
https://ginbae.jp/

翔出演「翔くん 豪ちゃん 翔和へGO!」
tvk(テレビ神奈川)毎週火曜日24:00~24:15 OA
翔とプロインタビュアー吉田豪による昭和トークバラエティ




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