『あんときのRADWIMPS』著者が語る、震災とメンバー活動休止期のRADWIMPS



田家:流れているのは2013年12月に発売になったメジャー5枚目のアルバム『☓と◯と罪と』の中の『ラストバージン』。シングル『五月の蝿』のカップリングでありました。この曲は桑原さんの結婚式で歌われた曲だとも書かれていました。

渡辺:このへんから震災も経てまだバンドを続けていこうという中で、どんどんポジティブになっていって、結婚するやつがいるんだったらお祝いで曲を作ろうとか、どんどんそういうふうに変わっていった時期ですね。

田家:何度か話に出ていたバンドから抜けるという、それが桑原さんだったわけでしょ。

渡辺:そうですね。この頃はわりとすごくバンドができる喜びの先に音楽と戯れているような、すごく自由に遊んでいるような感じの頃でしたね。

田家:ソロ・プロジェクトも始まったりするわけで、野田さんの。

渡辺:illion。最初ヨーロッパで出したいって話で、それもまたびっくりしましたけどね。日本で出さないのって(笑)。

田家:その一方でRADWIMPSの『ドリーマーズ・ハイ』がアルバム先行シングルとして発売されて、売れなかったという(笑)。小見出しが「売れ行き不振の原因は何か?」。170ページ。

渡辺:はははははは(笑)。ガコッと落ちて、あれ?って感じだったんですけど。

田家:その時に善木さんは発言としてRADWIMPSはストーリーが分かりにくいのではないかと、それが渡辺さんが小説を書くようになったきっかけなんだとありました。

渡辺:正確に言うと、善木さんから呼ばれて、この落ち込みをどう思ってますかって。

田家:レコード会社の人間としてどう考えてますかみたいな(笑)。

渡辺:またそういう難しいことを言うんだからって思って(笑)。でも思ったのは、昔の『おかずのごはん』の頃は、彼女のことが好きで、好きだーって歌、振られちゃったら、振られちゃったーっていう歌で、ダイレクトに分かるわけじゃないですか。リスナーが野田洋次郎のドキュメンタリーを。ただ、その後あるところまでに来ると、野田洋次郎が今どういう状態でいるのかが分かりにくくなってきていると思って。あと、この頃あまりメディアにも出ていなかったので、そういうのもあってバンドや曲が分かりにくいのかもしれないですねって、ちょっと言い訳みたいに言って(笑)。そしたら善木さんがそのストーリーをなべさんが書いたらどうですかって話になって、本が始まっていくんですけどね。

田家:ファンクラブの会報誌で原稿を書くようになって。

渡辺:そうですね。書けって言われて6年ぐらい何もしなかったので、あまりにつらくて。本を書くってこんなにつらいことなのかと思って何もしなかったら、今度は有料ファンサイトで連載しろって話になって。毎月締め切りがあればやるだろうって。

田家:そういう中でメンバーが家庭を持つようになって、第十九章のタイトルが「結婚、バンドの変化」。“武田が結婚したことで、洋次郎以外の全員が家庭を築いた”というところまで書いている。小見出しも「友だちから仕事仲間への関係性の変化」。

渡辺:これはずっと思っていたことで、19歳の洋次郎に「辞めたくなったら言えよ、いつ辞めてもいいんだから」って言ったことがあるんですよ。そしたら「これからデビューして、一緒に頑張ろうとしているのに何言っているの?」って言われたんですけど(笑)。僕はこの先、この人は時代の寵児みたいになるって思ってたんです。そしてとにかく全てを背負わなければいけなくなっちゃう。スタッフの会社の予算とかも全部。メンバーも結婚するだろうし、メンバーの家庭、メンバーの子どものことまで全部背負わなければいけない。そのプレッシャーや孤独って大変だろうなと思って、そう言いました。19歳の彼は、そんな先のことなんて分からないって言ってたんですけど、やっぱりそうやって関係性が変わっていくわけですからね。メンバーに家族ができるというのは。

田家:この頃のRADWIMPSは、僕らが見てたライヴもそうでしたけど、バンドというよりも音楽集団という感じになっていましたよね。

渡辺:全員がキーボードを弾けるようにならなきゃいけなかったり、マリンバ叩いたり。このへんからコンピューターで音楽を作るようになって、最初は洋次郎しかできなかったものが他のメンバーもできるように、ついていくためにはそうならざるをえなくて。コンピューターでファイルをやり取りしながら音楽を作っていくようにになってくると、バンドというか音楽集団みたいな。だから、ギターの人がシンセ入れてきたり。ベースの人がベース弾かないでキーボードを入れてきたりとかっていうふうになっていきました。

田家:『☓と◯と罪と』の曲はアルバム2枚分あったというのがありましたね。

渡辺:とにかく楽しい楽しいって、曲ができたらスタジオに入ってレコーディングしていて、気がついたら2枚分ぐらいになっちゃって、どうするこれ? という会議はやりました。

田家:このアルバム『☓と◯と罪と』を携えたアルバムツアー、2014年2月から<GRAND PRIX 2014 実況生中継>が始まるわけですね。そのさなかに思いがけない事態が発生します。2006年の『トレモロ』。アルバム『RADWIMPS 3~無人島に持っていき忘れた一枚~』の中からお聴きいただきます。

Rolling Stone Japan 編集部

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