『あんときのRADWIMPS』著者が語る、震災とメンバー活動休止期のRADWIMPS



田家:なぜこの曲をお聴きいただいたかと言うと、第二十四章の「最後の夏フェス」の中にこういう小見出しがありました。「去り際に突然歌い出した『トレモロ』。ここすごいですね。

渡辺:智史が病気で休養することになって、最後に出たフェスのライブが終わった時に洋次郎が突然アカペラで歌い出したのがこの曲だったんですけどね。

田家:2015年8月29日山中湖<SWEET LOVE SHOWER>ですね。第二十一章が「智史の病気」。二十三章は「智史の結論」、二十四章が「最後の夏フェス」、二十五章で「たった一人の死闘」、更に二十六章「サポートドラマー決定」。

渡辺:つらかったですね、思い出すのも。RADWIMPSの物語を書くのであれば、避けては通れないので、震災と智史の休養というのは。過不足なく書かないといけないんだろうなと思って、真面目に取り組んだところですね。

田家:さっきの去り際に突然歌い出した「トレモロ」の後に小見出しがありまして、「波打つ背中は酷くやせ細っていた」。ステージを降りてきた智史さんが嗚咽して座り込んでしまった。その背中をそういうふうに書いていて。“僕は絶望を見たと思った”。247ページ。

渡辺:こんなことがあるのかって思ったんですよ。ずっと過呼吸を起こすようになってしまって、歩けなくなっちゃって。ハツラツと19歳の頃から一緒にやってきてここまで来てしまったのかというのは、本当に絶望でした。RADWIMPSがこれで終わっちゃうのか、どうなのかっていうのは全然思わなくて。ただただ智史のことを思うとつらくて、そう思ったんですね。

田家:職業性ジストニア。智史さんは無期限休養した時にメディアに対してのお知らせなども渡辺さんが書いたという。

渡辺:なんとなく僕が、半オフィシャルライターみたいな感じでもあったので。その時はスタッフダイアリーとかもやっていたものですから。だから自然と僕が書いて、みんなでそれを修正していきました。

田家:智史さんと二人だけで話したことも書かれていて。二人しか知らない会話だったわけでしょう?

渡辺:その時、二人きりなら会ってもいいという状況、智史もつらかったものですから、二人だけで話して。この本に書いて他のメンバーや事務所の人たちも、あ、そんな話があったんだという感じだろうと。

田家:それを書かなければいけないと思ったんでしょうね。

渡辺:もちろん1回書いたものは全部智史に読んでもらって、その後また何時間も話し合いをしまして。智史も病気に関してはなべさんが見てない部分もあるから、そこをいったん説明させてくれって。それでどう書くかはなべさんの本だからお任せしますって言ってもらって。

田家:これを信頼関係と呼ばずになんと呼ぶんだろうか。その後にこのアルバムが出ました。2016年11月発売6枚目のアルバム『人間開花』から『告白』。

Rolling Stone Japan 編集部

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