『あんときのRADWIMPS』著者が語る、震災とメンバー活動休止期のRADWIMPS



田家:映画『君の名は。』の主題歌。『君の名は。』の経験はそういう意味で大きかったわけですね。

渡辺:ロックバンドがずっとサントラを作っているというのもなかなかないことですが、新海誠監督が「洋次郎さん、もっと真ん中に」ってずっと言ってくださったそうです。洋次郎は最近曲を作る時、もういい大人だから好きだーって言わないで、ちょっと斜めから入ったり、横から入ったりしちゃうと言っていましたが、どんどん真ん中へって言ってくれたおかげでストレートな曲ができたのかなと思います。

田家:この『人間開花』を第二の1stアルバムと渡辺さんはお書きになっていました。

渡辺:はい。さっきの震災で全部が壊れたところからリスタートして再建したアルバムで、『人間開花』という名前の通りカラフルなツアーをやるようになったのを観て、本当にそう思いました。

田家:武田さんがお書きになっていた特別寄稿の中で2010年から2017年、この本が発売されるのが2022年。まだ文章化されていない時間が5年分ある(笑)。

渡辺:これはありがたいんですけど、ちょっと本にするには難しいというか(笑)。今SNSがあるから、この先はわりとみなさんリアルタイムで分かっているんじゃないかなと思っていて。

田家:でもこれだけのツアー、アメリカ行ってヨーロッパ行ったり、アジアツアーやったりしている。この後はオーストラリアに行って、全部のツアー、全部のライブをご覧になっている人はスタッフしかいないわけですから。一作目は繁体字で翻訳されましたけども、それが英語で翻訳され、フランス語で翻訳され。

渡辺:いやいや、そんな決まってないです(笑)。

田家:バンドはそういう存在になっていきそうですもんね。

渡辺:バンドはすごいですね。コロナで1回できなくなったワールドツアーをガッとやっているって感じですね。

田家:ワールドツアーが当たり前になっていくかもしれない。そういうバンドをちゃんとこういうふうに書ける人は他にはいませんよ。

渡辺:いやーそんな、ありがとうございます(笑)。

田家:次作も楽しみにしています(笑)。


左から、渡辺雅敏、田家秀樹



流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

前作は渡辺さんがアマチュア時代の彼らを見つけて、メジャー・デビューをすることになって一つ一つプロの業界とかアーティストとして成長していく過程を追っていたんですね。アルバム『アルトコロニーの定理』のところで終わっていて、その先に起きることは僕らは知っていたわけです。

震災があって、その後にドラムの山口智史さんが無期限休養する。そのことは書けないだろうなと思っていた時期がありました。それを彼はここまで書いた。この震災とメンバー・山口智史さんの無期限活動休止ということを柱にして、ここまでのノンフィクションを書いたということに僕は素直に脱帽しました。震災の時に野田さんが何を悩んで、何を葛藤してどう行動したのかも本当に生々しく書かれていますし、智史さんの病気が発覚してからメンバーがどういう動揺を隠しながら行動していたとか。その中で智史さんが、言葉が適切かどうか分かりませんがどんな地獄を見たのかということも素直に書いていて。それを見た渡辺さんが絶望を見たというところまで書いている。よくここまで書けたなと、それからバンドやマネジメント、メンバー、よくここまで書かせてくれたなと思ったんですね。もし外部の人間が書いたら、こんなにリアルにはならないでしょうし、知っていてもここまでは書かせてもらえなかったでしょう。メジャー・デビューの最初から関わっているからこその信頼がこういう本になりました。メーカーの担当者ですよ。こういうレコード会社の人間がいるってこと自体が異例であり、希望でしょうね。語られるということがどういうことなのか、この本を読んでいただいて音楽ファンの方にも感じていただけたらと思っております。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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