『あんときのRADWIMPS』著者が語る、震災とメンバー活動休止期のRADWIMPS



田家:これは時期が前のものになるんですよね。

渡辺:そうですね。武田の結婚式の時に作られた曲で、何度かツアー中のリハーサルの時に洋次郎がピアノでポロポロやっていたので、その時から作っていたんだと思うんですけどね。

田家:『人間開花』に入れることになった。

渡辺:はい、アルバム最後の曲になりました。ドラマチックだなと思うのは、話の論点と違うかもしれないんですけど『絶体絶命』ってアルバムを出した人が、『人間開花』になるっていう。人間開花という喜びに溢れたアルバムで、長くやっているとメンバーもスタッフも家族みたいになっちゃっている。その中からハレの日を迎える人がいるというのは、すごく誇らしいことでもあるのでぴったりの曲だと思います。

田家:武田さんの特別寄稿が本の最後にありました。この寄稿が最後に入るのは?

渡辺:一冊目を洋次郎に寄稿してもらったので次は武田に書いてもらいたいと、「えーできるかな?」なんて言われながら「よろしく」って言って。智史とずっと寄り添っていたのは、リズム隊としての武田だったので。

田家:その寄稿について、渡辺さんは「最後は息が止まるような思いで読んだ」とお書きになっていた。

渡辺:はい。やっぱりそこで武田が智史のことも書いていて、さっきの智史と僕が二人だけで話したのと一緒で、その時メンバーがどう思っていたのかというのが切々と書いてあるので。

田家:ね、この「あとがき」と「特別寄稿」はすごかったですね。

渡辺:僕と武田の共通認識としては結局どうしていいか分からなかったんですよね。バンドメンバーであり、友人であり、家族でもある人が職業性ジストニアという病気になった時、結局みんなどうしていいか分からなかったんだというのが、寄稿を読んで思ったことで。

田家:武田さんも渡辺さんが書かれたこの本を、何度か途中で読むことをやめてしまったと書いてました。先が読めなかったんでしょうね、つらくて。

渡辺:それは言われました。智史ももちろん、できれば思い出したくないこともあるけど、ちゃんと読んでちゃんと向かい合いたいと思いますって言ってくれて。

田家:そういうメンバーなんだと思ったのが、武田さんが智史さんが家で倒れてたところに迎えに行った時の自分の態度。その時に自分が彼にかけた言葉があれでよかったんだろうかということを、2022年9月時点でまだ自問している。すごい関係だなと思いました。

渡辺:今でもみんなで自問しているところがあって、急に手が動かない、足が動かないって言われたらどうしていいか分からない。今回本を出すにあたって智史と話した時に言われたのは、理解が足りない病気なんだと。例えば昔はうつ病の症状が出て、気持ちが塞ぎ込んで会社に行けないと言ったら、たるんでるって怒る上司もいました。今だったら、ゆっくり休んでくださいってなるじゃないですか。その理解の差は大きいですよね。当時ジストニアですって聞いてもどんな病気か分からないから、智史本人も一生懸命練習していたわけです。きっと練習が足りないのが原因なんだって。でも全然そんなことなくて病気ですからね。そのような病気への理解がなくて、全員がどうしていいか分からない。みんなでその時最善だと思うことをやっていたんですけど、それが正しかったのかって僕たちの誰もが、ずっと自問していると感じています。

田家:2022年9月23日の智史さんのSNSの投稿を武田さんが見つけて、それも紹介している。バンド活動を休んでちょうど7年のその日に智史さんが投稿したんですね。

渡辺:今は元気に別のことをやっているものですから、一個一個着実に物事を形にしていっているので、すごいなって思って見ています。

田家:そういう時期を抜けて作ったのが、『人間開花』だった。その中からこの曲をお聴きいただきます。『前前前世」。

Rolling Stone Japan 編集部

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