J-POPの歴史「1990年と91年、音楽業界の規模が倍々ゲーム的に大きくなった始まり」

1991年5月14日、横綱・千代の富士が現役引退を表明した(Photo by David Madison via Getty Images)

音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。2023年5月の特集は「田家秀樹的 90年代ノート」。「J-POP LEGEND FORUM」時代に放送した「60年代ノート」「70年代ノート」「80年代ノート」の続編として、ミリオンセラーが日常となった空前のヒット曲の時代「黄金の10年」を振り返る。PART1は、1990年、1991年のヒット曲9曲をピックアップ。

FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター田家秀樹です。今月は「90年代ノート」と題して1カ月間お送りしようと思います。1990年から99年。なんで90年代をやろうかと思ったかというと、2月にGLAYのTAKUROさんの特集をやりました。TAKURO令和と50代を語る。あのときに、90年代っていうのはもうかなり過去なんだなと思ったことが発端ですね。

日本のポップミュージックは60年代に種がまかれて、70年代に芽を吹きました。そして80年代に開花したんですね。その後に訪れた爛熟期、黄金期が90年代だった。史上最大とか過去最多とかそんな言葉が日常的だったお祭りのような10年間を改めてたどってみようと思います。そして今、どんなふうに見えるのか再検証してみようという1カ月です。



「少年時代」は90年に発売になった曲です。70年代、80年代の陽水さんと曲調もイメージも一変したんですね。歌謡曲とかポップスとかっていう分け方ができない唱歌というんでしょうかね、ジャンル分けしにくい日本の歌が誕生した。しかもこの曲の入ったアルバムのタイトルが『ハンサムボーイ』。ジャケットを覚えてらっしゃいますか? 井上陽水さんの満面の笑顔ですよ。70年代80年代のあの神秘的で、ちょっと神経質そうな陽水さんはいなかったですね。

そしてアルバムはミリオンセラーになりました。陽水さんは80年代に『9.5カラット』で2度目のピーク、2度目のミリオンというのを達成してるんですね。この曲と『ハンサムボーイ』で3度目のピークを迎えたんです。70年代80年代90年代、三つの時代でミリオンを記録した最初のアーティストになったんですね。

その事に敬意を表して、今週の前テーマにしました。90年代がいかにとんでもなかったか。CDという形態自体がですね、今や危うくなってる時代には幻のような10年間。3度目の100万枚が陽水さんだとしたら、今日の1曲目はダブルミリオンという扉を開けたアルバムからお送りします。



80年代はユーミンの時代だったというふうに言っていいでしょうね。その80年代の後半、『ダイアモンドダストが消えぬまに』『Delight Slight Light KISS』『LOVE WARS』という3枚を立て続けに出して、そこには純愛三部作っていうコピーがついてたんですね。ダイアモンドダストっていうのはシャンペンの泡のことですから、80年代後半のバブル景気とともにあった。そしてその先を彼女は見てた。この「天国のドア」はバブルの向こう側を歌ってますね。このアルバムはレコード会社の発表で総出荷数が初めて200万枚を超えたんですね。100万枚は普通という時代のドアが開きました。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE