SNARE COVERが語る「永遠」、喪失を経験して初めて分かるラブソング

─この度、メジャー2作目となるシングル「Wedding Bell」をリリースされますけど、この曲は前作「Hourglass」の続編曲ということで、まずはそちらの話からお聞きしますね。そもそも、SNARE COVERがラブソングを歌うこと自体が新鮮でした。どんな考えがあったんですか?

たくさんの方がラブソングを歌われていて、たくさんの方がラブソングに感動していて。ラブソングっていうのは、やっぱり一つのマジョリティになっているものだと感じるんですね。ただ、自分がラブソングを歌うとなると、今までやってきたことじゃないので、すごく小っ恥ずかしい気持ちとか、表現のギャップとかいろいろあるんです。でも自分の歌声を使ったラブソングを作れたら、SNARE COVERの音楽がたくさんの人に届く確率は上がるなって感じました。それで関わってくださる方達とたくさん話し合って、結構満を持してみたいな感覚で作った曲なんですよね。自然にできたっていう感じではなくて、意識的に作った曲でした。



─楽曲の題材や歌詞の内容は、どのように決めたんですか?

Hourglass」は喪失をテーマにしてます。というのも、僕は喪失を表現することにすごく意味があると思っていて。やっぱり嘘を歌うわけにもいかないので、日常的な恋を描いたラブソングは歌えない。自分と繋がる部分を曲にしないと歌えないんです。自分は音楽以外に、動物たちを保護して一緒に暮らす活動もしていて。そこで命が亡くなっていく瞬間を何度も経験したことも「喪失」というテーマに繋がっている。あと、大切なものが失われることに関しての怖さとか恐怖感が年々増えていて。自分だったり自分と大切な人との関係が終わる恐ろしさを、どんどん感じるようになっているんです。そういうリアルな様子を詰め込みたかったんですよね。とはいえ、ただ悲しいだけじゃなくて、喪失を経験して初めて分かる愛情みたいなものとか。そういうラブソングなら、自分も嘘なく歌えると思いましたね。

─今の話と繋がるんですけど、「Hourglass」を聴いた時、まさに動物にまつわる話を思い出したんですよ。先日、知り合いと食事に行きまして「今度結婚することが決まった」と教えてくれて、すごくハッピーな会だったんですね。そしたら、その人が急に泣き出したんですよ。理由を聞いたら、その日は昔飼っていたワンちゃんの誕生日だったと。自分のことで浮かれて、長年一緒に暮らしていた家族のことを忘れてしまい、亡くなったワンちゃんが可哀想だし、薄情な自分にも泣けちゃって。

うわぁ、それは結構きついですね。



─そう言いながら涙を流す知り合いを見て、簡単な言い方ですけど、僕はグッときたんですよね。亡くなって何年も経つワンちゃんに対して、いまだに泣けることは素敵だなって。

うんうん、確かにそうですね。

─でも、この気持ちを第三者に伝える時に「グッと来た」では全然足りないというか。もっと色々あるんですよ。

おっしゃることは、よく分かります。

─「グッと来た」ではシンプル過ぎる。かといって、言葉を足せば足すほど伝わりづらくなってしまう。

うん、そうですよね。

─伝え方が難しいんですよ。大事なワンちゃんのことを忘れてしまっていたけど、涙した一瞬は心の中でワンちゃんに会えたという救いもある。この感情、この温度感って絶妙だと思うんです。言わば、悲しさから生まれる希望みたいな。それを「Hourglass」に感じたんです。要するに、音楽じゃないと表現できない喪失感なんですよね。

僕の声は「歌が物悲しく感じる」とか「どんな曲を歌ってても、声が少し悲しく感じる」と言われることもあったりして。「でも力強さもあるし」と言ってもらうことに多くて。「僕が歌っているのは、悲しみだけじゃなくて、だからこその愛情なんだ」という思いを絞り出すように歌ってる感覚があるんです。まさに「Hourglass」もそういう部分を意識してやっていて。今、一番長く連れ添っている保護犬がいて。14歳になったばかりなんですけど、ゴールデンレトリバーの大型犬の14歳って、人間でいうと100歳を超えているんですけど、まだ奇跡的に元気で。その子のことを僕が……あの何ていうんですかね? もはや圧倒的にその子のために自分は生きてる、みたいな。それぐらい大事な子で。年齢的には、間違いなく長くないはずなんですよ。この子が亡くなったら自分はどうしようって。今まで亡くなってしまった保護猫や保護犬達もすごく大事な子だから、優劣をつけるわけにはいかないけど、どこかですごく通じる部分がその子にはあって。一緒にいる時間も一番長いですし、もし亡くなったら……って。そういうものを乗り越えるために、必死に音楽で答え合わせをしてる自分がいるんです。音楽の中で、最終的に「失う悲しみはこういうことで、こうすれば希望を持てるんじゃないか」って。今回出した新曲も永遠がテーマになっていて、そういう部分をちょっと含んでるんですよね。

─それぐらい高齢の子と一緒に暮らしていると、明日明後日にも何があるか分からないじゃないですか。それは極端だとしても、少なくとも一週間後はどうなるか分かんない。そう思いながら一緒に過ごすのって、どういう心境ですか?

“今、今”って人々は言いますけど、普通に生活していて「今を生きるって、こういうことなんだ」と感じることって難しいというか、なんだかんだ人は先のことを心配しながら生きているわけで。でも、その子を見ると「あぁ、今この瞬間を目に焼き付けないと」って気持ちになるので、一緒にいることで僕自身が学んでる気がしますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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